三笘ら常連4選手が不在、日本代表の複雑なチーム事情 入れ替えはまだ少ない…Jリーガーをより選抜してほしかった【コラム】
10月に2試合を控える日本代表、選手のコンディションを低下させては元も子もない
日本代表の10月シリーズに臨む26人が選出された。カナダ代表、チュニジア代表との2試合を行うわけだが、選んだ途端に2人の入れ替えが発生している。前田大然(セルティック)が負傷のため川辺駿(スタンダール・リエージュ)が招集され、体調不良の三笘薫(ブライトン)の代わりに奥抜侃志(ニュルンベルク)が初招集された。
最初に26人を選出した時点で堂安律(フライブルク)、鎌田大地(ラツィオ)が外れている。この2人に関しては所属クラブとの話し合いにより今回は招集を見送ったという。ともあれ、森保一監督下で常連だった4人がいなくなった。ただ、これはこれで悪くないように思う。
欧州から日本へはフライト時間が10時間を超える。時差も8時間。東回りは時差の影響が大きいと言われ、世界の代表チームのなかでも移動については最も過酷かもしれない。代表戦が終われば、すぐに欧州へ戻って所属クラブでの試合に出るという日程は厳しい。それが積み重なってくるとコンディションは低下し、所属クラブでの出番を減らすという事態は過去にあった。
三笘、前田、堂安、鎌田についてはすでに実力も証明されていて、日本代表でも中心的な存在。コンビネーションや戦術理解にも問題がない。親善試合のために呼ぶぐらいなら休ませたほうがいいのだ。久保建英(レアル・ソシエダ)、伊東純也(スタッド・ランス)、遠藤航(リバプール)、守田英正(スポルティング)などについても同じことが言える。もちろん、あまりに多くの選手を入れ替えてしまうとチームの骨格が保てなくなってしまうが、何人かは招集しなくてもいいし、4人の入れ替えはまだ少ないぐらいだと思う。
代表チームは活動期間が長いわりに活動日数は非常に限られている。今回の2試合を終えれば、アジアカップとワールドカップ(W杯)予選が待っていて、当分はアジア以外との試合が組めなくなる。だから最強チームを編成したい事情は分かるが、W杯本大会はまだ先である。選手のコンディションを低下させては元も子もない。
できればもう少しJリーグの選手を選抜してほしかった。サッカーを地上波で見られる機会は限られていて、代表戦はその数少ない機会だ。代表選手は知っていてもJリーガーはほとんど知らないというファンはもう珍しくないからだ。
限られた強化日程の中で勝たなければならないし、新たな選手も試さなければならない、休ませたい選手もいる。そのうえ国内リーグの人気にも貢献してほしいとなると、代表監督の仕事は複雑になりすぎてしまうかもしれない。ただ、シンプルに強いチームを作ればいいかというと、世の中はもう少し複雑な気もするのだ。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。