佳境のJ1リーグ残留争い「優位&危険」なチームは? 横浜FC、湘南、柏…降格1枠巡る“優劣”を考察【コラム】
残りは5試合…実質的には下位3チームが残留争いの渦中に
今季のJ1リーグは29節までを消化し、残りは5試合となった。優勝争いと同様に注目を集めるのが残留争いだ。今季は来季からのチーム数変更に伴い、降格枠はわずかに1つのみ。つまり最下位のチームだけがJ2へと転落することになる。
第29節終了時点で最下位に沈むのは勝点23の横浜FCだ。今季J1に復帰した昇格チームが、下馬評を覆せずに苦しい戦いを強いられている。
その横浜FCをわずか1ポイント差で上回る湘南ベルマーレが17位、勝点29の柏レイソルが16位となっている。15位の京都サンガF.C.は勝点33と横浜FCに10ポイント差をつけているため、残り5試合であることを考えれば安全圏に入っていると言えるだろう。6ポイント差の柏も一歩抜け出した印象だが、まだ安心できる状況ではない。実質的には下位3チームが残留争いの渦中にあると言える。
まず16位の柏のここまでの戦いを振り返ると、開幕6戦未勝利とスタートで大きく躓き、その後にわずかに巻き返したものの、第12節から再び白星を手にできずにネルシーニョ監督を解任。井原正巳新監督の下で再起を図ったが、状況は大きく変わらなかった。
それでも徐々に守備の安定感を手にすると、若きエース細谷真大も覚醒。第22節から6戦負けなしを実現するなど粘り強く勝点を積み上げ、残留に向けて前進を続けている。
その柏の残り5試合の対戦相手を見ていくと、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、名古屋グランパスの上位勢に加え、川崎フロンターレ、サガン鳥栖と底力を備えたチームも控える。この5チームとの今季の対戦成績は1勝1分3敗と分が悪く、敗戦はすべて完封負けという状況だ。ここへ来て復調したとはいえ、勝点の計算は立ちづらいかもしれない。
17位の湘南は開幕戦で鳥栖に快勝を収め首位スタートを切ったが、第7節から15戦未勝利と窮地に陥り、最下位に転落。この間に5連敗と4連敗を一度ずつ喫するなど、大きく低迷した。それでも第22節のサンフレッチェ広島戦で勝利し長いトンネルから抜け出すと、第27節の北海道コンサドーレ札幌戦、第29節のセレッソ大阪戦にも勝利し、最下位から脱出。残り5試合で逃げ切りを目指す。
横浜FCは開幕10戦未勝利と2年ぶりのJ1の舞台で大いに苦しんだ。3バックへの変更で復調したかに思えたが、シーズン途中にエースの小川航基が移籍すると、得点力不足を露呈し、再び結果を手にできなくなっている。
第33節の“裏天王山”が残留争いの行方を決定づける可能性
得点数が少ないチームが低迷するのは当然のこと。18チーム制となった2005年以降の最下位のチームの得点数を見ていくと、延べ18チーム中9チームがリーグ最少得点だった。2008年の大分トリニータのようにリーグで2番目に少ない得点数ながら最少失点も実現し4位に躍進を遂げた特異なチームもあるが、やはり得点の数こそが、チームの浮沈に大きくかかわる要因だ。
加速度的に進化を遂げる細谷を擁する柏、得点源の町野修斗が抜けながらも、代わって大橋祐紀が台頭した湘南に対し、横浜FCは小川が抜けた穴を埋められずに苦しんでいる。第29節終了時点で25得点はリーグ最少の数字である。ここへきてマルセロ・ヒアンが結果を出し始めてきたのは光明ながら、2チームに比べるとその得点力はやはり心許ない。
湘南と横浜FCの残りの対戦カードを見ていくと、前者は京都、ヴィッセル神戸、名古屋、横浜FC、FC東京となっており、前回対戦の成績は3分2敗。後者はFC東京、札幌、鳥栖、湘南、鹿島で、前回対戦の成績は1分4敗とこちらも勝利を挙げられていない。
注目は第33節の直接対決だ。2月に行われた前回対戦は2-2の引き分けに終わっているが、湘南は町野とオウンゴール、横浜FCは小川の2ゴールと、ともに当時の得点者は不在となっている。横浜FCのホームで行われるこの“裏天王山”こそが、残留争いの行方を決定づけることになるだろう。
(原山裕平 / Yuhei Harayama)
原山裕平
はらやま・ゆうへい/1976年生まれ、静岡県出身。編集プロダクションを経て、2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。