なぜVVVフェンロは日本人選手を狙うのか 本田圭佑から始まったクラブ戦略の真相
クラブの経営を支える「プレーヤーズ・ファンド」
本田が来るまで650万ユーロだったクラブの年間予算は、10-11シーズンには990万ユーロと50%以上伸びた。ただし、とベルデン会長は言う。
「確かに本田のレプリカユニホームはたくさん売れましたが、マーチャンダイズが占める割合は低いです。基本的には入場料収入とスポンサー料。しかし今のスタジアムは8000人収容と小さく、これ以上の伸びは期待できません。1万7500人収容の新スタジアムを作る計画があるのですが、一部住民の反対もあって先に進んでいません」
現在、VVVは2部リーグに所属しているため、予算は500万ユーロに下がっている。その3分の2が人件費で、監督、コーチ、選手の獲得や給料に使えるのは350万ユーロほど。そこから大津の給与を支払うのは至難の業だ。
「しかし、オランダでは地元のクラブを愛する経営者、資産家が『プレイヤーズ・ファンド(基金)』を作って、資金を提供する方法があるのです。フェイエノールト、ヘーレンフェーン、ローダJC、NEC…。いろんなクラブにファンドがあります。例えばVVVのファンドが100万ユーロの資金を提供した場合、今季のVVVは450万ユーロの人件費を使えることになります。選手を売った場合、あるパーセンテージのリターンがファンドに戻って来ますが、このお金はいったんプールし、次の資金提供に備えます。ファンドは得をすることもあれば、損もする。この資金のリスクをクラブがとる必要はないのです」
こうしたファンドの存在が、小クラブVVVの日本人選手獲得を可能にするのである。
「今、VVVは大津1人しか日本人選手がいませんが、今後も日本人を獲得し続けます。また、日本の金沢市に作った『本田圭佑クライフコート』もシーコンが資金提供しています。日本人選手によってわれわれが得た利益の一部は、日本のユースサッカーのために還元したい。日本サッカー界にとっても、私たちにとっても理想的な”ウイン・ウイン“の関係を続けたいのです」
【了】
中田徹●文 text by Toru Nakata