Jリーグ秋春制移行の不思議…「一番の問題」とは? 真夏と真冬を回避するなら2ステージ制しかない【コラム】

Jリーグ秋春制移行の不思議に言及(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】
Jリーグ秋春制移行の不思議に言及(写真はイメージです)【写真:徳原隆元】

現行の春秋制での最大の問題は夏場の開催、7月と8月はサッカーに適していない

 どうやらJリーグのシーズン移行が決まりそうである。現行の春秋から秋春へのシーズン移行は一部の人たちにとって悲願なのだろう。シーズン移行についてはメリット、デメリットが議論されてきたが、冬場に積雪地域での開催は困難で北国のクラブへの負担が大きいという現実的なデメリットの前に移行論はそのたび頓挫してきた。

 それが急にシーズン移行が現実味を帯びてきた背景として、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の秋春への移行が挙げられる。また、シーズン途中に主力選手が欧州へ移籍してしまう事態も少なくなるメリットもあるだろう。ACLや移籍のメリットは一部の選手やクラブに恩恵があるにすぎず、デメリットを覆すほど強力なメリットとは思えないが、移行論が根拠を得て反対論に対抗できるようになったのかもしれない。

 ただ、秋春も春秋も実は大差なく問題の根本的な解決にはなりそうもない。一番の問題は日本にはサッカーをするに適さない、あるいはやってはいけない期間があるということだ。

 現行の春秋制での最大の問題は夏場の開催である。7、8月の開催はゲームの質に重大な影響を及ぼしている。Jリーグの走行スタッツを見ると、走行距離で最高値を記録したのは9月で、それ以前は5月まで遡る。暑かった今年の6~8月が走力に影響を与えたのは記録を持ち出すまでもない。日本の気温と湿度を考えると、7月と8月は明らかにサッカーに適していない。

 では秋春制が良いのかというと、秋春とは名ばかりで実際に開幕するのは7、8月になるという。なぜなら開催に適さないどころか開催不可能な季節があり、1、2月はリーグを中断せざるをえないからだ。結局のところ真夏の開催は避けられず、真冬の開催は依然としてできない。秋春制に移行したところで現行の春秋と大した差はなく、シーズンの始まりと終わりがどこになるかの違いがあるだけになりそうなのだ。

まずは過酷な夏場開催でゲームの質を落としている現実をなんとかするべき

 ずっと不思議なのが、なぜ2ステージ制を検討しないのかということ。真夏と真冬を回避するなら、2ステージ制しかないのではないか。試合数を維持したいなら、プロ野球のように2つに分け、それぞれ10チームのホーム&アウェーなら試合数は維持できる。例えばセ・リーグ、パ・リーグとして、それぞれ10チームなら合計20チームなのでチーム数を減らす必要もない。

 真夏と真冬が開催に適しない一方で、日本列島は縦に長いというメリットがある。つまり、夏でも北海道、冬なら沖縄で試合はできる。そこで夏は北海道、東北を中心にリーグカップ(ルヴァンカップ)を行い、冬は九州、沖縄で天皇杯の終盤をやれば良いのではないか。カップ戦を夏と冬に振り分けることで、リーグ戦の過密日程も緩和できる。

 夏は欧州クラブを招待して大会を行えば、キャンプ地として定着するかもしれない。現在のリーグカップ(ルヴァンカップ)はJリーグと同じ顔合わせにすぎず、欧州でもリーグカップは決勝ぐらいしか人気がない。2リーグなら、この大会でしかないカードが実現し、そこへ欧州ビッグクラブが参戦すれば注目もされる。

 しかし、2ステージ制が検討されたという話は聞かない。秋春制推進派の意見をかつて聞いたことがあるが、反対派の現実感に比べると一部のクラブだけに恩恵があるか、「本場の欧州に合わせたい」というフワッとした理由があるだけという感じは否めなかった。

 シーズン移行よりも、まずは過酷な夏場に開催してゲームの質を落としている現実をなんとかするべきだ。重大な事故が起こってからでは遅い。真夏と真冬を回避するなら、自ずと答えは出てくると思うのだが。

(西部謙司 / Kenji Nishibe)

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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