「浦和で一番の思い出の1つ」 劇的決勝弾のカンテ、取材エリアで見せた涙の訳「これ以上のいい結果はない」
ACL武漢戦で途中出場から殊勲のゴール
浦和レッズの元ギニア代表FWホセ・カンテは、11月29日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループリーグ第5戦の武漢三鎮(中国)戦で、アディショナルタイムに決勝ゴールを挙げた。今季限りの現役引退を表明しているストライカーは、埼玉スタジアムでのラストゲームを終え、取材エリアで感極まって涙を見せた。
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浦和は前半に先制するも後半23分に追いつかれた。その時にタッチライン際で交代を待っていたのが、進境著しいタイ代表MFエカニット・パンヤに加え、今季限りの契約満了が発表されたオランダ人FWアレックス・シャルクとカンテの3人だった。これが今季のホーム最終戦だっただけに、シャルクとカンテにとっては埼玉スタジアムでプレーするラストゲームになる。交代投入直前の同点劇だったが、カンテは横のシャルクに向け、「これは俺らにとってはいい1-1だな。俺らで勝負を決められる」と話しかけたという。
それが実ったのは後半45分だった。MF大久保智明からシャルクへの浮き球パスが相手のカットでこぼれると、それをカンテが奪い取る。胸でコントロールしたボールの落ち際を左足ボレーで叩いた一撃は武漢ゴールを破って2-1の劇的な決勝ゴールに。殊勲のストライカーは「あの瞬間、ボールが僕のところに飛んでくるとは予想していなかった。いつものように、急に、突然生まれるゴールだった。ボールが来た時に僕の走っているコースで、ディフェンダーも逆サイドに上手くスイッチしたので、僕がコントロールをした時にはいいスペースが生まれた」と話した。
浦和はプレシーズンにストライカーの獲得を目指したものの頓挫。その時、前年に中国の滄州雄獅でプレーしていたカンテが獲得可能な選手として浮上した。開幕後の3月に加入するとコンディションが上がるのに少し時間は要したが、特に夏以降しなやかな身体の動きと左右両足から生まれる強烈ショットで存在感を示した。そんなカンテのゴールは「理不尽砲」などと話題になった。しかし、33歳になって数か月の男は今季限りでの現役引退を決断した。
「何かの作戦なのかなと思われるかもしれないが、2、3か月経てば僕は友達と、自分の息子とゆっくり時間を過ごしているでしょう。心の底で決めた判断で、これは何年も考えていたことなので、その判断を変えるタイミングではない。ただし、もしかしたらあと3、4年はプレーができるのかもしれない。それは分かっているけれども、僕にとっては、しっかりとしたお父さんになる素晴らしいタイミングで、サッカーのキャリアを終えたあとになりたかった自分の理想像になるためにいいタイミングだと思う」
取材エリアでここまで話したカンテは感極まり、流れる涙に上を向いた。通訳を務める松下イゴール氏も同じく感極まった。そして、「これ以上のいい結果はなかったでしょう。もちろん自分のエンディングは、このようなことを想像していなかった。今日がこのような日になるとは想像していなかった。素晴らしい形で、ここ埼玉スタジアムで終えられたと思う。正直に言うと、今日が(浦和で)一番の思い出の1つかなと思う。ゴールを決めたからというわけではなく、本当に最後にスタジアムを一周した時に皆さんからの愛を受け取り、自分の感情をコントロールするのが難しかった」と話した。
スペインで生まれ育ち、父親のルーツであるギニア代表でのプレーを選択したカンテは約10年にわたって海外でのプレーを続けた。今季を終えれば、その間に生まれて今は7歳になる息子と過ごす日々が待つ。穏やかな表情で「お父さんという立場で、一緒に時間を過ごして学校に連れて行って迎えに行って、何か行きたいところには一緒に連れていって、普通のお父さんをやりたい」と話したカンテは、わずか1シーズンながら強烈なインパクトを残し、惜しまれながら埼玉スタジアムでのプレーを終えた。