J2から日本代表へ上り詰めた同期が「刺激になった」 磐田で「中心にならないと…」昇格争いで芽生えた自覚【コラム】
磐田は岡山に痛恨の逆転負け…MF鹿沼直生が語った悔恨
ジュビロ磐田は9月24日のJ2第36節でファジアーノ岡山とアウェーで戦い、前半の幸先良くリードを奪いながら、1-2で逆転負けを喫した。
4位の東京ヴェルディが藤枝MYFCと2-2で引き分けたため、磐田は3位のまま。ただ、首位のFC町田ゼルビアがV・ファーレン長崎に6-0と完勝し、勝ち点を71に伸ばしたトップチームとは同9差。その町田は悪天候で延期になったブラウブリッツ秋田とのアウェー戦(10月14日開催)が未消化のため、逆転優勝が極めて難しくなってきた。
静岡県勢のライバルである2位の清水エスパルスもヴァンフォーレ甲府とスコアレスドローで、勝ち点1を伸ばすにとどまった。もし町田が残りの試合で順調に勝ち点を伸ばしていった場合、清水、磐田、東京V、さらに6連勝で急上昇中のジェフユナイテッド千葉で、自動昇格の残り1枠を争う構図になりつつある。
岡山戦にスタメン出場したMF鹿沼直生は前節のレノファ山口FC戦からの出場停止明けだったが、立ち上がりから連動性の高いプレスを中盤からサポートし、数多くボールを奪って、磐田の攻勢を助けた。前半7分のDF松原后による先制ゴールも鹿沼のインターセプトが起点だった。
「最初から2、3回ポンポンと奪えたので。乗れるなという感覚はあって」。そう振り返る鹿沼はまさしく中盤で“効いている”存在であり、ホームの岡山を守勢に回した。しかし、前半30分過ぎに磐田の勢いが一旦止まり、守備もブロックを構える形になった直後に、岡山がDF鈴木喜丈の攻撃参加がハマる形で同点に追い付く。
「どうしても試合の中で我慢する時間帯はあると思う。そのなかで、前半は相手にチャンスがどれだけあったかというと、ああいうシーンぐらいだったので。そういうところで我慢し切れなかったというのは今回の敗因かなと思ってます」
後半はほぼ一進一退の攻防だったが、磐田の横内昭展監督がボランチのMF上原力也とキャプテンのMF山田大記を下げて、FW後藤啓介とMF藤川虎太朗という攻撃的なカードを切った2分後のコーナーキックからDF柳育崇に逆転ゴールを決められた。
ベンチからその失点を目にすることとなった山田は「セットプレーの回数を減らすことも1つですし、与えたセットプレーに対して、しっかり対処すること。いろんな角度からセットプレーには対処していかないといけない」と振り返るが、鹿沼はピッチに残った選手としての責任を口にした。
「長い時間使ってもらっている以上、チームを勝利に導かないといけないですし、あの2失点目も山田さんと力也くんが交代した数分後だったので、そういうところで自分が出ている以上、チームをうまくまとめて動かさないといけなかったかなと思います」
昇格を目指す磐田の中盤で“主力”として君臨
シーズン開幕当初、なかなか試合に絡めなかった鹿沼だが、ルヴァン杯や天皇杯などが挟まる過密日程で徐々にチャンスをもらい、そこでアピールすることでリーグ戦の出場時間も伸ばしてきた。ついには前節の出場停止まで4試合続けてスタメン起用されて“主力”と呼べるところまで来ている。確かに個人のところでも課題はある。特に攻撃面で縦に差し込むパスなど、まだまだ足りないことも自覚しているようだ。
ただ、昇格を目指す磐田の中盤でスタメンを張るということは、チームの結果に対する責任を託されているとの見方もできる。「中心になっていかないといけない年齢だと思うので。チームを勝たせるためにプレーだけじゃなく、声だったり、中心になっていくための意識を持っていかなければいけない」と語る25歳の鹿沼にとって、刺激にしている選手がいる。J2長崎からJ1セレッソ大阪に移籍し、ついには日本代表にまで上り詰めたDF毎熊晟矢だ。
「(大学)選抜でも一緒にやっていて、結構仲も良かったので。そういうのはすごく刺激になってます」
“このまま終わらない”と決意を表す鹿沼はゴールやアシストという結果はもちろん、リーダーシップでチームに勝利をもたらす存在になっていけるか。終盤戦で是非とも注目してほしい選手の1人だ。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。