かつて小野伸二も重傷…大差と負傷の「予選問題」 日本代表からこれ以上離脱者が増えないことを祈るばかり【コラム】
EURO予選でも大差の試合と負傷者が続出、スペイン代表のガビは今季絶望
2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選がすでにスタートしている。一方、欧州は欧州選手権(EURO)2024予選が大詰めだ。
アジアより力の差が少ない欧州ではあるが、それでも大差の試合は続出している。フランス代表はジブラルタル代表に14-0で圧勝。ポルトガル代表はルクセンブルク代表に9-0、イングランド代表は北マケドニア代表に7-0、スペイン代表はジョージア代表に7-1だった。
いずれも強豪国が大差勝ちしているわけだが、実力差があっても結構ベストに近いメンバーで圧倒している。アジア2次予選での日本代表の編成方針もこれらと同じだ。相手を見くびることなく、全力で叩き潰すスタイルである。
ただ、日本と欧州では環境が違う。欧州での予選に移動負担はそれほどないからだ。遠くても飛行機で3、4時間ほどであり、時差もほとんどない。日本代表には多くの欧州クラブに所属する選手が含まれていて、彼らはおよそ10時間のフライトと8時間の時差という比較にならない移動負担がかかる。アジア内での移動距離も欧州間より長い。
EURO予選で気になるのは負傷者の多さだ。スペインはガビが今季絶望の重傷を負った。それがすでに予選突破を決めたあとのジョージア戦だっただけに物議を醸している。スペイン代表とすればガビの代役は探せるかもしれないがFCバルセロナには大打撃だ。
19歳ながらバルサのレギュラーであり重要な役割を担っている。国内リーグだけでなく、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)やパリ五輪、EURO本大会での活躍が期待されていた逸材だった。レアル・ソシエダのキャプテンでエースストライカーのミケル・オヤルサバルも負傷している。こちらもクラブにとって打撃は大きい。
ジブラルタルを容赦なく粉砕したフランスの17歳、ウォーレン・ザイール=エメリも年内復帰は困難とされる負傷。パリ・サンジェルマン(PSG)でプレーするMFはジブラルタル戦で代表初ゴールを記録したが、その際に足首にタックルを受けてしまった。
前途有望な若手の負傷は釣り合いが取れていない感じが残る
かつてシドニー五輪アジア予選のフィリピン戦で小野伸二が重傷を負ったのを思い出す。長期離脱のあとに復帰を果たし、日本代表やフェイエノールトでも活躍したが、負傷前の小野とは少し変わってしまったように思えた。慢性的な痛みを抱えるようになっていて、あの怪我がなければ、その後のキャリアも違っていたかもしれない。
ガビやザイール・エメリのような将来を嘱望される若手が負傷するのは残念だが、中堅でもベテランでも負傷する時はする。サッカーをやる以上、誰でも負傷のリスクはある。仕方のないことではあるわけだが、スペインが7-1で勝ったジョージア戦、14点も取ったフランスのジブラルタル戦という試合と、前途有望な若手の負傷は釣り合いが取れていない感じは残る。
日本代表はミャンマー戦の前に、すでに多くの負傷者が離脱していた。ミャンマー戦後も鎌田大地が離脱している。実力差のある試合では相手がラフプレーに走ることもあり、ことにルールを理解しているのかも疑わしいほどラフな北朝鮮代表との連戦(24年3月21日・26日)も控えているだけに、これ以上負傷者が増えないことを祈るしかない。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。