森保ジャパンがW杯後に変貌 日本代表OBが称賛「勇気を持ってメスを入れた」【解説】
【専門家の目|金田喜稔】23年の公式戦全10試合を終えた日本、8勝1分1敗の好成績
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング18位)は、現地時間11月21日に中立地のサウジアラビア・ジッダで行われた北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選でシリア代表(同92位)と対戦し、5-0で勝利した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、
2023年の公式戦全10試合を終えた日本代表の成長ぶりを称賛し、「勇気を持ってメスを入れた」と評している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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シリアに快勝し、日本代表は2023年の公式戦を終えた。2022年カタールW杯後、1年間で10試合を戦い、8勝1分1敗・36得点8失点と圧倒的な好成績を残している。
(1)3月24日 国際親善試合 ウルグアイ戦(△1-1)
(2)3月28日 国際親善試合 コロンビア戦(●1-2)
(3)6月15日 国際親善試合 エルサルバドル戦(○6-0)
(4)6月20日 国際親善試合 ペルー戦(○4-1)
(5)9月10日 国際親善試合 ドイツ戦(○4-1)
(6)9月12日 国際親善試合 トルコ戦(○4-2)
(7)10月13日 国際親善試合 カナダ戦(○4-1)
(8)10月17日 国際親善試合 チュニジア戦(○2-0)
(9)11月16日 W杯アジア2次予選第1戦 ミャンマー戦(○5-0)
(10)11月21日 W杯アジア2次予選第2戦 シリア戦(○5-0)
3月から再始動した第2次森保ジャパンについて、金田氏は大きな変化を感じている。
「カタールW杯でドイツ、スペインに攻め込まれながらも少ないチャンスをものにした日本は、『奇跡の勝利』とも言われた戦いを演じた。カウンターサッカーがある程度通用したが、一方で主導権を握るサッカーはできなかった。第2次森保ジャパンでは、勇気を持ってそこにメスを入れた。強豪が相手でも引かないスタイルを取り入れ、試行錯誤しながらも、そのやり方を貫いた」
カタールW杯後、選手たちは研鑽を積みながらさらなる飛躍を目指して努力を続けている一方、日本代表もチームとして成長を遂げている。
「チームも選手も共通の課題を意識し、一丸となってトライしたから、徐々に結果と内容が伴い始め、その結果がW杯2次予選でも出ている。もちろん、選手たちの経験値増加や成長があってこそだが、チームが目指す方向性にブレがなかったのも大きい。だから、メンバーやシステムが変わっても、攻守ともに目指す方向は同じだった」
攻撃と守備についても言及「ブラッシュアップができた1年だった」
そう分析した金田氏は、攻撃と守備についても言及した。
「守備では最終ラインを高く保ち、全体の陣形をコンパクトにしながら、時に前線からハイプレスをかけ、中盤でのボール回収も狙い、アグレッシブな守備を継続した。前線でコースを限定し、中盤で追い込み挟み込んでボールを奪い切る。前線のハイプレス、中盤のプレスと、いわば2段構えが機能している」
「攻撃では最終ラインでのパス回しが安定しているし、縦パスを常に狙い、縦の意識も強い。また陣形がコンパクトな結果、選手間の距離も近く、ボール奪取後に効果的かつ正確なパスが通りやすい。さらに、スピードやスキルを備えた個人の能力を生かし、左右や中央を問わず、自分たちから仕掛けるスタイルにも磨きをかけている。両サイドにトップクラスのアタッカーがいるのは日本の強みで、それも上手く残しつつ、ブラッシュアップができた1年だった」
一歩一歩着実に歩みを進める日本代表の目標は高く、26年W杯までの道のりはまだまだ長いものの、内容を伴った2023年の好成績について金田氏は「カタールW杯の経験と反省を生かし、選手、監督、コーチ、スタッフらが同じ絵を描いた結果だと思う」と総括していた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。