浦和の「永久入場禁止」を独自新設は「正しい判断」 日本代表OBが指摘「ルールを守れない人は排除していかないと」【見解】

日本代表OBが言及(写真はイメージです)【写真:Getty Images】
日本代表OBが言及(写真はイメージです)【写真:Getty Images】

【専門家の目|栗原勇蔵】「永久入場禁止」「損害賠償請求権の行使」新設は仕方ない

 浦和レッズは10月26日、今年8月に行われた天皇杯ラウンド16名古屋グランパス戦で浦和サポーターが暴徒化した問題を受け、違反行為に対するクラブ独自の処分として、日本サッカー協会(JFA)やJリーグの規定にはない「永久入場禁止」「損害賠償請求権の行使」を新たに設けたと発表した。元日本代表DF栗原勇蔵氏は、「抑止力になるし、正しい判断」と見解を述べている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

   ◇   ◇   ◇

 浦和は8月2日の天皇杯ラウンド16名古屋グランパス戦後、一部のサポーターがピッチへ乱入。名古屋サポーター側の立ち入り禁止エリアへ侵入し、愛知県警が出動する騒ぎに発展した。

 浦和側は8月5日には立ち入り禁止エリアへの侵入を主導したサポーターなどに処分を科していたが、16日付で発表された続報リリースではJFAが実施してきた映像を用いた事実確認の結果報告を受けたことが報告。新たに判明した違反行為として、暴力行為(警備員を押し倒したり、相手サポーターの胸倉を掴むなどの行為)、破壊行為(緩衝柵を破壊するなどの行為)があったとした。

 そうしたなかJFAは8月31日、臨時理事会の末に決定した浦和の一部サポーターへの処分を発表。17人を無期限の入場禁止、1人を5試合の入場禁止の処分を下していた。

 そして、JFA規律委員会は9月19日、浦和に対して2024年度天皇杯の参加資格の剥奪とけん責処分を発表。「自チームのサポーターに対して試合後においても秩序ある適切な態度を保持するよう努める義務を怠り、2023年8月2日(水)にCSアセット港サッカー場にて行われた本大会4回戦対名古屋グランパス戦の試合において、試合終了から約20分後より、多数(合計70名以上)の対象者のサポーターが暴徒化して以下に掲げる当協会試合運営管理規定に違反する行為に及んだことを防止できなかったほか、本件サポーターらを即刻退去させるなど、観客や選手その他の試合に関わる人の安全を確保するために適切な措置を講じなかった」と処分の理由を指摘していた。

「ルールを守れない人は排除しないといけない」と指摘

 浦和は10月26日、「浦和レッズサポーターによる違反行為について(第七報)」で、「違反行為に対する新たな処分基準の策定」と「処分および処分解除決定の運用プロセスの見直し」関するクラブ内検討の結果を発表した。

 JFAの規定では、試合数や期間を定めない「無期限入場禁止」がサポーターへの処分としては最も重いが、JFAやJリーグの定めるガイドラインを基準としつつ、「当該ガイドラインに定めのない永久入場禁止処分や損害賠償請求権の行使等を含む弊クラブ独自の処分基準をもって、試合および大会等の規程が許す限り、弊クラブが主体的に処分決定を行います」と説明。法令違反が認められた場合、警察への通報や刑事告訴をする可能性もあるとしている。

 日本代表OBの栗原氏は、浦和が今回「永久入場禁止」「損害賠償請求権の行使」を新たに設けたことに関して、「永久入場禁止は仕方ない。本当にサッカーが好きであれば抑止力になるし、正しい判断だったと思います」と語る。

「永久入場禁止は重い処分ですが、傷害事件とかになるのであれば、スポーツの枠を超えていて、刑罰などの対象になったりするわけなので、それだけ影響力が大きいということでしょう。『レッズのサポーターとやるのは怖い』と思っている健全なサポーターもいるはずで、安心してサッカーを観れる環境を作っていかないといけない。サポーターの熱さも、あくまでルールの範囲内での話。とりわけ、子供がやっているわけではなく、物事を判断できる年齢の大人がやっているわけで、厳しく聞こえるかもしれませんが、ルールを守れない人は排除していかないと。今回と同じことを繰り返してはいけないし、Jリーグがルールを定めるべきだという思いもあります。浦和に限らず、リーグとしてもこれを機に成長していかないといけない」

 栗原氏は、安心してサッカー観戦ができる環境整備、ひいてはサッカー界の成長につながることを願っていた。

(FOOTBALL ZONE編集部)

page 1/1

栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

今、あなたにオススメ

トレンド

ランキング