森保ジャパン、W杯アジア2次予選“突破用マニュアル” 代表OBが展望、北朝鮮アウェー戦では「警備員が中指を…」【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】中東開催ゲームのジャッジは要警戒
2026年北中米ワールドカップ(W杯)のアジア2次予選がいよいよ始まる。森保監督率いる日本代表は、11月16日にミャンマー代表、21日にシリア代表と対戦。来年6月まで戦いは続く。「FOOTBALL ZONE」では、W杯アジア2次予選の特集を組むなかで、2014年のブラジルW杯に向けたアジア予選を経験している元日本代表DF栗原勇蔵氏に、予選を勝ち抜くためのポイントについて訊いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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日本(FIFAランキング18位)はアジア2次予選でグループBに入り、シリア(同92位)、北朝鮮(同115位)、ミャンマー(同158位)と同居となった。合計36チームが4チームずつ9グループに分かれてホーム&アウェーを戦う2次予選は、各グループの上位2チームが、3次予選に進出すると同時に2027年アジアカップの出場権を獲得する。
■アジア2次予選予定
第1戦:23年11月16日/ミャンマー(H)/パナソニックスタジアム吹田
第2戦:23年11月21日/シリア(N)/プリンス・アブドゥッラー・アル・ファイサル・スタジアム(サウジアラビア)
第3戦:24年03月21日/北朝鮮(H)/未定
第4戦:24年03月26日/北朝鮮(A)/未定
第5戦:24年06月06日/ミャンマー(A)/未定
第6戦:24年06月11日/シリア(H)/未定
※(H)=ホーム、(A)=アウェー、(N)=中立地
2014年ブラジルW杯のアジア3次予選、最終予選に出場した経験を持つ日本代表OBの栗原氏は、「W杯予選はホームとアウェーで全然違う」と語る。
「特に、中東はアウェーに行くと全然違います。(2012年6月8日に)ホームでヨルダンに6-0で大勝して、9か月後に行われた(2013年3月26日の)アウェーでは1-2で負けました。出ているメンバーは変わってないのに負けてしまう、独特の雰囲気が中東にはあります。何が起こるか分からないので油断はできません」
今回、シリアが内戦下にあり、11月のアウェー戦は中立地のサウジアラビア・ジッダで開催されることになったが、中東に変わりはなく、警戒が必要だろう。栗原氏は、オマーンとヨルダンと対戦した経験を基に、レフェリーのジャッジにも手を焼いたと振り返る。
「当時は、中東に行くと自分たちの不利になるような判定は多かった印象です。“見えない敵”や審判と戦っていたし、プレー以外に気を遣うこともありました。W杯予選ではありませんが、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)ではフィールドプレーヤーが横っ飛びして手でシュートをセーブして、ハンドも取られず普通にノーファウルで、コーナーキックになった時もあったくらいで(苦笑)、中東だと審判も雰囲気やプレッシャーにのまれてしまう。でも、今はビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)があるので、あからさまなことはないし、昔よりはフェアな環境でやれるはずです」
北朝鮮は侮れない不気味な存在
栗原氏は「ミャンマーは日本とは若干実力差を感じますが、シリアには苦しんだ過去がある。北朝鮮は正直に言って、不気味な存在」と、未知の部分が多い北朝鮮を警戒する。実際、栗原氏は2011年11月15日に首都・平壌の金日成競技場で行われたW杯アジア3次予選の試合(0-1)にフル出場している。来年3月のアウェーゲーム開催地はまだアジアサッカー連盟(AFC)から発表されていないが、今年9月に北朝鮮が外国人の入国を許可したとの報道もあり、中立地ではなく、北朝鮮で開催される可能性はゼロではない。
「アウェーという言葉がありますけど、本当の意味でアウェーというのは北朝鮮での試合のことを言うんじゃないかと思ったくらいです。あれ以上の経験はない。守ってくれる警備員も移動のバスに向かって中指を立ててきたり、石を投げつけてきたり。負けたから無事に帰れたのではないかというか、勝っていたら下手したら帰国できなかったもしれない(苦笑)」
ペン記者6人、カメラマン4人のみという限られた人数しか取材許可も下りず、入国に際して携帯やパソコンなどを一時没収されたという話は有名だが、選手たちも緊張感のあるなかで日々を過ごしていたという。
「平壌空港に着いて、携帯、パソコン、娯楽品すべてを没収。気温2度くらいの場所で、4時間足止めされて、まさにアウェーの洗礼を食らったと思いました。街は高層マンションとかもあって、廃れているわけではなかったですけど、いい場所だけ通っているなんて話もありましたし、(アルベルト・)ザッケローニ監督が散歩をして怒られたとも聞きました。部屋がマジックミラーで監視されていると噂があって余計なことはするなという話になっていて、部屋の前の廊下を銃を持った兵隊が常に歩いていた。仲が良かった李忠成は『怖いから一緒に寝ましょう』と僕の部屋に来たくらい。テロみたいな怖さもありますけど、北朝鮮は別次元ですね。当時の北朝鮮は強くて、普通に力負けしたこともあった。日本も成長しているけど、人工芝の難しさもあるし、侮れない相手だと思います」
最後に栗原氏は、アジア2次予選の“ノルマ”として、「全勝で勝ち上がるくらいの意気込みで臨んでほしいです。ホームではもちろん勝ち点3、アウェーでいかに勝ち点を取り、相手に勝ち点を与えないか。どの選手が出ても圧倒できるような内容の戦いを期待します」と森保ジャパンにメッセージを送っていた。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。