日本の準Vは「恥ずかしいことではない」 英記者が韓国の勝因を指摘「ロケット燃料のように作用」【コラム】
アジア大会決勝で日本は韓国に1-2で敗れた
U-22サッカー日本代表は10月7日、アジア競技大会の決勝で韓国代表に1-2で敗れ、準優勝に終わった。ワールドカップ(W杯)を7大会連続取材し、今大会も現地に足を運んでいる英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、相手の“兵役免除”がもたらした効果を指摘し、日本は「十分に誇れる功績」と称えた。
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およそ10分、その間日本代表は夢を見ることができた。いくつかのチャンスは逃したものの、そのうちの1つをゴールに結びつけた。大岩剛監督率いるチームは黄龍スポーツセンタースタジアムでのアジア大会決勝でも力を発揮した。
その後、クオリティーと経験を備えた韓国の反撃を食らうことになる。彼らには果たさなければならない使命があり、おそらくそれが最も重要なことだったのだろう。
韓国代表にとって、兵役免除への期待は最も効き目のある動機付けの手段となることがあらためて証明された。彼らは2014年、2018年にもこの大会で金メダルを獲得していた。
杭州でファン・ソンホンが率いるチームも同じことを成し遂げた。前半2分の内野航太郎の得点で出鼻をくじかれはしたが、そこから韓国代表選手の才能と執念が日本を上回り、より優れたチームが勝利を収めたのだ。
日本がどの部分で劣っていたのかを一日中議論することは可能だ。経験が不足していたとも考えられるし、あるいはディフェンスや中盤、チャンスを決めきれなかった攻撃面での個々のミスについて考えることもできる。
しかし、正直に言えば、韓国は初めから頭一つ抜けた優勝候補としてこの大会に臨んでいた。彼らが再びチャンピオンとして帰国することに驚きはなかった。
彼らにはそれだけ価値のある目的があったのだ。勝てば、2年以上もキャリアを中断しなければならないという不安から解消されると知っていれば、誰だって限界を超えて頑張ろうとするだろう。
兵役免除は選手のキャリア、人生を大きく変え、韓国代表のクオリティー向上の大きな助けとなっている。
日本がそれに対抗することはできたのだろうか? たとえ、相手より経験豊富なチームだったとしても、タフなタスクになるだろう。
日本代表の多くは、Jリーグで出場機会の少ない選手や、大学でプレーしている選手だ。彼らにとって今回ことをまったく新しい経験であり、長い目で見ればポジティブなものとなることは間違いない。
内野のゴールは見事だったし、佐藤恵允は左サイドから痺れるような突破で先制点を導き、今大会の序盤から彼の才能に注目が集まっていたことが正しかったと証明した。
時折、ミスを韓国に突かれることもあったが、中盤の重見柾斗とディフェンスの山﨑大地も力強いパフォーマンスだった。
イ・ガンインらは優勝を勝ち取り、兵役免除に
日本はアジア大会がより大きく、より良い舞台への足がかりになることを過去に何度も示してきた。私が初めて足を運んだ1998年のバンコク大会以来、日本はこの大会で若い選手たちにチャンスを与えてきた。この杭州でも例外ではなかった。
結果には失望の思いもあるかもしれないが、韓国がより豊富な経験と狡猾さをもって大会に臨んでいたのは事実だ。イ・ガンインは今夏にパリ・サンジェルマンと契約し、8ゴールで大会得点王になったチョン・ウヨンはドイツで堅実なキャリアを積み上げている。
ペク・スンホはバルセロナにも在籍していて、今は韓国にいるが、近い将来に欧州へ戻りたいと考えていることは間違いない。彼と彼のチームメイトにとって、兵役免除はロケット燃料のように作用したのだろう。
この試合に負けたことは日本にとって恥ずかしいことではない。日本のこの若いチームが優勝まであと1歩のところまで進んだことは十分に誇れる功績だ。下馬評は決して高くなかったチームは素晴らしい戦いを見せた。
大岩剛監督は選手たちを誇りに思う権利があり、来年から始まるパリ五輪の予選に向け、自信を持って日本に帰国する理由があるといえるだろう。
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。