冨安健洋の総合力は「世界最高峰」 日本代表OBが“リーダー気質”も絶賛「みんながリスペクトしている」【見解】
【専門家の目|金田喜稔】冨安が見せる「連続的な予備動作」にも注目
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング19位)は、10月17日に兵庫・ノエビアスタジアム神戸でチュニジア代表(同29位)と対戦し、2-0で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、DF冨安健洋について「総合力は世界的に見ても最高峰で、リーダーの気質も兼ね備えている」と絶賛している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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チュニジア戦では相手のシュートを1本に押さえ込み、守備に大きな隙を与えないまま試合を終えた。そんな日本の最終ラインを支えていたのはイングランド1部アーセナルでプレーするDF冨安健洋だ。アーセナルではサイドバックが主戦場となっているが、日本代表では不動のセンターバック(CB)として君臨。抜群のスピードを駆使した守備の対応は世界最高峰で、球際の強さやビルドアップ能力も兼ね備えた万能型DFとして森保ジャパンでもフル稼働している。
長年、日本代表の最終ラインはDF吉田麻也(ロサンゼルス・ギャラクシー)、DF長友佑都(FC東京)、DF酒井宏樹(浦和レッズ)らが牽引し、世代交代の際には不安も囁かれた。しかし今では冨安を中心に、CBでコンビを組むDF板倉滉(ボルシアMG)、DF谷口彰悟(アル・ラーヤン)、DF町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)らとともに強固な守備ブロックを形成している。
金田氏は「みんなが冨安をリスペクトしている雰囲気が漂う」と分析し、冨安の存在感の大きさを強調する。
「あの安定感、あのリーダーシップ、あの準備の仕方はさすが。現在の日本代表はハイラインにも挑戦しており、最終ラインには小まめな上下動も要求されるし、メートル単位、1歩単位で微調整している。両サイドバックを攻撃参加させながら、後方でバランスを取るためには細心の注意が必要で、その点でも冨安に対してみんなが全幅の信頼を寄せている」
とりわけ金田氏が絶賛したのは、相手の攻撃に備えた冨安の連続的な予備動作だ。「見ているとプレーへのこだわりも素晴らしい」とクローズアップした。
「相手がボールを保持して攻撃に出る際、冨安は身体の向きを常に微調整し、最適解を導き出そうとしている。細かく言えば、身体の向きを左右どちらにして視野を確保し、身体を何度ぐらい開き、相手との距離をどのくらい取るのか。また、ボールの出し手と受け手の位置関係や身体の向き、相手が狙っているスペース、日本側の陣形など、すべての条件を瞬時に把握したうえで、最適な予備動作で準備を整え、相手がボールを蹴らないとなれば一転して指示を出し、最終ライン全体の位置を上げ下げして微調整する。こうした瞬時の判断を、1試合を通じてやり続けているうえ、周囲への指示も怠らない」
改めて存在感の大きさを示した冨安。金田氏は「総合力は世界的に見ても最高峰で、リーダーの気質も兼ね備えている」と、最終ラインの柱として大きな期待を寄せていた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。