佳境のJ2トップ争い、町田が“王手”自動昇格枠の行方は? 東京Vが16シーズンぶりJ1へ射程圏内【コラム】

J2リーグの昇格健争いがデッドヒート【写真:Getty Images】
J2リーグの昇格健争いがデッドヒート【写真:Getty Images】

残り4試合のJ2リーグ、白熱の自動昇格圏争いは佳境に

 J2リーグは延期されていたブラウブリッツ秋田とFC町田ゼルビアの試合が10月14日に行われて、首位を走る町田がアウェーで2-1の勝利。勝ち点を75に伸ばし、2位の清水エスパルスとの勝ち点差が8に広がった。3位の東京ヴェルディ、同勝ち点で4位のジュビロ磐田と勝ち点10の開きがあり、町田が残り4試合で1勝でもすれば、ライバルの結果に関係なくクラブ初のJ1昇格が決まる。まさかの4連敗という結果が絶対にないとは言えないが、事実上、残り4試合で自動昇格のラスト1枠を清水、東京V、磐田が争う構図だ。

 直近の8試合を7勝1分と猛チャージで5位まで駆け上がってきたジェフユナイテッド千葉も加えたいが、前節のホーム水戸ホーリーホック戦で1-1と引き分けたことで、2位の清水との勝ち点差は6に。22日に行われる3位東京Vとのアウェーゲームでなんとか勝利し、清水と磐田のつまずきを信じて、勝ち続けるしかない。ただ、仮に健闘及ばず3位から6位の4チームによる昇格プレーオフに回ったとしても、後半戦のパフォーマンスやチームの勢いを考えても、かなり有力な候補になるはず。その意味でも奇跡を信じつつ、この流れを止めてはいけない。

 2位の清水は前節、磐田との静岡ダービーに勝利したことが大きい。しかも、そこから2週間ゲームが空いたので、気持ちよくリフレッシュして、21日のいわきFC戦を迎えられる。いわきにはホームで9-1の大勝を飾っており、秋葉忠宏監督や選手たちも良い印象を持っているはずだろう。ただ、いわきも清水戦に勝利し、21位の大宮アルディージャがアウェーの藤枝MYFC戦で引き分け以下だと、J2残留が確定する。10月1日の第37節では首位の町田に3-2で勝利するなど、途中就任の田村雄三監督のもとでチーム一丸の雰囲気を作っており、前回大勝の清水も油断できない。

 清水はそこからロアッソ熊本、大宮という残留争いの相手と本拠地「アイスタ」での試合が続き、最終節は敵地で、前回スコアレスドローだった水戸との対戦となる。ある意味、ライバルの動向より自分たちとの戦いだ。キーマンはダービーでも決勝ゴールを挙げたMF乾貴士だ。ここまで9得点7アシストとチームの攻撃を牽引しており、14得点のFWカルリーニョス・ジュニオ、10得点のFWチアゴ・サンタナとの相乗効果を生んでいる。

 その一方で、秋葉監督の就任からリーグ戦31試合で22失点という堅い守備も見逃せない。カタール・ワールドカップで日本代表の守護神を担ったGK権田修一の存在をうしろ支えに、DF鈴木義宜と柏レイソルから今季加入したDF高橋祐治の経験豊富なセンターバックコンビが双璧のごとく立ちはだかる。中盤で攻守をオーガナイズするMF白崎凌兵、スタートからでも途中からでも相手のサイドアタッカーに一切仕事をさせないDF吉田豊など役者は揃っている。そのタレント力にふさわしい昇格、いやJ1復帰を遂げるのか。メンタル面での隙は熱血漢の秋葉監督が許さないはずだ。

3位東京Vは千葉&磐田との大一番での勝利が必須

 3位の東京VはJ1での実績と経験も豊富な城福浩監督が率いており、昇格を果たせば2008年以来、実に16シーズンぶりのJ1となる。スペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ氏が監督だった2018年にはプレーオフの決定戦で、J1だった磐田に敗れて昇格を逃した。今シーズンは入れ替え戦がなく、2度勝てば3つ目の枠で昇格となるが、自動昇格は射程圏内だ。ただし、今週末には千葉、来週には磐田との大一番が待つ。清水との直接対決はないが、5位の千葉と4位の磐田から直接、勝ち点3を奪える機会を残しているのは見逃せない。

 ラスト2試合はホームで栃木SC、アウェーで大宮と対戦する。昇格が決まるかもしれない最終節で、現在21位の大宮が残留の可能性を残しているのかどうか。それによって勝利の難易度は大きく変わってくるかもしれないが、その前に千葉と磐田を叩いて、清水にプレッシャーをかけたい。注目はFW染野唯月。鹿島からの育成型期限付き移籍だが、昨年に続く二度目の加入でエース的な存在になっている。染野の周りを衛星的に回って仕事をする河村慶人も調子を上げている様子だ。

 そして、前節の大分トリニータ戦で決勝ゴールを記録したボランチのMF稲見哲行はハードワークとボール奪取能力で、堅実さと活動量の両方をもたらせる。直接ゴールに絡まないシーンでも、大体バイタルエリアに顔を出している。そして守備に切り替われば、相手にプレッシャーをかけて即時奪回を促し、自陣まで攻め込まれれば素早く戻ってカバーする。城福監督にとってはサンフレッチェ広島時代のMF稲垣祥(名古屋グランパス)のような存在かもしれない。週末の千葉戦は間違いなく中盤の攻防が鍵を握るため、特に千葉の司令塔であるMF田口泰士とのマッチアップは見どころだ。

磐田のベテラン・遠藤保仁のプレーにも注目だ【写真:徳原隆元】
磐田のベテラン・遠藤保仁のプレーにも注目だ【写真:徳原隆元】

磐田の“ヤングパワー”とベテラン遠藤の働きに注目

 4位の磐田は清水とのダービーに敗れたことは非常に痛かったが、勝ち点で並ぶ3位東京Vとはホームのヤマハで“直接決着”を付けることができる。もちろん、その前にアウェーの徳島ヴォルティス戦で、勝利することは自動昇格へのほぼ絶対条件になると言っても過言ではない。徳島、東京Vと対戦したあとはホームで水戸と戦い、最終節でアウェーの栃木戦に挑む。その栃木はラスト2試合で東京V、磐田と対戦することになるが、現在19位で、まだ残留争いの渦中にある。その前に栃木は大分、ファジアーノ岡山と上位との戦いが続くが、東京V戦と磐田戦の時点で残留を決めているかどうかが、大きく影響してくるかもしれない。

 磐田は20歳のMF古川陽介と18歳のFW後藤啓介という“ヤングパワー”に期待したいが、こうした最終局面ではキャプテンのMF山田大記などの経験値がものを言う。またダービーから2週間が経ち、チーム練習に復帰したFWファビアン・ゴンザレスがどこまでコンディションを戻してきているかも気になるところだ。状態さえ良ければ昨年のJ1でも規格外のパワーを発揮していた選手だけに、ラスト4試合で攻撃の起爆剤になってくるか。

 もう1人、注目したいのが43歳のMF遠藤保仁だ。“黄金世代”とも呼ばれ、長く日本のサッカー界を支えてきた同期のMF小野伸二(北海道コンサドーレ札幌)とGK南雄太(大宮)が今シーズン限りでの現役引退を表明した。そうした意味でも注目されるが、いかなる状況でも落ち着いて最善のプレーを選択できるメンタリティーとクオリティーは心強い。ダービーでは後半38分から投入されたものの、チームを同点に導くことはできなかった。残る4試合で遠藤がどのような働きを見せて、磐田の昇格に貢献できるか注目だ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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