U-22日本代表主将・山本理仁へファンが送った拍手喝采 「慣れてきた」…欧州での成長実感が生んだ好判断【現地発】
ベルギー1部シント=トロイデン所属の山本、モレンベーク戦のプレーを自己解説
日本を飛び出して海外でプレーをするうえで、現地で求められるサッカーに順応・適応するというのは極めて大事なテーマになってくる。サッカーは世界の共通語と言われるが、選手でも監督でもファンでも、「こうした場面ではこうしなければならない」と認識されているプレーが存在する。
欧州移籍を果たす日本人選手がどんどん増えてきているなかで、現地のサッカーに馴染む、認めてもらうという点では、試合の流れを読んで今必要なプレーをどれだけ瞬時かつ適切にできるかが重要になる。
今季からベルギー1部シント=トロイデンでプレーし、U-22日本代表でキャプテンも務めるMF山本理仁がベルギーリーグ第12節モレンベーク戦(2-1)でファンからの拍手を受けたシーンがあった。
後半途中、モレンベーク陣内でセカンドボールを巡って両チーム選手の激しい競り合いが続き、ファウルかファウルじゃないかでスタジアムがざわつくなか、モレンベーク選手が抜け出してカウンターに持ち込もうとした。ファウルを要求してスタジアム中のファンからブーイングが飛ぶなか、いち早く反応して鋭いダッシュで相手に身体を寄せて上手く“つぶした”のが山本だった。
危険なタックルではなく、正当なチャージでボールを奪い返したように見えたが、少しうしろからぶつかったという判定により、結果としてファウルとなった。その判定にまたファンが大きなブーイングが起きたが、素早く適切な判断でカウンターの芽を摘んだ山本に対して、拍手を送るファンが多くいたのが実に印象的だった。
ファンにも評価されたこのシーンを、山本自身はどのように考えているのだろうか。
「そうですね、(その前のプレーで)何人かピッチに倒れていたし、ごちゃごちゃしたなかで1回(プレーを)切ってもいいかなという、自分の考えで。カウンターっぽくもなっていたし、あれは自分的にも流れを読んだいいプレーだったのかなと思います」
ベルギーで感じる成長「こっちのスタイルに慣れてきた感はあります」
サッカーはリズムのスポーツでもある。自分たちのリズムを作り出すこと、そして相手をリズムに乗せないことは試合の主導権を握るうえでも極めて重要だし、ピンチになりそうな前にその芽を摘むプレーというのは、チームを救うファインプレーでもある。
「(移籍加入の)最初の頃はフィジカルのところでスピードとか、ゲーム展開の違いだったり、アジャストがやっぱり難しかったですけど、だんだんと身体もだし、こっちのスタイルに慣れてきた感はあります。
徐々にチャンスを掴めているし、スタメンの試合もあれば後半頭から入る試合も増えています。監督から徐々に信頼は勝ち得ているのかなっていうふうに感じます。納得いくほどではないですけど、徐々に徐々にステップアップできているのかなっていうふうには思います」
モレンベーク戦後にそう語っていた山本は、続く2部フランボランとのカップ戦ではスタメン出場を果たし、延長までもつれた試合で精力的に延長前半までプレーし、3-0の勝利に貢献した。
第13節オイペン戦では1点リードした状況の後半34分から出場。シント=トロイデンが試合の流れを掴んでいただけにこのまま勝利かと思われたが、アディショナルタイムに痛恨の同点ゴールを許し、1-1の引き分けに終わった。主導権を握りながら追加点が奪えず、最後に相手のクロスボールがそのまま入って失点というなんとも後味が悪い結果だ。
レギュラーシーズンは中盤戦に入る。公式戦3連勝とならなかったのは残念だが、それでも負けていないのはポジティブに受け止められることでもある。焦らず攻守にわたって貢献度の高いプレーでアピールを続けていきたい。
(中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano)
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。