久保建英が「放映権問題」にコメントした本当の訳 誰よりも強い責任感を負う22歳の思いとは【現地発】
久保建英はシリア戦後に放送のなかったことについて言及
森保一監督率いる日本代表は11月の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選でミャンマー、シリアと対戦し、2連勝を飾った。そのなかで、話題となったのが中立地サウジアラビア・ジッダで行われたシリア戦での「放映権問題」。MF久保建英にとってはかねての切実な願いであった「日本代表が日常に――」という思いとは反対に日本では放送されなかった。久保自身が感じた葛藤は、次のアウェー戦で生きてくるのか。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
◇ ◇ ◇
「いろいろコメントとか見ましたけど、田嶋会長が言っているとおり、いくら日本で試合を中継したいからと言って、相手の要求を全部飲むわけにもいかないと思うので、そこは僕ら選手にどうこうコメントできる問題じゃないけど、やっぱりお互いの国と国の優しさを出してくれたら、日本のみんなも試合を見ることができてハッピーだったかなと個人的には思ったりもします」
シリア戦の終了後、久保は放映権問題についてこう口を開いた。日本でも大きな話題となったが、シリア戦は結局中継されなかった。これは権利を持っているシリア協会から放映権を買った代理店が日本に対して金額を釣り上げてきたからだ。深夜帯にもかかわらず、通常の1.5倍ほどだったという。これに日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長も怒りをにじませていた。
久保はシリア戦で大きな大きな先制点を挙げた。自身にとってはW杯予選初ゴール。前半32分、伊東純也からのパスを受けると、左足を振り抜き強烈なミドルシュートを決めた。この時間帯まではなかなかゴールをこじ開けることができず、日本代表にとっては勢いをつける1点以上の価値があった一撃と言ってもいいだろう。
「僕のゴールを見てほしいというより、代表の試合は当たり前に地上波でやってほしい思いはありますね」
だからこそ、久保自身は地上波放送にこだわっていた。というのも、久保はかねて、「日本代表」というコンテンツに対して切実な思いを持っているからだ。
「W杯がすべてじゃない。まずはそのための2次予選に集中したい。もっと日常から日本代表に注目してほしいな、と。W杯ありきの日本代表じゃないので。こういう2次予選だったり、親善試合でももっともっと注目してもらえるような。(W杯とか)そういう枕詞とか抜きにしても、実力だけで注目してもらえるような代表になりつつあると思うので、強い代表を明後日の試合でも見せていきたいなと思います」
シリア戦前にもこう話していた久保。幼い頃からスペインで育ち、サッカーが文化として根付く街で当たり前のようにサッカーとともに育ってきた。今もスペインで暮らし、日常のリーグ戦、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)など大きな影響を感じていることだろう。だからこそ、日本代表も国民にとってもっと「当たり前」の存在になれるよう心から願っているし、その働きかけをしてきた。
自身の言葉が注目されることも、例えば切り取って使われてしまうことがあるのも分かっている。だけど、久保は必ず報道陣に対して丁寧に対応する。絶対に発信をやめない。それが久保建英という男だ。
2次予選、アウェーでの放送は未定で今後も同じような状況に陥る可能性はある。今回のように屈しない姿勢は正しかった。久保が話すように「お互いの国と国の優しさを出してくれたら」。久保が、選手が、ファンが、悲しむような結末にならないように願いたい。