U-22日本代表主将・山本理仁の誓い シント=トロイデンで信頼獲得へ「絶対的な存在になれると思う」【現地発】
J1のG大阪からベルギー1部シント=トロイデンへ移籍の山本「手応えもある」
ベルギー1部シント=トロイデンでプレーするパリ五輪世代・U-22日本代表キャプテンのMF山本理仁は、今季リーグ第14節を終えて14試合すべてに出場を果たしている。スタメン出場は1試合と多くはないかもしれないが、シーズン序盤に数分しか出られなかった頃と比べたら出場時間とプレー機会は確実に増えてきている。
2023年7月にJ1ガンバ大阪から期限付き移籍し、クラブに加入して4か月あまり。山本は自身の立ち位置をどのように捉えているのだろうか。
話を聞けたのはリーグ第12節ホームでのモレンベーク戦後のミックスゾーン。広報とともに姿を現した山本は、試合について、自身のプレーについて、掴んでいる手応えと感じている課題について丁寧に話をしてくれた。
この日、後半開始からピッチに立った山本はタイミング良く中盤スペースに顔を出してはパスを引き出し、前半手詰まり感のあった攻撃にリズムをもたらした。アシストやゴールという数字は残せていないが、そこへつながりそうなところでボールをもらえている感触は掴めてきているようだ。
「その手応えはありますし、自分のところでボールを失わないっていう手応えもある。ただそこから何ができるか。やっぱり、キーパスを出していかないと自分の存在感っていうのは出せないと思っていますし、そういうのを求められている。だからその先を求めていきたいなと思っています」
海外移籍初年度はさまざまな部分への順応・適応に向けて時間を要するものだ。感触を掴んだつもりでも、次の試合になったらまるで違う状況に四苦八苦しなければならないことだってある。コミュニケーションが取れるようになったと思っても、互いのプレーを掴めるようになってきたと感じても、心の底から確信を持ってプレーし合えるようになるまでには、日常からすり合わせが必要になるだろう。分かったつもりにならず、分かってもらったつもりにならず、常にメッセージを込めたプレーをして、フィードバックをし合うことが大切なのだ。
「例えば、今日だと1本、FWの選手へ足もとに速いパスを出したシーンがありましたけど、彼は相手守備の背後に抜けてしまったということがありました。そういったずれはありますけど、でもやっぱり(パスを)出していかなきゃ多分伝わらないと思うし、出してからそこに入れよみたいなやり取りが必要だなと。口で言うだけよりも説得力があると思うんです。(プレーで)出したうえで、そこを要求していきたいし、そこが合ってくれば、自分の結果にもつながってくると思います。そこは前の選手とすり合わせていきたいですね」(山本)
元神戸監督へアピール「数字が求められてくると思う」
なぜそうしたパスを出したいのか、なぜそこでパスを受けたいのかをより明確に伝え合うために、戦術盤を持ってあれこれ言い合う前に、話し合える状況を実際の試合で作り出すことは有効なツールとなる。
もちろん、状況作りが目的になっては本末転倒だが、チームとして求められている役割を正しく認識したうえで、積極的に自分らしさを出していけば、そうしたプレーがどんなメリットをもたらすのか、その次にどんな状況が生まれやすいのかという視点で振り返ることができる。あるいは、逆に相手から改善点の指摘があれば成長につながる。
山本はここまでの順応に一定の手応えを掴んでいる一方、監督から全幅の信頼を勝ち取るためにはさらなる成長が必要であることを認識している。
「やっぱりあそこのポジションをやる以上、数字が求められてくると思う。アシストへの最後のクオリティーのところは、まだまだ上げていかないといけない。そういったものを出していければ、絶対的な存在になれると思う。そこは自分に求めていきたいなと思います」
今季シント=トロイデンで指揮を執る元ヴィッセル神戸監督トルステン・フィンクは、自分たちでボールを保持しながら、相手守備を崩すスタイルを志向している。ボールを回すだけではなく、相手陣内で変化をもたらし、守備のほころびを突き、決定的なシーンを創出する。そんなプレーをコンスタントに出せるようになれば、山本のレギュラーポジション獲得も近づいてくるはずだ。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。