日本代表、三笘や久保ら不在でもなぜ強い? OBが力説「今呼ばれている選手たちも決して安泰ではない」【解説】
【専門家の目|金田喜稔】好調を支える要因の1つは競争力「日本にとって良いこと」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング19位)は、10月13日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムでカナダ代表(同44位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、「今の日本の強さを支えている要因」について分析した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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昨年のカタール・ワールドカップ(W杯)後、日本は7試合を戦い5勝1分1敗。直近はドイツ代表(4-1)やトルコ代表(4-2)も撃破するなど、5連勝で22得点5失点の好成績を残している。
金田氏は「カナダ戦では三笘薫、久保建英、守田英正、菅原由勢、板倉滉、鎌田大地、上田綺世、伊藤洋輝らは出場しておらず、戦力としてはまだまだ余力を残している。フルメンバーだと、また先発の顔ぶれもガラッと変わるだろうが、そのなかで勝てるチーム作りをしているのは森保監督をはじめ、チームスタッフの手腕によるところが大きい」と称賛し、日本の強みについても触れている。
「今の日本は、1つのポジションで2選手以上がハイレベルな競争を繰り広げる構図になっていて、誰が出ても不思議ではない状況だ。また複数のポジションに対応している選手が多いのも特徴的。限られた交代枠のなかで、戦術変更やアクシデントも考えれば、複数のポジションに対応している選手が多いのもチームの強みになる」
森保ジャパンが好調をキープしている要因について競争力を挙げ、選手たちの成長がそのままチーム力に直結していると指摘した。
「フィリップ・トルシエ監督が日本代表を率いていた時、1つのポジションに複数の選手を配置し、1人の選手が複数のポジションをできるようにしながらチームのレベルアップを図っていた。今、そうした状況が生まれている。これは日本にとって良いことで、それだけ競争も活性化するし、選手層も厚くなる。口で言うのは簡単だが、そうした状況を作り出すのは選手の高い能力があってはじめて実現できるもので、それが今の日本の強さを支えている要因でもある」
メンバーを入れ替え、さまざまなテストもしながら結果を残している森保ジャパンの戦力は充実している。金田氏は「今の日本代表は2チームを簡単に作れる戦力がある」と太鼓判を押す一方、選手たちのなかに生まれている危機感がパフォーマンスの質をさらに押し上げていると断言した。
「ここからは、その2チーム分の戦力平均値を高めていくことがポイントだ。同じポジションで選手が競い合い、そのなかで頭角を現す選手もいるだろう。文字どおり切磋琢磨をしながら、チームと個人の両方で底上げを図っている段階。国内にはまだまだ良い選手がいて、パリ五輪の若い世代の突き上げもあり、今呼ばれている選手たちも決して安泰ではない。それは本人たちがよく理解しているからこそ、どんな相手に対しても決して手を緩めず、個々が役割を意識しながらプレーしており、それが今の好調につながっている」
17日には兵庫・ノエビアスタジアム神戸でチュニジア代表(同29位)と戦うなか、熾烈なポジション争いを繰り広げる選手たちのアピール合戦は続く。
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金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。