伊東純也の警告シーンは妥当? 元主審・家本氏「前半の相手のシーンのほうが悪い」【解説】
【専門家の目|家本政明】伊東に関するファウルシーン2つを考察
日本代表は10月17日、キリンチャレンジカップ2023の国際親善試合でチュニジア代表に2-0で勝利した。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は、この試合で警告を受けたMF伊東純也(スタッド・ランス)のファウルシーンについて、試合の判定基準の話も含め解説している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)
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日本は13日のカナダ代表戦で4-1と快勝したなか、昨年6月以来となるチュニジア代表戦を迎えた。伊東は2試合連続でのスタメン出場となった。中3日で多少の疲労もあるなかでも持ち前の運動量を発揮し、1-0で迎えた後半24分にはMF久保建英(レアル・ソシエダ)のマイナスのクロスに合わせ追加点をゲット。同27分までプレーし、2-0の勝利に貢献している。
そんな伊東は後半9分、相手選手への足裏での接触で警告をもらい不満を露わにする場面も。伊東は前半、逆に相手から危険な足裏でのタックルを受けており、その際レフェリーから懲戒罰は出ていなかった。この点も踏まえ家本氏は「前半のシーンは、伊東選手がルーズボールに行こうとした時に相手がジャンプで伊東選手の方に向かって足裏を見せてボールをかっさらっていた。形では伊東が蹴るような見た目になったけど、タックルの質は警告をもらった伊東のものより、こちらの前半の相手のシーンの方が悪い印象がある」とレフェリー目線での見解を示した。
そのうえで家本氏は「伊東選手のほうが質の悪いファウルを受けているのに、後半の伊東選手のほうにイエローカードが出た。それは怒りますよね」と、判定に不満を露わにした伊東の気持ちを推察している。
レフェリーの判定基準に「ブレはあまりなかった」
伊東に関するシーンでは判定に疑問が残る点もあったが、家本氏は試合全体を通して中国人レフェリーの判定基準に「多少の疑問点はあったが、ブレはあまりなかった」と評価する。「フレンドリーマッチに適したレフェリングの判定基準だった。止める必要のないものは流していくフレンドリーマッチに適したもの。試合を止めないレフェリングだった。判定基準がブレているとは思わなかった」という。
同時に「アドバンテージのシグナルも良く出していた」と話した一方、主審のポジショニングは「気になった」と指摘する。「選手の邪魔になっているシーンは結構目についた」と、マイナスの点も挙げた。
家本氏は、この試合で主審を務めた中国人の審判員ワン・ディー氏が、ちょうど国際審判になったばかりの頃を回想。「現役で審判をやっていた際、彼はちょうど国際審判になったばかりだった。それを考えると『成長したな』と感じる部分もある」と懐かしんだ。
最後に家本氏は試合を通し「チュニジアはもともと汚いプレーをするチームじゃないし、実にクリーンな試合だった。レフェリーが目立つシーンがなく、両チームが良くフットボールに集中していたゲームだったと思う」と総括している。
家本政明
いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。