浦和がJ1優勝を成し遂げられなかった“最大の理由” リーグ最少失点も神戸と勝ち点11差に開いた訳は?

浦和のマチェイ・スコルジャ監督【写真:徳原隆元】
浦和のマチェイ・スコルジャ監督【写真:徳原隆元】

神戸に敗戦して優勝の可能性が消滅

 浦和レッズは11月12日のJ1リーグ第32節、ヴィッセル神戸とのホームゲームに1-2で敗れ、今季リーグ優勝の可能性が消滅した。マチェイ・スコルジャ監督は「(ホームゲームでの)引き分けが多すぎた」と話した。

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 浦和は後半27分に先制を許すと必死の反撃で後半アディショナルタイム(AT)突入直後にFWホセ・カンテが同点ゴールを奪ったが、そのAT中に得た右サイドのフリーキックでGK西川周作が攻撃参加。しかし、ファーサイドを狙ったMF中島翔哉のキックに西川も競り合うが相手GK前川黛也がキャッチすると、前川が素早く前につないでFW大迫勇也が無人のゴールへシュート。これが決勝点になり、浦和は1-2で敗れた。

 同点の状況で大きなリスクを冒してまで西川が攻撃参加した理由が、このゲームは首位の神戸と勝ち点8差で迎えた残り3試合のタイミングであり、勝利しなければ優勝の可能性が消える試合だったことにあった。

 とはいえ、2位の横浜F・マリノスが前節終了時点で勝ち点6差で上にいたこともあり、DFアレクサンダー・ショルツが「この試合の前から、優勝というのはちょっと違うと思っていた。3試合で8ポイント差。僕にとっては、すでに前の試合から優勝のことは考えていなかった。ほかの方々はそのような優勝の可能性を考えるかもしれないが、僕はそのようなタイプではない」と話した感覚も正しいものだろう。リーグ戦は勝ち点を長いシーズンの中で積み上げていく戦いであり、1試合、2試合で何とかなるものではない。それまでに31試合を戦ってきたうえで神戸戦がある。

 スコルジャ監督は「我々がタイトルに手が届かなかった理由は、1つ2つ、あるいは3つにまとめられるようなものではない。1つのプロセスであり、チームというシステム全体の中にある。改善点はたくさんあると思う」という前提のもとに、「1つ挙げるとすれば、我々はこのスタジアムをよりうまく生かさないといけない。本日も素晴らしい雰囲気をたくさんのサポーターのみなさんがつくってくれた。私は『マジックスタジアム』、魔法のかかったスタジアムとよく表現するが、その素晴らしいファン・サポーターのみなさんの前での引き分けが多すぎた。それが勝利に変われば、またチームの状況も変わると思う」と話した。

 浦和の32試合24失点はリーグ最少であり、1試合平均0.75。これは素晴らしい数字と言えるが、32試合で38得点は優勝するチームの数字としては厳しいだろう。それが柏レイソルに次いで多い12引き分けに現れる。サッカーは失点しなければ負けることはないが、得点しなければ勝つことがない。無失点が14試合あるのはかなりの数字だが、無得点が12試合は厳しい。8試合のうち3試合は無得点で終わることになり、その重なり合うところに8試合も0-0での引き分けがあった。つまり、4試合に1試合のペースでスコアレスドローに終わってきた。

 ホーム、アウェーで6引き分けずつした中に、指揮官が「取りこぼした」と表現するような内容の試合がいくつもあった。順位がすべてではないが、最下位の横浜FCとは2引き分けだった。シーズンの前半から中盤にそのような試合を繰り返したからこそ、例えば前節の鹿島アントラーズ戦、アウェーでの厳しい戦いを0-0で引き分けたことをいい結果と捉えられなくなった。この神戸戦で同点から無理なリスクをかけてGKが攻撃参加をせざるを得なくなった。

12引き分けの半分を勝利に変えられていたら…

 神戸より敗戦が1試合多いだけなのに勝ち点11差があり、横浜FMより敗戦が1試合少ないのに勝ち点9差がある。それは57得点の神戸、62得点の横浜FMより20点ほど少ない得点数に要因を求めるのが自然だろう。オフシーズンからの選手編成がどうだったか、攻撃戦術の成熟度やそのスピードがどうだったか、個々の選手の能力や成長がどうだったか、選手起用のオプションをどれだけ増やしてこられたかと中身を見れば多岐にわたる。

 浦和は強化体制が一新された2020年シーズンを起点に3年計画を打ち出し、フレーズが独り歩きした感はあるものの最終年だった昨季は強くリーグ優勝を狙うと打ち出した。今季はそれに比べると強いメッセージは発していなかったが、夏の移籍ウインドーで中島を獲得した際の記者会見で土田尚史スポーツ・ダイレクターは「今シーズンの浦和レッズの立ち位置、目指すところはJ1リーグで優勝。そこに向けてのメッセージだと思っていただければ」と触れていた。

 引き分けを1つ勝利に変えられたら勝ち点は2ポイント増える。12引き分けのうち半分の6試合を勝利に変えられたら首位に立っていた。2006年以来のリーグ優勝が不可能ではないと感じさせる部分もあっただけに、1点が遠い試合の繰り返しが大きな目標への壁になってしまった。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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