「(堂安)律がゴール決めた場面も…」 ボーフム浅野拓磨、低空飛行に抱く危機感と「甘さ」への本音【現地発】
フライブルク戦で1-2敗戦、第8節を終えて今季未勝利と苦戦
日本代表FW浅野拓磨がプレーするボーフムはブンデスリーガ第8節のフライブルク戦も1-2で落とし、今季ここまで0勝4分4敗といまだ勝ち星がない。勝ち点4で18チーム中17位と低空飛行が続く。
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第7節終了時では失点19はリーグ最多タイ。得点も5でワースト2位という厳しい序盤戦と向き合っていたこともあり、ボーフムを率いるトーマス・レッチェ監督は直近の2試合で戦い方を変えてきた。
守備位置を自分たちの自陣深くまで下げ、まずは組織的な守備で相手の攻撃を防ぎ、いい形でのボール奪取から素早くカウンター攻撃という戦術へ移行しようとしている。
フライブルク戦後にミックスゾーンで取材に応じてくれた浅野はじっくり考えながら、「戦い方は悪くはなかったんですけど」と前置きし、試合を振り返りながら話し出した。
「ただ低い位置で守備するならするなりに、やっぱり2失点の場面とも、チームとしてもそうですけど個人個人のところで甘さが出てしまうと、相手にワンチャンスをモノにされるかなと。こういう堅いゲームでしっかり守って、そこから出ていくっていう戦い方のチームだと思うので。ああいうところでやられないようにチームとしてプレーしないと」
フライブルク戦では前半15分、右サイドでボールを受けた浅野から左サイドへセンターから流れるように走りこんでいたゴンザロ・パシエンシアが、ペナルティーエリアの左角付近から見事なダイレクト左足ボレーを決めて先制に成功している。
だが、願ってもない形で手にしたこの貴重な1点を守り切ることができない。守備の重心を意識し、失点を極力減らそうとする戦い方で勝ち点を得るためには先制点が取れなければ難しい戦いを強いられるし、リードを守り続けられなければ苦戦は必至だ。
浅野もそのあたりに危機感を感じている。
「今のボーフムは失点してしまうと崩れることが多い。だからこそ、どうにか失点しない時間帯を長く保ちたい。戦い方を変えても今日もPKを1本与えてますし。前回1ポイント取りましたけど、PK2本を与えてしまった。(今の戦い方だと)そういうシーンが増えるのは仕方ないんですけど、でもどうにかそこを厳しく取り組んでいかないといけないと思います」
堂安に決められたヘディング弾にも言及「もっと寄せていたら防げていたかもしれない」
では、その「厳しく」とはどういうことだろうか。どこに「甘さ」があるのだろう。浅野はPKとなった場面を例に説明した。
このシーンでは、左サイドからパスをつなぎながら攻撃してきたフライブルクに対してボーフム守備陣が後手を踏み、ペナルティーエリア手前に入り込んでいた堂安からパスを受けたマクシミリアン・フィリップがシュートへ持ち込んだところ、コースに入ってきたDFベルナルドの手に当たった。
「特にPKの場面とかもそうですね。もっとディフェンスラインを押し上げてれば、もっとボールに寄せていれば、多分ハンドになるシュートを打たれる前に、そもそもああいう場面が生まれなかったのかなと思います。(最初の失点シーンで)クロスからのボールを(堂安)律がゴール決めた場面も、(飛び込んでくるのを認知して)もっと寄せていたら防げていたかもしれない」
守り続けるのが簡単ではないことは浅野も重々承知している。だがチームとして力を発揮できなければ、残留という目標にはなかなか手が届かないという事実もある。可能な限り失点を最少に減らし、少ない得点でも勝ち点を積み重ねるという戦い方を選んでいる以上、そこから目を背けてはならないのだから。
ボーフムの厳しい戦いは続く。ただ、昨季はもっと厳しい状況にいたのだ。昨季は第8節終了時で勝ち点はわずかに1。得失点差-18と絶望的な数字だった。だが折り返し時には勝ち点を16にまで伸ばし、16位まで順位を上げ、最終的には14位で無事自動残留を勝ち取った。今季も同じようにここから可能性を掴み取ることができるだろうか。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)取得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなクラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国で精力的に取材。著書に『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。