かつて柿谷曜一朗のライバルと言われた男 河野広貴が19日のC大阪戦に秘める2つの思い
独りよがりだったプレーは変わった
ベンチに追いやられる中で、それまで独善的だったドリブラーは周囲を生かし、生かされるプレーを身につけた。ポポヴィッチが伝えたかったのは、ドリブルをするエリアのすみ分けだった。また、ボランチで起用したのは球際の強さや、素早い攻守の切り替えの重要性を気づかせるためだった。
「いま、試合に出られているのは確かにポポのおかげだと思う。だから感謝はしている。だけど、悔しかったし、それは消えないよ」
今季は、その才能がマッシモ・フィッカデンティ新監督の目にとまった。トップ下で鋭い動きと、機知に富んだプレーで存在感を発揮し、ここまで6試合に出場して2得点を挙げている。
リベンジを誓う男には、相応しい場所が用意された。試合のチケットは、2日前にソールドアウト。天候にもよるが、18日は満員の味スタが舞台となる。
深い懊悩を乗り越え、「大人になったでしょ、オレ」と苦笑いする男に聞いた。
「ライバルの柿谷選手がいますが」
それを聞いた河野は、緩んだ口元を引き締め、目に力を宿した。
「点取りますよ。負けられないね」
これまで「ずっと自信満々でやってきた」という鼻を折ったかつての指揮官と、ライバルの存在が一層気持ちを高ぶらせるのだろう。ただし、彼らが再会する河野広貴は以前とはちょっと違うはずだ。
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馬場康平●文 text by Kohei Baba