久保建英は「復調してくれるはずだ」 11戦不発もスペイン人記者が擁護「どんなクラックにも必ずやってくる」【現地発】

ゴールから遠ざかっているレアル・ソシエダの久保建英【写真:ロイター】
ゴールから遠ざかっているレアル・ソシエダの久保建英【写真:ロイター】

ソシエダの久保がオサスナ戦で先発出場、存在感を発揮するもノーゴール

 先発復帰した現地時間12月2日アウェーのオサスナ戦(1-1)、久保建英は存在感を発揮するも結果が伴わず、またもや無得点に終わった。

 ラ・リーガ第15節のオサスナ戦はレアル・ソシエダにとって、5連勝中、直近14試合連続負けなしという非常に好相性の相手だった。またこの試合の取材に向かうタクシーにて、運転手さんが両クラブの間にある強い絆について話をしてくれた。

 こちらを日本人と判断して、「久保はいいプレーヤーだね」と話し始めるとともに、今日の試合はお互いのサポーターにとって「ダービーマッチのようなもの」だと説明を加える。

「かつて、ここパンプローナ(オサスナの本拠地)やラ・レアルのギプスコア県は、ナバラ王国という1つの国だった。今でこそ州が違うが(オサスナはナバラ州、レアル・ソシエダはバスク州)、そのつながりは古く非常に深い。両チームは兄弟のようなものだ」

「ナバラ州の州都であるパンプローナに住んでいるが、私も息子も普段、エウスカラ(バスク語)を話す。私は自分のことを、スペイン人というよりもバスク人だと強く感じているよ」

 このような関係性があるため、ソシエダに非常に大きな愛着を持っており、近隣のライバルといえど、心から憎めないとのことだ。

「オサスナのシーズンチケットを持っているので今日も観戦に行く予定だ。自分のチームが負ければもちろん悔しいが、ラ・レアルに敗れたとしても、なぜかそこまで悲しくはないんだ。レアル・マドリードやバルセロナに負けるとものすごく腹が立つけどね」

 キックオフは21時。牛追い祭りで世界的に有名なパンプローナは内陸に位置し、スペインでも特に寒い街の1つだ。試合前に小雨が降り、5度を切る寒空の中で試合は始まった。

 ソシエダのイマノル・アルグアシル監督はレッドブル・ザルツブルク戦から7人を入れ替え、ベストに近いメンバーで臨んだ。公式戦2試合ぶりに先発復帰した久保は、定位置の4-3-3の右ウイングでプレーを開始した。

 対するオサスナのシステムは守備的な5-3-2。久保は左ウイングバックのホアン・モヒカに執拗にマークされ、特に前半は苦しめられた。スペースを消され、ドリブル突破を許してもらえなかった。そんななかでも前半34分に見せ場を作るが、ペナルティーエリア内から放ったシュートは枠を捉えられなかった。

 後半、久保にファールを仕掛けた際にモヒカが負傷交代を余儀なくされ、対峙する左ウイングバックが次々と変わっていった。これに伴い久保はスペースを得てボールタッチ数を増やしていき、最もファールを受ける選手となり、オサスナ守備陣にとって危険な存在となっていた。しかし、後半16分にペナルティーエリア手前から打った低空のシュートはGKにファインセーブされ、右サイドから何度も入れたクロスは精度を欠き、味方には上手く合わなかった。

地元紙は久保に辛口評価「輝きを放てず…」「ダメージを与えることはできなかった」

ソシエダが乗り込んだオサスナの本拠地エスタディオ・エル・サダールの外観【写真:高橋智行】
ソシエダが乗り込んだオサスナの本拠地エスタディオ・エル・サダールの外観【写真:高橋智行】

 試合は開始早々、オサスナがアンテ・ブディミルのアシストからモイ・ゴメスがゴールするという、久保の元チームメイト2人の活躍からスタート。ソシエダは前半41分、徐々に調子を上げているウマル・サディクが前節セビージャ戦同様の豪快なミドルシュートで同点にした。後半は両者ともに得点はなく、1-1で引き分け、ソシエダはラ・リーガの連勝が2でストップし、15試合7勝5分3敗の勝ち点26、6位に転落した。

 ボール支配率が7割を超え、相手を大きく上回るチャンスを作ったにもかかわらず勝利を手繰り寄せられなかった点について、ソシエダのアルグアシル監督は「どちらが勝利に値したかと言えば、間違いなく我々だった」と悔しさを滲ませていた。

 またこの試合、ソシエダでは過密な試合日程が続く今後に大きく影響する出来事が2つ起こってしまった。1つは左ウイングのレギュラー、アンデル・バレネチェアが前半途中に膝を負傷したこと。もう1つは守備の要であるロビン・ル・ノルマンが累積警告により、次節ビジャレアル戦に出場できないことだ。

ソシエダが乗り込んだオサスナの本拠地エスタディオ・エル・サダールの様子【写真:高橋智行】
ソシエダが乗り込んだオサスナの本拠地エスタディオ・エル・サダールの様子【写真:高橋智行】

 2本のシュートを打つも再びノーゴールに終わり、9月30日のアスレティック戦での得点を最後に、公式戦11試合連続無得点の久保に対し、クラブ地元紙の評価はあまり高くなかった。

 ラ・レアルの地元紙「ノティシアス・デ・ギプスコア」は、「いつものように最もチャンスを求め、トライし続けていたが、上手くいかなかった。高い競争力があり、ペナルティーエリア外からのシュートでミケル・メリーノの決定機を生み出したが、ボックス内で相手にダメージを与えることはできなかった」と評し、6点(最高10点)とした。

 もう1つの地元紙「エル・ディアリオ・バスコ」は、「今季開幕時のような輝きを放てず、相手を突破するのに苦戦していた。しかし執拗に挑戦し続けたことは、ポジティブな点として伝える必要がある。シュートをゴール外側のサイドネットに飛ばし、GKエレーラ相手に強烈なショットを試み、相手を引きつけチームメイトに多くのパスを届けた。またコンスタントにオサスナのファウルの的になっていた」と寸評し、3点(最高5点)とをつけた。

 地元紙が辛口の採点をつけた一方、全国紙「マルカ」、「AS」の評価はともに2点(最高3点)とやや高めの評価となった。

地元記者は久保の復活に期待「これまで示してきたように実力は十分ある」

久保建英を擁護した地元テレビ局「エウスカル・テレビスタ」ソシエダ担当のイニャキ・ミケオ・エチャリ記者【写真:高橋智行】
久保建英を擁護した地元テレビ局「エウスカル・テレビスタ」ソシエダ担当のイニャキ・ミケオ・エチャリ記者【写真:高橋智行】

 試合後、バスク州の地元テレビ局「エウスカル・テレビスタ(ETB)」でソシエダを担当するイニャキ・ミケオ・エチャリ記者に、この日の久保のパフォーマンスを振り返ってもらった。

「オサスナが守備的に5バックで戦ってきたことで、久保はいい形で試合に入ることができなかった。しかし後半はより積極的にプレーし、ファウルを何度も受けながらも右サイドでチームメイトと上手く連係し、チャンスを作っていた。今日も残念ながらアシスト、得点ともになかったが、懸念されているような疲労の影響はなかったし、いいコンディションを保てていると思う」

 同記者はまた、久保が長らくゴールから遠ざかっていることについて、どんな選手も不調に陥ることがあると擁護し、復活に大きな期待を寄せていた。

「ゴールには勢いや流れといったものが大きく関係する。思うように得点できない瞬間は、どんなクラック(名手)にも必ずやってくる。久保はこれまでいい時期を過ごせていたし、素晴らしいパフォーマンスを発揮してきた。これまで示してきたように実力は十分あるので、近いうちに復調して、再びゴールを決めてくれるはずだ」

 ソシエダは先月のインターナショナルブレイク後から、1か月弱で8試合を戦う厳しいスケジュールに突入しているが、最初の3試合を消化した現在、1勝2分と勝ち切れていない。

 この後、カテゴリーが3つ下のアンドラッチと戦う国王杯2回戦がレギュラー陣を休ませられる大きなチャンスとなる。しかしそれ以降、ビジャレアル、インテル・ミラノ、ベティスとのライバルたちとの対戦が続くため、選手たちの肉体が悲鳴を上げる可能性が大いにある。この年内最後の山場をチーム一丸となって乗り越え、怪我することなく良い結果を手にして、いい形でクリスマスを迎えられることを願いたい。

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高橋智行

たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。

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