森保ジャパン「最強布陣」で起用すべき11人 久保トップ下、三笘&伊東サイド起用が“最適解”【コラム】
9&10月シリーズで浮かび上がった現時点での“最強布陣”を考察
森保一監督率いる日本代表は9月の欧州遠征2試合、さらに日本国内で行われた10月シリーズの2試合でも全勝を挙げ、直近の国際Aマッチ6連勝と快進撃を見せている。各ポジションを見渡すと激戦区の2列目を筆頭に有能なタレントがひしめくなか、ここでは9&10月シリーズを合わせる形で現時点での“最強布陣”を考察する。
第1の基準としたいのは4-1で勝利したドイツ戦のメンバーだ。ドイツが本調子ではなかった面ももちろんあるだろう。ただし、いわゆるプレーの強度という基準では4試合で最も高い相手であり、2-1で勝利したカタール・ワールドカップ(W杯)の時も、選手たちは最も厳しい相手だったと語っていた。
そうした相手に真っ向から挑んで押し切る形で快勝したメンバーというのは森保監督も、おそらくベースとして考えているだろう。指揮官が基本スタイルを4-2-3-1にしている理由が、守備では4-4-2のコンパクトなブロックを敷き、攻撃では流れに応じて4-3-3に可変できるためだ。守備時も4-4-2がベースでありながら、相手の立ち位置によっては4-1-4-1で構えながらハメていくケースもある。
ドイツ戦のメンバーは攻守の強度に加えて、そうした戦術的なメカニズムも共有できており、どんな相手でも柔軟に戦えるアドバンテージがある。そのドイツ戦のスタメンから9人を選んだが、上田綺世を浅野拓磨に、鎌田大地を久保建英に差し替えた。2人ともドイツ戦で途中出場し、それぞれ好パフォーマンスを示したのに加え、10月シリーズでさらに森保監督の評価を高めたと考えられる。
浅野に関してはカナダ戦(4-1)で見せたように、守備が組織的にハマっている時はもちろん、ハマっていない時にある種の“無理追い”でそのラグを埋められる能力がある。上田やチュニジア戦(2-0)でゴールを挙げた古橋亨梧も高い位置からハメていく守備、ミドルブロックで構える守備の両方に対応できるが、ハマっていない時間帯に“無理追い”でき、そうした時間帯でもカウンターでビッグチャンスを生み出せる能力は現在のFW陣でも1つ抜けている。
10月シリーズを怪我で辞退した前田大然も守備面では浅野に匹敵するが、浅野がポストプレーなど攻撃面で示しているパフォーマンスを考えても“最強布陣”の1トップに選んだ理由だ。ただ、チュニジア戦の前半終了間際にゴールを奪った古橋の動きはライバルにないスペシャリティーと言える。
ラストパスを出した旗手怜央によると右の伊東純也を狙ったというボールは、相手ディフェンスに当たって、ゴール前にこぼれる形に。しかし、それを察知していたかのようなレスポンスで冷静なフィニッシュに持ち込んだ古橋の決定力は特筆に値する。前田は左右のサイドをこなすという強みもあり、W杯アジア2次予選や来年1月のアジアカップに向けたメンバー23人枠を想定してもポリバレントな能力は貴重だが“最強布陣”には現時点で入れ難い。
意見が割れる左サイドバックの人選、伊藤&中山が熾烈な争い
2列目は従来の主力で、このシリーズでも安定したハイパフォーマンスを見せている伊東、10月シリーズは欠場も第2次森保ジャパンで絶対的な主力となっている三笘薫の両翼は外せない。中央はドイツ戦で随所に効果的なプレーを見せた鎌田、10月シリーズでカタールW杯以来の復帰を遂げた南野拓実も有力候補だが、ここでは久保を挙げたい。
ドイツ戦は5-4-1の右サイドで途中出場して、浅野のゴールをアシストするなど存在感を見せた久保はトルコ戦(4-2)で幅広く攻撃の起点となり“久保システム”とも言うべき中心的な働きを見せた。一方、求められるタスクが多様になり、決定的な仕事にフォーカスできなかった側面も自ら語っていたなかで、チュニジア戦では遠藤航と守田英正という森保ジャパンが誇る2ボランチのサポートを受けて、高い位置で2つのゴールに絡んだ。
チュニジア戦のように10番の働きをベースにしながら、必要によってはトルコ戦のように8番の仕事をミックスしたようなより司令塔の役割も果たせることを考えると、4-2-3-1の軸として想定しやすい。もっとも、森保監督は久保が最も生きる場所として4-3-3の右ウイングを挙げている。チュニジア戦の終盤は南野が中央に入り、久保は右に回ったが、南野がセカンドアタッカーの色合いが強く、短い出場時間ながらプレーエリアが重なってしまうようなケースは見られなかった。久保の起用法は今後も変動していく可能性はあるが、現時点で“最強布陣”のトップ下に配置したい。
ドイツ戦のパフォーマンスはもちろん、チュニジア戦のような久保をサポートする働きを見ても、遠藤と守田というボランチの2枚に異論を唱える人は少ないだろう。右サイドバックも菅原由勢がファーストチョイスとして地位を確立しつつあり、センターバックの板倉滉と冨安健洋は世界一を目標とする森保ジャパンの守備の2枚看板と言える。おそらく意見が割れるのは左サイドバック(SB)だ。
10月シリーズで11か月ぶりの復帰となった中山雄太は守備に強いだけでなく、攻撃でビルドアップに加わりながら、機を見た攻撃参加でも違いを生み出せる。ただ、伊藤洋輝が欧州シリーズの2試合で見せたパフォーマンスというのは相手のレベルが上がるほど、重要になってくるはず。課題とされた三笘との連係もカタール後は徐々に改善されている。ただ、ここは伊藤にしても中山にしても、良い意味で甲乙が付け難い。中山はアキレス腱の怪我から回復して、ここからギアを上げていくだろうし、伊藤も好調のシュツットガルトで左SBとして起用されており、センターバックとのポリバレントとの顔も残しつつ、左SBでレベルアップしていく期待は高い。
GKは世界基準で見ると、まだまだ伸ばさなければいけないポジションだが現状、大迫敬介がファーストチョイスだろう。もちろん、チュニジア戦で先発した鈴木彩艶やトルコ戦で負傷してしまった中村航輔が本調子に戻れば、日本代表の守護神が務まるだけのポテンシャルはあり、そのほかの候補選手とともに今後の台頭に期待したい。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。