「森保流」のメンバー選考基準は忘れるべき!? 日本代表が11月シリーズで試すべき選手&“呼んではいけない”選手【コラム】
日本代表は強いが、W杯アジア2次予選は楽しみにしていいのか
いよいよ11月16日から2026年の北中米ワールドカップ(W杯)のアジア2次予選が始まる。どんな戦いを見せてくれるのか、何点取ってくれるのか楽しみだ。……楽しみだが、本当に楽しみにしていいのだろうか。
日本が強いのは今年よく分かった。去年苦戦したチームにも圧倒的な強さを見せて勝っている。監督が続投したというメリットを存分に発揮しており、このままの勢いで予選に突入できるのは頼もしい限りだ。
アジアの戦いもラッキーパンチに気を付けるくらいで、圧勝して突破してくれるのだろう。そうならないはずがない。そもそも初戦はFIFAランク18位の日本に対して158位のミャンマー。続くシリアは92位と、もしも負けたら大ニュースになりそうな相手なのだ。
ちなみに、前回ミャンマーと対戦したのは2021年5月28日、アウェー扱いながら千葉のフクダ電子アリーナで開催された試合だった。メンバーは当時所属のなかった浅野拓磨を除いて全員が海外組。ヨーロッパのシーズンが終わったばかりで招集しやすかったというのもあるだろうが、容赦のない戦いを見せて10-0と大差をつけた。
予選の次の相手、タジキスタンは6月7日にパナソニックスタジアム吹田で対戦。そこでは積極的に国内組を起用し、Jリーガーが10人起用されている。なお、その時点での日本のFIFAランクは28位、ミャンマーは139位、タジキスタンは121位、また当時のシリアは79位だった。
つまり、11月に対戦するミャンマーとシリアは2021年当時よりもランクを下げ、日本は逆に上げている。そういう現状で、果たして9月、10月と素晴らしいパフォーマンスを見せた日本代表のメンバーをそのまま招集しなければならないのか? しかも、10月は鎌田大地、堂安律、三笘薫などが不在で怪我人も出たが、それでも選手をやりくりしながら勝っているのだ。
優先順位の高い選手は敢えて呼ぶ必要はない
これはもう、これまでの優先順位トップの選手たちを呼ぶ必要はないのではないだろうか。呼ぶにしても、国内での試合はJリーガー中心で、中東での試合はヨーロッパ組中心にして、移動による負担とリスクを避けるという考え方もあるだろう。ターンオーバー制を取れるだけの選手層はあるはずだ。
だが、森保一監督はその考えについては否定的だった。チュニジア戦の翌日、取材に応じた森保監督は「アジアの中では勝っていけるだけの戦力を作れる」と自信を見せつつも、「現実的に(ターンオーバーは)はない」と答え、選手層は厚くなったものの「戦いを経て経験をして共有して、厳しい戦いの経験から成長しながらワールドカップに向かっていく」ものだと理由を説明した。
いや、今こそ森保監督には再考をお願いしたい。シーズン終盤になってJリーガーは疲労困憊ではあるものの、みんな気力は充実している。ぜひとも国内組中心にメンバー選考してW杯への道を意識させてほしいのだ。
2021年6月のタジキスタン戦の時点で日本代表にデビューした、当時はセレッソ大阪所属だった坂元達裕はオーステンデを経てコベントリー・シティへ、この試合で日本代表初得点を挙げた川辺駿はグラスホッパーズやウォルバーハンプトンを経てスタンダール・リエージュへ羽ばたいた。
ほかにも当時国内でプレーしていた小川諒也はヴィトーリアからシント=トロイデン、古橋亨梧はセルティック、谷口彰悟はアル・ラーヤンと旅立っていった。2次予選は素材を磨くのに使える試合なのだ。
「予選の怖さ」からフルメンバーで戦いたいという気持ちがあるかもしれない。しかし、今回はそこまで緊張しなくていい要素がもう1つある。W杯出場国が増えたので予選の方法が変わっているのだ。
過去に招集歴のある山根や中谷、宮市らにチャンスを与えてはどうか
2022年のカタールW杯アジア2次予選は5チームずつ8グループに分かれ、1位と2位のうち上位4チームが3次予選に進出することができた。今回は4チームで構成され、上位2チームが3次予選に駒を進めることができる。格段に次のステージへの階段は低くなっている。
2020年以降、国際舞台から姿を消していた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は不気味だが、もしここで足元をすくわれるようなら元々W杯出場もおこがましいというもの。積極的に新戦力発掘の場に使ったほうがいい。
U-22日本代表の選手は11月18日にU-22アルゼンチン戦を控えているので呼ぶのは難しいだろう。だが、年齢が上の選手を見ると現在の日本代表には32歳の谷口も呼んでいるのだ。年齢の幅を広げて招集してもおかしくないだろう。
リスクを抑えるのであれば過去に招集歴がある選手を考えてもいいだろう。山根視来、中谷進之介、原川力、西村拓真、渡辺皓太、満田誠らに声をかけてもいいのではないか。
そして多少情感的な視点も入ってしまうのだが、宮市亮はどうだろうか。日本代表の最後が怪我で終わってしまうというのはあまりに悲しい。ここは2次予選のうちにぜひ招集してあげてほしい。
森保監督は決断する時、決して情に流されることはない。常にしっかりとしたロジックで物事を決めていく。今回もこれまでとメンバー選考を変えると「森保流」から外れてしまうかもしれない。その点は重々分かっているのだが、敢えてここで提案しておきたいと思う。
(森雅史 / Masafumi Mori)
森 雅史
もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。