アジア大会ホスト国は日本をどう見た? 脱帽した選手層の厚さ…“日中韓”の格差【コラム】
日本はアジア大会で男子が銀メダル、女子は金メダルを獲得
日本サッカーファンのみなさま、こんにちは。久保田嶺です。中国・杭州にて開催されていたアジア大会も閉幕し、男子サッカーは韓国、女子サッカーは日本の優勝で幕を閉じました。では、ホスト国の中国のサッカー記者たちは今回のアジア大会をどう見たのでしょうか。
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「日本、韓国と我々の差は明らかです」
「印象に残ったのは日本のGK藤田和輝選手(栃木SC)です」
こう話してくれたのは、この連載にも過去に登場してくれている中国大手サッカーメディア「懂球帝」の薛航(シュエ・ハン)記者と、中国紙「第一財経」にてサッカー番を務める佟鑫(トォン・シヌ)記者です。
シュエ・ハン記者「まずはこういった国際大会が中国でも開催できるようになったことで、コロナ禍の終わりを感じています。これは非常にポジティブなことですが、サッカーの結果は残念です。正直予想外ではなかったのですが、やはり日本と韓国と差が大きくあります。女子は準決勝で日本に敗れ、点差こそ最終的に1点差(3-4)でしたが、それ以上の違いがあると感じました。特にこちらはエースのFW王霜(ワン・シュアン)などもいたAチームですが、日本は主力選手がほとんどいません。我々のメディアのコメント欄でも、『大きな差がある』『簡単には埋まらない』という声が多かったです。
男子に関しても、韓国に準々決勝で手も足も出ず敗戦(0-2)でした。日本の印象は大学生です。これは近年の日本サッカーを象徴していると思いますが、決勝の韓国戦で得点を決めた内野航太郎選手(筑波大)など、メンバーに多くの大学生がいたと思います。我々中国の大学リーグには代表に入れるような選手はいませんし、規模も日本とは異なります。これこそ日本サッカー強さの秘密だと改めて思いました」
トォン・シヌ記者「私は決定的チャンスを何度か防いでいたGK藤田選手が印象に残っています。また、シュエ・ハン記者の言うとおり、大学生選手が多くいたのは日本サッカーのいい部分だと思いますが、逆に若さも見えました。やはり韓国のチームと比べると成熟していなかった印象です。女子に関しては、日本は主力のいないBチームでもアジアで優勝できてしまう、その選手層の厚さに驚いています。中国の良かった部分は……難しいです。しかし、大会を無事に開催できたことは間違いなくいいことで、今年からはACL(AFCチャンピオンズリーグ)も中国でホーム開催ができています。このようにアジアの強豪と試合をし続け、成長していくしかないと思います」
私から見ても今回のアジア大会での中国代表は、特にいい収穫はなく、厳しい戦いだったと思います。しかし、今大会に参加したDF朱辰杰(ジュ・チェンジェ)やMF戴伟浚(ダイ・ワイ・ツン)などはA代表でも主力選手であり、今後のワールドカップ(W杯)予選では活躍しなければならない選手です。
11月に始まるW杯アジア2次予選の中国は、タイ、韓国、シンガポールvsグアムの勝者と同組となり、おそらくタイと2位通過を争う形となります。そして、11月16日の初戦の相手がそのタイ戦(アウェー)となり、中国では第1戦目から“生死战(生死をかけた戦い)”と言われています。
今回のアジア大会に参加したA代表の選手たちが経験を活かしてW杯予選で躍動すること、それがアジア大会最大の収穫になることを期待しています。
(久保田嶺 / Rei Kubota)
久保田嶺
1991年生まれ、埼玉県出身。「Rouse Shanghai Co.,Ltd.」代表。日系企業の中国インバウンド事業やマーケティング、中国サッカー選手/指導者のマネージメントを手掛ける。自身の中国SNSフォロワー数も40万人と中国サッカー界で一番有名な日本人としても活躍。日本へ中国サッカー情報を発信する。