日本代表17選手で「圧倒的な風格」「物足りない」のは? 金田喜稔がカナダ戦を採点

金田喜稔氏が採点【写真:徳原隆元】
金田喜稔氏が採点【写真:徳原隆元】

【専門家の目|金田喜稔】毎熊は「今後が楽しみ」、復帰の中山が見せた「キックの質」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング19位)は、10月13日に新潟・デンカビッグスワンスタジアムでカナダ代表(同44位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、この試合に出場した17選手を5段階(5つ星=★★★★★が最高、1つ星=★☆☆☆☆が最低)で採点した。

   ◇   ◇   ◇

<GK>
■大迫敬介(サンフレッチェ広島)=★★★★☆
 大迫のPKストップは非常に大きい。最終スコアは4-1だが、前半のPKを決められていたらまた流れも変わっていた。PKストップによりカナダの勢いを遮断し、日本チームを活性化させたのは、間違いなくあのファインセーブだった。1失点はしたが芝の状態も影響していた。ビルドアップの面でもチャレンジしていたし、充実の1試合になったと思う。

<DF>
■中山雄太(ハダースフィールド・タウン)=★★★★☆
 フィード能力が高く、アーリークロスや駆け上がってからのクロスなど、さまざまなキックの質も見せた。中山がいることで左サイドのビルドアップが楽になる。よりポジションを内側に取ることで視野とパス角度が広がり、よりパス能力が生きると思う。期待値は高いし、代表で復帰したのは個人的にも嬉しい。

■町田浩樹(ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ)=★★★★☆
 やや縦の関係すぎるという印象も受けたが、試合通じて非常に良いタイミングで前線にパスをつけていた。パス能力が生きていたし、希少性のある左利きのセンターバックという強みも光った。町田のパスを起点に、3人目が動き出したり連動したりして、左サイドが活性化すると日本の武器になる。1対1の対応も安定し高さもある。今後の成長が楽しみだ。

■冨安健洋(アーセナル)=★★★★☆(→ハーフタイムOUT)
 指示を出している立ち振る舞い、1対1の強さを見ても、ピッチ上で圧倒的な風格が醸し出されていた。センターバックで組んだ町田はフィード力があり、その特長を生かすように冨安が意識しているところはあった。最終ラインの軸はやはり冨安で、安定感は群を抜く。板倉、谷口らも含めて最終ラインを作っていくなかで、やはり冨安の存在は不可欠。

■谷口彰悟(アル・ラーヤン)=★★★★☆(←ハーフタイムIN)
 さすがの安定感。チームがハイラインにトライするなか、最終ラインの変化を強く実感している1人だろう。どんな時も首を振って周囲の確認を怠らず、的確に相手を封じ込んでいた。ラインコントロールにもかなり気を遣っていた様子が窺えた。谷口がいることで最終ラインの層はぐっと厚くなっている。

■毎熊晟矢(セレッソ大阪)=★★★★☆
 アルフォンソ・デイビスと対峙し、スピードに対応できるか注目だったが上々の出来。毎熊が少し内側にポジションを取る場面もあり、外に貼る時と中に入る時で役割を使い分けられるのも大きい。攻撃参加は最大の強みで、非常に小まめにポジションも取り直している。菅原由勢も台頭している右サイドバックだが、2人の競争レベルは高く、今後が楽しみ。

■橋岡大樹=出場時間が短く採点なし(←後半38分IN)
 入った瞬間からギアが入っていたし、覚悟を持って出場したのがプレーから見えた。非常に好感が持てる。運動能力が非常に高く、フィジカルも強いので、このまま実績を積み重ねて行けば代表にコンスタントに呼ばれる可能性は高い。あとは毎熊や菅原との競争。橋岡はセンターバックもできるので、その意味ではユーティリティー性も売り。

浅野が生きる「手本のような試合」 伊東の「献身性は一切変わらない」

<MF/FW>
■遠藤 航(リバプール)=★★★★☆(→後半16分OUT)
 フィジカルの強さ、寄せの速さは一級品で的確にプレーしていた。局面での判断も良く、攻守において安定。中盤を引き締めるとともに、攻撃面でもボールを散らしてリズムを作った。選手はこれまでから数人入れ替わっていたが、遠藤が屋台骨となり支えていた。

■伊藤敦樹(浦和レッズ)=★★★☆☆(←後半16分IN)
 先日強烈なミドルシュートでインパクトを残したが、この試合では途中出場の時にすでに大勢が決していた感もあり、いろいろできる余地は多くなかった。まずは守備という意識があったのだろうし、最終ラインの前をしっかり締める役割は果たした一方、攻撃面での絡みはもう少し増やしたかった。ボールを引き出し、左右に散らす場面などを増やしていければ、チーム内での存在感もぐっと高まってくると思う。

■伊東純也(スタッド・ランス)=★★★★☆
 毎熊との関係性も悪くなかったし、伊東がいるだけで右サイドの攻守はぐっと安定感が高まる。相手の出来も出来だったので、本人は口にしないだろうがまずは無理せずという考えも働いたかもしれない。チーム全体のバランスを意識していた感もある。それでも守備でかなり奮闘していたし、献身性は一切変わらないのが伊東の良さで、らしさでもある。

■浅野拓磨(ボーフム)=★★★★☆(→後半27分OUT)
 前線からのプレスは強烈で、「こういう使い方をしたら生きる」という手本のような試合。スピードを活かして背後を狙い、時にサイドに流れながら起点を作るだけでなく、前線からの守備でチームを助けた。フィジカルも強く、ちょっとした競り合いをまったく苦にしない。ゴールを望みたいところもあるが、浅野のスーパーディフェンスや突破からゴールが生まれているし、ゴールに絡んだ点を評価したい。

■古橋亨梧(セルティック)=★★★☆☆(←後半27分IN)
 今の立場を考えると、やっぱりゴールを取らなければいけない。時間的に厳しい面もあったが、古橋のタイプとしてはやはりゴールに直接絡む働きが必要で、その点は物足りない。攻撃性能の高さはセルティックで発揮しているし、動き出しも超一流。あとはシュートを決めるだけだがゴールが遠い。シュートが上手い選手が、代表ではなぜか決められないというのはある話。本人も分かっているだろうが、代表で結果を残すのが最優先だ。

違和感がなかった南野、2ゴールの田中は「シャドウ的な役割のほうが良さが出る」

<MF/FW>

■南野拓実(ASモナコ)=★★★★☆(→後半38分OUT)
 久しぶりの出場で結果がほしいだろうし、やや気負ったところもあったかもしれない。シュートのところでしっかりミートできない場面もあった。久しぶりといっても、カタール・ワールドカップまでは中心選手として活躍してきたわけで、攻撃に絡めない時間もあったが違和感はない。足の運び方、シュートへの予測など、らしさも随所に出ていた。あとは本来持っている「決め切る力」だろう。

■田中 碧(デュッセルドルフ)=★★★★★(→後半27分OUT)
 この日2ゴールで勝利に貢献した。積極的な姿勢でシュート場面に絡んでいる点を最大限評価したい。ボランチでも、守備重視ではなくシャドウ的な役割のほうが田中の良さが出る。所属クラブでは途中出場も続いていたし、代表のゲームで輝いて自信を取り戻すきっかけになればと思う。今回のように代表で結果を残し、所属クラブでもコンスタントに活躍を続けるのが第一だ。

■川辺 駿(スタンダール・リエージュ)=★★★★☆(←後半27分IN)
 旗手と同様、簡単にボールを失わないのは魅力だ。そして時にダイナミックな上がりも見せて攻撃に厚みを加えていた。臨機応変な判断とプレーは川辺の真骨頂で、プレー時間は長くなかったが、要所で自身の良さを発揮していた。コンスタントに呼んでほしい選手の1人であり、もう少し長い時間見たい。

■中村敬斗(スタッド・ランス)=★★★★☆(→後半16分OUT)
 まずは足の状態が心配。三笘とはタイプが異なり、中村の良さがまた出た試合でもあった。アタッキングサード付近でプレーする時、中村のキック精度が光り輝く。キックに対して自信もあるだろうし、セットプレーでの精度も良かった。この日のゴールも決して簡単ではないなか、代表4試合で4ゴールは圧巻。今、誰よりも「結果」を出している。

■旗手怜央(セルティック)=★★★★☆(←後半16分IN)
 途中出場後にサイドハーフやトップ下など複数のポジションをこなしてチームを助けた。サイドバックにも対応できるユーティリティー性を備えておりプレーの幅は群を抜くだけに、中村、三笘、伊東らと単純に比較できない希少価値がある。どのポジションであれ、ボールを取られないドリブル能力とボールを運ぶ力が素晴らしく、この試合でもポテンシャルを見せつけた。

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金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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