バイエルン18歳超新星FWが絶賛される理由とは? 偉業達成ミュラーらが太鼓判「だからみんな彼のことが好きなんだ」【現地発】
マンU戦で4-3勝利、歴代3位のCL通算100勝達成のミュラーも終盤の展開に驚き
バイエルン・ミュンヘンがマンチェスターユナイテッドを4-3で下したUEFAチャンピオンズリーグ(CL)第1節は、後半42分から途中出場したトーマス・ミュラーにとってCL通算100勝目というメモリアルゲームとなった。115勝のクリスティアーノ・ロナウド、101勝のイケル・カシージャスに次ぐ歴代3位の記録だ。
試合後、ミュラーはいつものように朗らかな雰囲気で報道陣の質問に答えていた。
「今日はいい気持ちだ。今季のCLをいい形でスタートをすることができた。僕がチャンピオンズリーグで過ごすことができた長い長い時間旅行を振り返ると、本当に素晴らしいことばかりだ。メランコリックで歴史的なものを感じるよ。でもチームはまだ終わりではないし、僕にしてもそうだ。そういった意味で今日は通過点といったところだよ」
試合は後半40分の段階で3-1とバイエルンがリードをしていた。それまでの試合展開からもこのまま特に何も起こることなく試合は終了するかと思われていたし、その思いは多くのファンも一緒だっただろう。混み合う前にとスタジアムをあとにするファンの気持ちも分かる。
ただサッカーは何が起こるか分からない。後半43分にユナイテッドのカゼミーロが1点差に迫るゴールを挙げたかと思うと、アディショナルタイム2分には途中交代したバイエルンのマティス・テルが見事なゴールを決めてまた2点差に広げる。これでさすがに終わったと思ったら、その3分後にまたしてもカゼミーロがゴールを決めるという、なんともワイルドな終盤になった。
ミュラーも途中出場でピッチに入る時は、もっとゆっくりとしたラストになると思っていたことを明かしている。
「僕もゴールできるかもって思っていたよ(笑)。ああいう試合展開になるとは予想していなかったし、ただ僕らもそうならないための仕事をしていなかった。でもこれがサッカーだよ。こうしたワイルドなことが起こったりする。だからみんなサッカーが大好きなんだ」
決勝点をマークした18歳FWテル、SDや同僚らが賛辞「すべての若手の手本」
最終的に決勝点となるチーム4点目をマークした18歳FWテルのことをミュラーは高く評価している。
「いつでもエネルギーをもたらしてくれる。どんな時でもゴールを狙っている。だから僕らはみんな彼のことが好きなんだ。トレーニングでも、いつも重要な役割を担っている。まだ若いというけど、ここはバイエルン・ミュンヘンだ。コーヒーを飲みながら座談会をしたり、宝くじに当たってここにいるわけではない。最高レベルのパフォーマンスが求められるところだ。そんななかでエクセレントなプレーを見せてくれているし、彼のゴールは素晴らしい」と、その活躍に目を細める。かつての自分の姿と照らし合わせているのかもしれない。
テルは今季ブンデスリーガでここまで5試合にそれぞれ短い時間ながら途中出場し、3ゴール1アシストと結果を出しており、プレー面だけではなく、その取り組む姿勢に対してクラブ関係者やチームメイトから称賛されている。
スポーツ・ディレクター(SD)のクリストフ・フロイントが「性格もメンタリティーも素晴らしいものがある。まさにこちらが願うばかりの若い選手といってもいい」と話せば、GKスベン・ウルライヒは「すべての若手の手本となる選手」と賛辞を送る。
ジャマル・ムシアラが「素晴らしい選手でいつもハードに取り組んでいる。これから先多くの未来が待っている」と2つ下のシューティングスターについて語れば、同じフランス人のダヨ・ウパメカノは「学習能力が高いし、学習意欲がある。これを継続しなければならない。そうしたらスーパープレーヤーになれるだろう」と、その将来性に太鼓判を押した。
シーズンはまだ序盤。ユナイテッド戦でも好プレーが見られた一方、軽率なミスも少なくはなかった。主軸を定め、ベテランと若手がそれぞれに活躍できる起用法を見出しながら、チーム作りを進めていきたいところだ。
中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。