W杯アジア2次予選の意義…日本代表主将の“現場の声”にOBが持論 「特例を作るわけにもいかない」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】主将の遠藤は「2次予選の形がどうなんだ」と疑問提起も…
森保一監督率いる日本代表は、11月21日にサウジアラビア・ジッダで行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選第2戦でシリア代表と対戦し、5-0で快勝した。2試合連続で5-0と圧倒的な力を見せつけた一方、一部の出場国との力の差は明白で、キャプテンのMF遠藤航は2次予選の在り方を疑問視した。日本代表OBの栗原勇蔵氏は「時代は変わってきている」とA代表のレベルアップを評価しつつ、「特例を作るわけにもいかない」と見解を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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森保ジャパンは、11月16日のW杯アジア予選初戦のミャンマー戦に続き、シリアにも5-0で快勝。だが、格下と言える相手との対戦、さらには移動や時差もあり、選手にとっては大きな負担となっている。2次予選、油断は禁物ながら正直勝って当たり前と見られる。
シリア戦は高額な放映権がネックとなって日本で放送されず、大きな問題ともなった。そのなかでキャプテンの遠藤は、アジア2次予選の在り方も含めて問題を提起した。
「本来なら少しでも多くのファン・サポーターに見てもらいたいのが本音だけど、仕方がないというか、そもそも2次予選の形がどうなんだというのもある。こういう試合を実際にファンの人に見てもらった時に楽しんでもらえるのか疑問もある。点が入って楽しいという人もいれば、物足りないという人もいるとなると、この(2次予選の)形がどうなのかというのは選手としても言っていければ。少しでも多くのファンに興味を持ってもらいたいのは事実でもあるので」
遠藤はシリア戦の前にも、「今回に限らず、前回からもう2次予選は自分たちはどれだけやる意義があるかというのがあった。2次予選の在り方は日本だけで何かアピールするのは難しいかもしれないけど、違うやり方でW杯予選をすることはできるんじゃないかと思ったりはしている。AFC(アジアサッカー連盟)が最終的に決めることだとは思うけど、選手側から意見を言っていくのもありかもしれないし、ほかの方法も探りながらアジアももっとレベルが上がっていく形にしていけるのが理想だと思う」と発言していた。
選手から明確な意見が上がったことは話題を呼んだが、日本代表OBの栗原氏はW杯予選のレギュレーションを変えることは難しいと考えているようだ。
「時代は変わってきているし、力量差的な余裕が出てきたのかもしれません。遠藤の意見は一理あるだろうし、尊重もするけど、特例を作るわけにもいけない。もちろん、力の差が大きい国はあるけど、相手があることだし、難しい試合は絶対ある。特別扱いもできないので、難しいですよね。プレミアリーグとか欧州5大リーグでプレーする選手が増えてきた。よりいいものに変えていくのがルール。選手たちで決めることではないので、出過ぎてしまうと難しいですけど、そこは上手く見極めていければ」
代表活動があるたびに選手たちの負担が懸念されているだけに、“当人たちの声”にも耳を傾けるべきなのは間違いない。
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。