契約満了のシャルク、浦和で愛された“ナイスガイ”が退団へ ファン&記者を虜にしたポジティブな姿勢【コラム】
細かな負傷で出番は限られたが、記憶に刻むプレーを残す
J1浦和レッズは11月27日、オランダ人FWアレックス・シャルクが契約満了により今季限りでの退団となることを発表した。負傷が多くピッチに立つ機会は少なかったが、誰からも愛される「ナイスガイ」として記憶に残った。
シャルクは2022年のシーズン開幕後、春の登録ウインドウ終盤に浦和への加入が決定。左サイドハーフやトップ下での得点力が期待され、合流直後にはタイで開催されたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)グループステージへ。山東泰山(中国)戦では鮮やかなフリーキックを決め、期待も高まった。
オンラインで行われた会見から明るいキャラクターと誠実なコメントが印象的で、浦和では初の「ビーガン」を公言した選手としても話題になった。しかし、惜しむらくは細かな負傷が多かったこと。この2シーズンで安定的に稼働できた時期があまりなく、試合で期待感を持たせるプレーを見せたと思うと数週間の離脱というパターンが繰り返されてしまった。
印象的な一幕は今年8月のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフの理文(香港)戦の前日練習だった。5月20日のアビスパ福岡戦を最後に公式戦のメンバーに入ることがなかったシャルクが、誰よりも大声でチームを盛り上げていた。翌日のゲームで約3か月ぶりの出場をしたシャルクには、取材エリアで思わず「これは質問ではないけど、その姿勢が報われてほしいと願っている」という声をかけた。
シャルクは「1人でいる時はもちろん落ち込むこともあります。だから良くない状況のなかでも、自分で自分をプッシュしながら、ポジティブにやらないとチームに貢献できないと思います。2か月前に怪我をした時には1週間か10日ぐらいかなり落ち込みましたけど、そこからもう一度立ち上がっていこうと思いました。自分のキャリアではずっとそのようにやってきたんですけど、常にハードワークをしながらポジティブにやって、自分に可能な限りいい人間になろうと思って頑張っていますよ」と笑顔で話していた。
そして、9月にはルヴァンカップ準々決勝のガンバ大阪戦で、アウェーでの初戦で強烈なミドルを決めて先制点。ホームでの第2戦は途中出場だったが試合を決定付けるゴールも決めた。これこそ、加入した時から期待した姿だと誰もが思った。しかし、そのゲームの終了間際での接触で足を痛めていたシャルクは、再び離脱の期間になってしまった。
活躍も負傷で離脱を繰り返す…オフ・ザ・ピッチでも魅力的な一面を見せてきた
それは本人にとっても苦しい時間だった。途中出場だった25日のアビスパ福岡では追撃の1ゴールを決めたが「良いタイミング、良い状況の時に怪我をしてしまい、不運なタイミングでした。もう少しチームに貢献できたら、重要な選手になれたら、もう少し出場時間を得られたらという思いがあります。もちろん自分のベストを尽くしました。クラブの皆さんには、僕がこの試合のために準備を整えるためにベストを尽くしたことは知ってもらえていると思います。ただし、個人的にはもう少しチームを助けられたら良かったんですが」と話した。
日本での生活を前向きに捉えて母国にも前向きな発信をし、今季前のキャンプで同じオランダ人のFWブライアン・リンセンと兄弟のような掛け合いをする姿もサポーターを和ませた。出場記録を見れば外国籍アタッカーに期待したものに及ばないのは事実だろう。ただ、彼の今後のキャリアが幸運に恵まれることを願わずにいられない。
(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)