磐田が静岡ダービー敗北でJ2リーグ4位転落 「足りないものはたくさんある」…昇格レース“大一番”で露わになった現在地【コラム】

磐田のキャプテン山田大記(写真は2021年のもの)【写真:Getty Images】
磐田のキャプテン山田大記(写真は2021年のもの)【写真:Getty Images】

宿敵・清水との静岡ダービーに0-1敗戦、残り4試合の終盤戦で痛恨の結果に

 清水エスパルスとの静岡ダービーで、ジュビロ磐田は1-0の敗戦。清水が磐田に代わり2位に浮上し、他会場で東京ヴェルディが大分トリニータに勝利したため、磐田は得失点差で4位に後退した。

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 30年に渡って繰り広げられてきたダービーは常に意地とプライドを懸けた特別な試合となるが、今回は昇格争いの最終盤に向かっていくなかで迎えた大一番であり、磐田のキャプテン山田大記も「どちらが自動昇格権を掴み取るかと言うものを決するような大事な意味合いを持つダービーになる」と語っていた。

 横内昭展監督も先のことは考えず、このダービーに100%集中することを宣言して臨んだ試合であり、その試合を落としたことは大きな痛手だろう。「我々が想定したなかで、しっかりプレーできたかなと思ってます。不運なところで失点してしまい、苦しい状況にはなりましたけど、続けて我々は準備してきたことを選手は表現してくれた」と語るが、清水の粘り強いディフェンスからゴールをこじ開けることができなかった。

 終わってみればボール保持率は清水が48%、シュート本数は13対16と磐田が上回ったが、前半の終わりに乾貴士のゴールで先制した清水の秋葉忠宏監督が、後半の早い時間に3バックを選択して、守りを固めたことが影響している。前半は清水のほうが優勢で、シュート本数も大きく上回っており、その中でチャンスの1つが乾のゴールになった。横内監督が言うように、清水のゴールは磐田のとって少しアンラッキーなところもあったが、磐田の対応に問題があったことも確かだ。

 チアゴ・サンタナにディフェンスラインの手前でボールを持たれてしまい、そこにプレッシャーが不十分で、スルーパスが磐田のリカルド・グラッサに当たる形で乾のもとにこぼれた。磐田のディフェンスが後手になった結果でもある。そこから乾の放ったミドルシュートが、コースに飛び込んだリカルド・グラッサに当たって方向が変わり、GK三浦龍輝もノーチャンスだった。

「危険なところを消すっていう作業ができていない場面は失点シーン以外にもあった。特に前半は。そこの優先順位の付け方というか、どこが危ないのか、どういうプレーがリスクになるのかはもう少し自分たちで整理してやらないといけないかなと思います」

 そう振り返ったのはキャプテンの山田だ。攻撃に関しても清水を相手にやれたところもあったが、局面で上回ることができないまま、清水にリードを許した。後半の3バック変更に関して清水の秋葉監督は「勝っているところでうしろから強く、守備から入るというふうに思いましたから、ああいうふうにしただけ」と振り返る通り、勝ち点3のための決断だった。

「自分たちがドラマを作るためにするべきことは…」主将が胸中吐露

 山田は「後半狙いどころもみんなで整理して、そこを使いながら決定機も作れていたりしたので。そこで進められれば良かったかなと思います」と語るが、磐田として清水の守備を流れから攻め崩してく攻撃が繰り出せなかった。現在地として磐田の力が清水に及ばなかったのか、ダービーという独特な試合で出し切れなかったのかを問うと、山田は「両方ありますね」と答えた。

「自分たちが足りなかったものを挙げればたくさんあるので。自分たちはそこに目を向けて改善していくしかないと思いますけど。勝った清水さんもちろん、清水さんからすれば、パーフェクトゲームではなかったと思うので。そのなかで、何が自分たちに足りなかったのかというところは自分たちに目を向けるしかない」

 清水にダービーで勝つことだけを考えたら、いつもとやり方を変えて、清水のストロングを消し、清水のウィークポイントを突くことに徹する方法もあったかもしれない、しかし、横内監督はそうしたことはせずに、ここまで継続してきた戦い方を真っ向からぶつけて、清水に跳ね返された形だ。圧倒はされなかったし、ジャーメイン良が外した前半のビッグチャンスや終盤に続いたセットプレーの1つをモノにしていれば、勝ち点が磐田にこぼれてきたかもしれない。突き詰めて考えれば、現在地を突き付けられた結果となったのも確かだ。

 山田は「自分たちが改善すべきところに目を向けるしかないと思いますね。そこを改善した時に、自分たちが勝利にふさわしいチームになれるっていう自信を僕自身も持っています」と強調した。ダービーに敗れてしまったという事実が変わることはない。それにより昇格に向けて、非常に厳しい状況になったが、シーズンはまだ決していない。山田は続ける。

「自動昇格に関しては他力にはなってしまいましたけど、プレッシャーをかけ続けるのは可能だと思いますし、最後まで何があるか分からないのがサッカーであり、昇格争いなので。自分たちがドラマというかストーリーを作るためにするべきことは4連勝だと思う」

 それをした末に、磐田は自動昇格が取れるのか、プレーオフに行くのか。残り4試合。横内監督の流儀でもある1試合1試合、目の前の試合に全力で挑んでいく先に、どういう結果が待っているのか。運命のラスト4を見届けたい。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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