アルゼンチン名手を彷彿? U-22日本代表MF藤田譲瑠チマの安定感がもたらした攻撃陣の躍動【コラム】
MF藤田、U-22アルゼンチン代表戦で攻守に躍動【カメラマンの目】
11月18日、来年のパリ五輪出場を目指すU-22日本代表がU-22アルゼンチン代表と強化試合を行った。その対戦したアルゼンチンで、後半からピッチに立った背番号5のフェデリコ・レドンドの父は、往年のスター選手であってフェルナンド・レドンドである。
フェルナンド・レドンドのことは改めて説明するまでもないが、彼は1990年代にアルゼンチン代表とクラブではレアル・マドリードなどで活躍した名手だ。背筋をピンと伸ばし、中盤の底からインサイドキックを多用する、味方とのパス交換でゲームを支配する姿はエレガントで、今でもそのプレーは記憶に残る。
長髪に甘いルックスと華麗なプレーで美しさを醸し出していたフェルナンド・レドンドだが、局面によってはアルゼンチンサッカーを象徴するような荒々しさも兼ね備えていた。
相手の動きを封じる激しいチャージも辞さない逞しさも、彼の魅力の1つだった。指揮官にしてみれば、こういった選手が中盤にいるとチームに安定が生まれ、実に頼りになったことだろう。
そのDNAを受け継ぐフェデリコ・レドンドも、父と同じ中盤の後方のポジションを担っていた。ハビエル・マスチェラーノ率いるアルゼンチンはチーム全体でコンディションが上がっていなかったようで、後半に入ると失速。途中出場のフェデリコ・レドンドもその波にあらがえず強烈なインパクトは残せなかった。
アルゼンチンのなかにはフェルナンド・レドンドを連想させるような選手はいなかった。しかし、対する日本にはそうした安定感のあるプレーを見せた選手がいた。
中盤でのパスワークの中心となり、チャンスと見れば味方選手の動きに呼応してスルーパスを前線に向けて放つ。南米の強豪相手に1対1での勝負も一歩も引かず、チームを引き締めたのが藤田譲瑠チマだ。カメラのファインダーを通して見る、身体が少し反り返るくらい背筋を伸ばしてパスを出す藤田の姿は実に颯爽としていた。
日本は先発した佐藤恵允と鈴木唯人がゴールを決め、途中出場の松村優太も強烈なミドルを叩き込み、さらに福田師王が代表初得点を記録した。ベストメンバーと言っていいアルゼンチンから見事に5得点を挙げて撃破したのだから、注目は攻撃陣に向けられる。
だが、松木玖生らとのパス交換でアルゼンチン守備陣を翻弄し、ディフェンスに回ればボール奪取が光った、攻守に渡ってリズムを作った藤田のチームへの貢献度は見逃せない。中盤で安定感のあるプレーを見せた藤田は、左腕にキャプテンマークを巻くことからも分かるように、U-22の日本代表にとって欠かせない存在であることは間違いない。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。