なでしこ“異例パス回し”、ウズベキスタンの本田監督が明かす裏側 「日本がそのような戦術を取った時点で…」

ズベキスタン女子代表を率いる本田美登里監督【写真:Getty Images】
ズベキスタン女子代表を率いる本田美登里監督【写真:Getty Images】

ウズベキスタンの女子サッカー事情など記者の質問に回答

 ウズベキスタン女子代表の本田美登里監督が11月22日にメディアの囲み取材に対応し、先日のパリ五輪アジア予選やウズベキスタンの女子サッカー事情などに答えた。

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 本田監督は1981年に現在なでしこジャパンの愛称で知られる日本女子代表の結成メンバーに名を連ね、現役引退後は2007年に女性指導者で初めてS級ライセンスを取得。なでしこリーグのチームなどで監督を務め、2022年1月からウズベキスタン女子代表の監督を務める。

 ウズベキスタンの女子サッカー事情について、本田監督は「日本の女子サッカーの30年から35年くらい前がウズベキスタンの状況。風習も含め、20歳を過ぎたら女性は結婚するのが家族にも彼女にも幸せだというのが当たり前。この2年間でもかなりの選手が結婚して辞めていく。女子サッカーの認知度もなく、サッカー協会のなかでもプライオリティーが一番低く、遠征にも行けない。アジア大会も初めて出場というなかで、少し力を入れようと始まって、女子サッカーを知り始めてくれた。この状況を一番喜んでいるのは選手たちで、全く相手にされなかったところから評価を受けた」のだと話している。

 多くの苦労を重ねながら強化を進める過程で、本田監督は「スペースに蹴って走るサッカーから、走っている選手の足もとに出す。それだけはずっと言い続けてきた」という。そして「自分自身が日本人なので、選手たちに伝える映像がなでしこジャパンのものが多かった」のだと明かした。

 攻守の切り替えやビルドアップなどを見せ、女子でもできるというメッセージを伝えたというが、「そのリスペクトとともに、なでしこには勝てないという気持ちも植え付けてしまったようで」と苦笑い。今回の予選で組み合わせが決まった時の様子を「私は嬉しかったけど彼女たちは『勝てない』と。ただ、戦ってみたい気持ちはあったようです」と当時の状況を説明した。

 実際の対戦では、レギュレーションの関係から日本が2点リードした後に追加点を奪わずにボールを回した。ウズベキスタンもまた、そのことで得失点差がマイナス2で済んだことで最終予選への進出を決めた。批判も少なくなかったが、本田監督は「正直なところ手も足も出ない状況だった。日本がそのような戦術を取った時点で、我々にやるべきこともあった。それ以上の失点があってもおかしくないし、力の差は認めざるを得ない状況だった」としたうえで、試合の持つ意味、パリ五輪へ出場する可能性をつなぐ、最終予選へ進出することの意味があったと話す。

「組み合わせが決まった時から、なでしこをスカウティングしながら何回ハーフラインを超えるか、シュートを打てるか、どうにもならないとは思ったけど、ウズベキスタンの選手のためにも日本人で身体の小さな選手でもこれだけできると経験すべきだろうという意味で、(ガチンコで)やらせてあげたかった。ただレギュレーション、ウズベキスタンも女子サッカーの今後を考えれば、それより大きなものがあの試合にあった。また機会はあるだろうし、今回はそれよりお互いの国の中での女子サッカーの立場を考えた時に必要な選択だった」

 ただし、本田監督はウズベキスタンの選手たちが持つポテンシャルについて「彼女たちは身体の大きさも筋力もある。50メートルくらいのサイドチェンジはできてしまう。日本人にできないけど、中央アジアやヨーロッパの選手にはできる。そうなると、私の考えていた日本のスタイルが合わない部分も勉強させてもらった。シュートも日本人がペナ外から打っても入るわけないと思うところが、彼女たちはシュートレンジ。GKも178センチあるロシア系の選手で、しなやかに飛ぶ。足もとも悪くないけど、教わっていないだけ。そういう選手がフィールドプレーヤーにもいる。彼女たちを磨いていけば、アジアで今はCランクでもBランク、Aランクと上がれる」とも話した。

 男子サッカーではワールドカップ(W杯)最終予選の常連としてアジアでの馴染みも深いが、女子サッカーがウズベキスタンで地位を築くことに成功すれば同様にアジアのトップを争う国に発展する可能性は十分にありそうだ。来年2月には、オーストラリアとホーム&アウェーでパリ五輪の出場権を巡り最終予選を戦う。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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