なぜVVVフェンロは日本人選手を狙うのか 本田圭佑から始まったクラブ戦略の真相
08年に加入した本田圭佑の移籍金を1000万ユーロに設定
当時、名古屋の監督を務めていた旧知のセフ・フェルホーセンに「1人か2人、若い日本人選手を推薦してほしい」と依頼し、08年1月に入団したのが本田圭佑だった。
08-09シーズンの後半戦からキャプテンに就任し、チームを2部リーグ優勝に導いた本田はVVVのローカルヒーローとなった。1部リーグに昇格した09-10シーズンの前半戦は、ユニークなキャラクターと繊細な左足の技術でオランダのサッカーファンをとりこにした。
本田の去就に注目が集まったころ、ベルデン会長は「本田の移籍金は1000万ユーロ」と宣言して周囲を驚かせた。
「CSKAモスクワも、この移籍金には驚いていました(笑)」
ベルデン会長には思惑があった。当時の本田は日本代表にも定着しておらず、ビッグクラブでプレーした経験もなく、ヨーロッパでは無名の選手だった。そのため、100万ユーロや200万ユーロという安い移籍金で買いたたかれることを防ぐ必要があった。また、本田自身にとっても「1000万ユーロ」という高額なタグが付くことで、ビッグプレーヤーにふさわしいステータスを得ることができた。
「圭佑はそのことをよく理解していましたね。100万ユーロと1000万ユーロじゃ、移籍先の更衣室でチームメイトが見る目も違ってきます」
本田の実力はCSKA側も評価していたが、果たして1000万ユーロが適正価格かといわれると半信半疑だった。そこで両者はベースとなる移籍金を600万ユーロまで落とし、残りを本田の活躍によって支払うインセンティブにした。