U-17日本代表、W杯の勝算は? アルゼンチン、ポーランドら同居の難関グループ突破へ…歴代“最強レベル”のFW陣に期待【コラム】

日本代表のU-17W杯勝ち上がりを考察【写真:Getty Images】
日本代表のU-17W杯勝ち上がりを考察【写真:Getty Images】

インドネシアでU-17W杯開幕、日本はグループDでポーランド、アルゼンチン、セネガルと対戦

 U-17ワールドカップ(W杯)は11月10日にインドネシアで開幕。森山佳郎監督が率いる“06ジャパン”こと、U-17日本代表は11日にポーランドとの初戦に挑み、そこから14日にアルゼンチン、17日にセネガルと対戦する。森山監督も「最も厳しいグループ」と苦笑いを浮かべるとおり、D組は全6グループの中でもハイレベルな戦いが予想される。

 欧州3位のポーランドは予選を兼ねるU-17欧州選手権で、イタリアを破って準々決勝に進出したセルビアを相手に、3-2と打ち勝って世界行きを決めた。同大会では3-5-2を基本システムとしていたポーランド。エースはセリエBのパルマに所属するFWダニエル・ミコライエフスキだ。184センチというデータはあるが、おそらくそれ以上だろう。ボックス内での勝負強さと決定力はこの年代でも飛び抜けたものがあり、順調に成長していけばレバンドフスキのような存在になっていくかもしれない。

 もう1人、警戒すべき選手がMFカロル・ボリスだ。中盤の選手でありながらU-17欧州選手権では3得点を記録。ポーランド1部のスラスク・ヴロツワフで、すでにトップチームでプレーしている。左足の高度なスキルを持ち、英国の「ガーディアン」紙が2006年生まれのベストプレーヤーの1人として取り上げたほどだ。大柄ではないが、抜群のキープ力で相手を翻弄しながら、効果的なパスを繰り出す。ミドルシュートも非常に危険だ。

 またイタリア1部ACミランのU-19チームに所属する大型MFマテウス・スコツィラスは前線で起用されることもあり、中盤と前線をつなぐところで大きな仕事ができる選手だ。守備的なポジションでは左利きセンターバックのミハル・グルグルが注目。浦和レッズのマチェイ・スコルジャ監督が昨年まで率いていたレフ・ポズナンのトップチームでプレーしており、欧州チャンピオンズリーグ(CL)の予選にも出場するなど、飛躍に期待の懸かる選手の1人だ。

 2試合目の相手であるアルゼンチンはブラジル、エクアドルに次ぐ南米3位だが、A代表のカタールW杯優勝などで、国の機運が高まっているはず。ポテンシャルという意味では優勝候補の一角であることは間違いないだろう。特に前線には楽しみなタレント、日本から見たら危険なアタッカーが揃っている。

 なんといっても最大の注目は10番を背負うキャプテンのFWクラウディオ・エチェベリだ。そのファミリーネームから、元ボリビア代表FW(マルコ・エチェベリ)と同じ「エル・ディアブロ(悪魔)」の通称がある。アルゼンチン1部リーベルプレートですでにトップデビューしているエチェベリにはドイツの移籍専門サイト「トランスファーマルクト」で、17歳にして400万ユーロ(約6億4000万円)の価値が付いている。アルゼンチン屈指の名門クラブがそう簡単に手放すことはないはずだが、近い将来に欧州ビッグクラブで躍動する可能性は高いだろう。セカンドトップからチャンスメイクとフィニッシュの両面に絡む役割を担う。

 そのエチェベリと同じリーベルプレートに所属するMFフランコ・マスタントゥオノも見逃せないタレントであり、ダイナミックな動きで決定的なシーンを演出する。今回のアルゼンチンU-17代表で2007年生まれは同じくリーベルプレートのFWイアン・スビアブレと2人だけ。しかも、マスタントゥオノはハビエル・マスチェラーノ監督率いるU-20代表に招集されたこともあり、それだけの才能として認められているということだ。

 セネガルはアフリカ王者として世界大会に臨んでくる。U-17アフリカネーションズカップでは決勝でモロッコを破って頂点に立った。同大会で5ゴールを記録し、ゴールデンブーツを獲得したFWアマラ・ディウフは爆発的なスピードを持つウイングで、今年の夏にはネーションズカップ予選のルワンダ戦に出場。15歳と94日はセネガルの史上最も若いA代表デビューとなった。また守護神のセリーニェ・ディウフはU-17アフリカネーションズカップのベストGKにも選ばれており、大きな注目を集めるはずだ。

高校→欧州クラブ入り、“06ジャパン”も楽しみなタレントが…

 そうした相手に挑む“06ジャパン”も楽しみなタレントが揃っている。特に森山監督が5人を招集したFW陣は歴代のU-17日本代表と比較しても最強レベルだ。“帰ってきたエース”徳田誉(鹿島アントラーズユース)をはじめ、名和田我空(神村学園)、道脇豊(ロアッソ熊本)など、いずれも気鋭のタレントだ。高校2年でプロ契約を結んだ佐藤龍之介(FC東京U-18)や中島洋太朗(サンフレッチェ広島ユース)から、いかにラストパスを引き出してゴールを決めるのか。名和田はチャンスメーカーとしても期待が懸かる。またベルギーのゲンクに加入が決まったMF吉永夢希(神村学園)も今大会での飛躍を期待したい1人だ。

 攻撃的なポジションにタレントの多い“06ジャパン”だが、そのチームをまとめるのは頼れるキャプテンのDF小杉啓太(湘南ベルマーレU-18)だ。左サイドバックが基本ポジションだが、有事にはセンターバックでも奮闘する。168センチのサイズからは信じられない1対1の強さに加えて、心身のタフネスが強み。森山監督は試合ごとにスタメン入れ替えを示唆するが「小杉には全試合に出てもらう」と笑みを浮かべていた。GKの後藤亘(FC東京U-18)には流れの中でのセービングはもちろん、ノックアウトステージを勝ち上がるうえではPKストッパーとしての活躍が必要になるかもしれない。

 そういった注目選手はいるが、「1試合でも多く試合を経験させたい」と語る森山監督が目標に掲げるファイナリストになるには“日替わりヒーロー”の登場が欠かせない。チームが躍進することは同時に、選手たちの価値を高めることでもある。“06ジャパン”の躍進に期待しつつ、世界で羽ばたく各国のヤングスターの競演を楽しんでもらいたい。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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