16年ぶりJ1返り咲きへ…東京V城福監督、決勝の舞台で強調する“いつも通り”の重要性「100%しかできない」

東京Vの城福浩監督【写真:Getty Images】
東京Vの城福浩監督【写真:Getty Images】

「一番苦しい時期に我々を支えてくれた方々のことを心にとどめて戦わないといけない」

 東京ヴェルディ(東京V)は12月2日、J1昇格プレーオフの決勝で清水エスパルスと対戦する。決戦を2日後に控えるなか、両チームの監督と選手が出席したオンライン会見で、東京Vの城福浩監督は「一番苦しい時期に我々を支えてくれた方々のことを心にとどめて戦わないといけない」と、15年も続いたJ2での戦いのなかでもクラブを見捨てなかった人たちの思いを胸に戦うことを誓っている。

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 一発勝負のプレーオフ決勝は、年間順位3位の東京Vと同4位の清水の対戦となった。国立競技場での大一番、東京Vは引き分けでも16年ぶりのJ1昇格が決まるという優位な状況にある。会見で城福監督は「チームが一丸となってここまで来ることができました。ホームで戦えることもありますし、多くのサポーターの方と一緒にクラブの願いを叶えたいと思います。悔いなく、我々らしい試合をしたいと思います」と、第一声を発した。

 準決勝のジェフユナイテッド千葉(2-1)戦後も、決勝に向けた特別な対策は立てずに、普段通りを貫いてきたと城福監督は言う。「プレーオフ準決勝でも、自分たちがレギュラーシーズンの42試合を通してやってきたことを引き続きやりました。もちろん対戦相手である清水エスパルスさんの特徴は頭に入れながらも、これを変えることなく、いつも通りの準備をしながら、自分たちが何を目指してやってきたかを確認した1週間でした」と、激闘となった準決勝と同じスタンスをとっているとした。

 今シーズン、城福監督は意識的に「J1昇格」という言葉を使わなかったという。そこには周囲からは、東京VがJ1に昇格できるクラブではないチームだと見られているという認識があった。

「もちろん我々自身、自分もほかのスタッフも、選手も、みんなそういう(J1に昇格するという)思いは持っていました。でも、周りからはそう思われていない。そういう(J1に昇格する)チームじゃないと思われていることも十分に承知していました」

 そこで目標に据えたのは、周囲からも「これがヴェルディのサッカーだ」と認識してもらえるものを作り出すことだったという。それがシーズンを通してできるようになっていれば、結果は後からついてくるという考え方だ。

「なので、あまり具体的な目標を言うのではなく、我々がどういうサッカーを目指しているのか。来年、J1だろうが、J2だろうが、自分たちはヴェルディのサッカーがどういうものか形容できるものを目指し続ければ、おのずと我々が望むステージに手が届くだろうと言っていた。まずは、ステージを口にすることではなく、我々の目指すサッカーを1日1日、毎週毎週、目指し続けることを大事にしてきました。そういう目標としてのポジションは口にしなかったですし、プレーオフも、あくまでもリーグ戦で目指すもの、その毎日目指すものの先にプレーオフがあると思っています」

 そのスタンスがあるからなのだろう。「試合前、選手たちにどんな言葉をかけて送り出したいか」と問われた清水の秋葉忠宏監督は、「思い切り、煽ろうと思います。最後は執念、執着。どっちがJ1でプレーしたいのか。勝つための野心的なプレーができるかどうか」と語り、MF乾貴士も「自分たちが目指しているところはJ2ではなくJ1」と言い切り、プレーオフファイナルの舞台を特別視していたのに比較すると、少なくとも表面上は、城福監督は2日後の決戦に向けて冷静な様子だった。

 一方で、東京VをJ1に昇格させることの重要性も、強く感じている。15年という長い年月をJ2で戦うことになったが、降格した当時について「直接、関わっていたわけではないので、アウトサイドからの情報でしかない。そういう感覚でしかないが」と前置きをしたうえで、クラブを支えてきた人々への思いを続けた。

「(J2に降格した)15年前は、存続の危機に見舞われていたと認識しています。そんなヴェルディを潰すことなく、存続するために努力する方々がいてくれて、奈落の底に落ちた時でも支えてくれたサポーターがいました。どちらかというとネガティブな印象しか持たれないようなクラブを、ずっと支え続けてくれたクラブの関係者、周りのスポンサー、サポーターの方々がいてくださった。その事実があり、今こうやって我々はこういう舞台に挑めます。一番苦しいときに我々を支えてくれた方々のことを心にとどめながら戦わないといけないと思っています」

 そう熱く語った城福監督だったが、あらためて試合に向けては「通常の我々のことしか出せない。日頃、我々のやってきた最大値を出す。120%出すといってやれるなら、僕は何万回でもその単語を使う。我々はやってきた100%しかできないし出せない。やってきたことをしっかり出す。これが大事だと思います」と、繰り返した。

 熱い思いを胸に持ちながらも、冷静に戦う。指揮官が選手たちと築き上げた日常が、J1のスタンダードになっているかが、試される90分になる。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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