日本代表OBが見たカナダ戦「正直、強化になるかと言ったら怪しい。だが…」 W杯後の変化と相乗効果に好印象【見解】
【専門家の目|金田喜稔】今の森保ジャパンは「誰が入っても攻守が安定している」
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング19位)は、10月13日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムでカナダ代表(同44位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏がカナダ戦の率直な印象を明かすとともに、カタール・ワールドカップ(W杯)後の変化についても持論を展開した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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「カナダは2026年北中米W杯の開催国(カナダ、メキシコ、アメリカ)の1つであり、強い意気込みで相当なプレーを見せるのかと思ったが、実際は機能していなかった。裏を返せば、相手をまったく機能させないほど日本が良かったとも言える」
カナダ戦をそう振り返った金田氏は、攻守両面で安定感を見せる森保ジャパンの現状を高く評価。誰が出場しても一定の強度とクオリティーを保っており、チーム内に相乗効果が生まれていると語る。
「今の日本は、誰が入っても攻守が安定しているし、守備への切り替えも非常に早い。そこが日本のベースになっていて、素晴らしいと思う。チームのコンセプトを個々が理解しているし、とりわけ守備意識は全員が非常に高い。1対1の局面で戦い、球際で激しくいくこと。もっと言えばボール奪取を狙う。さらに素早い攻守の切り替えも要求される。このへんがチームに浸透しているので、新しい選手が入ってもピッチ上での基本的なベースは変わらない。そこに個々の特徴や個性が加わり、非常に良い相乗効果が生まれている」
一方、金田氏は「カタールW杯前後で大きく変わった点」として最終ラインの位置を挙げており、「最終ラインの設定位置が数メートル上がっているうえ、コンパクトな陣形も保ちながらハードな守備を維持している。富安らの存在も大きいと思うし、GKも最終ライン裏のスペースを意識しているのが見受けられる」と評価する。
「ハイラインを設定するにしても、中盤でパスを簡単にカットされる、ミスが多いという状況ではラインを上げることはできない。最終ライン裏へのケア、前線からのプレスに加えて、攻撃面では相手のアタッキングサードにボールを運ぶ力も求められる。こうした要素が揃わないとハイラインは維持でないわけで、そこに継続してトライしている」
攻守一体のサッカーにトライ「チーム作りもスムーズに進んでいる」
日本代表のトライを好意的に見ている金田氏は、「ベスト16で終わったカタールW杯を経て、ベスト8以上を狙うにはこのままではいけないと感じたはずだし、浮き彫りになった課題の解消に向けてチャレンジしているのが今の日本だ」と、現在の立ち位置を明らかにした。
「カタールW杯の日本は、やや後方にブロックを構えた結果、相手に支配される時間が長く続き、どちらかと言えば受け身のスタイルだった。今は最終ラインが高い位置をキープし、チーム全体をコンパクトにしながら攻守一体のサッカーを推し進めている。逃げずにトライしているのは非常に好感が持てるし、ここまでいい結果をもたらしている」
実際、カタールW杯後の日本はここまで7試合を戦い、5勝1分1敗。直近は5連勝を飾り、22得点5失点と圧倒的な戦績を残している。
【カタールW杯後の日本代表の戦績】
3月24日 △1-1 ウルグアイ(国立競技場)
3月28日 ●1-2 コロンビア(ヨドコウ桜スタジアム)
6月15日 〇6-0 エルサルバドル(豊田スタジアム)
6月20日 〇4-1 ペルー(パナソニックスタジアム吹田)
9月9日 〇4-1 ドイツ(ヴォルフスブルク/フォルクスワーゲン・アレーナ/ドイツ)
9月12日 〇4-2 トルコ(ゲンク/セゲカ・アレーナ/ベルギー)
10月13日 〇4-1 カナダ(デンカビッグスワンスタジアム)
「正直、カナダ戦が強化になるかと言ったら、少し怪しいレベルというのが率直な印象。だが相手がどうであれ、日本の選手層が厚くなっているのは良い点だ。コンセプトを体現できる選手たちの能力が底上げされているのが大きく、チーム作りもスムーズに進んでいる感じを受ける。W杯までまだ3年あり、本大会ではメンバーがガラッと変わっている可能性はある。そういう意味で、今後も競争は激しくなるだろう」
17日にノエビアスタジアム神戸でチュニジア代表と対戦するなか、森保ジャパンはどんな戦いを見せるのか注目が集まる。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。