「大人としてモラルというか…」 浦和サポーター暴徒化で天皇杯の参加資格剥奪問題、日本代表OBが「腑に落ちない」点とは?【見解】
【専門家の目|栗原勇蔵】2024年度の天皇杯参加資格剥奪は「かなり重い処分」
浦和レッズは9月19日、8月2日に行われた天皇杯ラウンド16名古屋グランパス戦後、一部の浦和サポーターが暴徒化した件で、日本サッカー協会(JFA)から2024年度天皇杯(第104回全日本サッカー選手権大会)の参加資格の剥奪と譴責(始末書の提出)の処分を受けた。元日本代表DF栗原勇蔵氏は「かなり重い処分」と印象を語りつつ、「サッカー界全体で重く受け止めないといけない問題」と警鐘を鳴らしている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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浦和は8月2日の天皇杯ラウンド16名古屋グランパス戦後、一部のサポーターがピッチへの乱入、立ち入り禁止エリアへ侵入し、愛知県警が出動する騒ぎに発展した。
浦和側は8月5日には立ち入り禁止エリアへの侵入を主導したサポーターなどに処分を科していたが、16日付で発表された続報リリースではJFAが実施してきた映像を用いた事実確認の結果報告を受けたことが報告。新たに判明した違反行為として、暴力行為(警備員を押し倒したり、相手サポーターの胸倉を掴むなどの行為)、破壊行為(緩衝柵を破壊するなどの行為)があったとした。
そうしたなかJFAは8月31日、臨時理事会の末に決定した浦和の一部サポーターへの処分を発表。17人を無期限の入場禁止、1人を5試合の入場禁止の処分を下していた。
そして、JFA規律委員会は9月19日、浦和に対して2024年度天皇杯の参加資格の剥奪と譴責の処分を発表。「自チームのサポーターに対して試合後においても秩序ある適切な態度を保持するよう努める義務を怠り、2023年8月2日(水)にCSアセット港サッカー場にて行われた本大会4回戦対名古屋グランパス戦の試合において、試合終了から約20分後より、多数(合計70名以上)の対象者のサポーターが暴徒化して以下に掲げる当協会試合運営管理規定に違反する行為に及んだことを防止できなかったほか、本件サポーターらを即刻退去させるなど、観客や選手その他の試合に関わる人の安全を確保するために適切な措置を講じなかった」と処分の理由を指摘していた。
栗原氏は「年またぎの処分はしっくりこない」と感想
元日本代表DF栗原氏は、「浦和サポーターの熱さは個人的には好き。サッカーの醍醐味を感じさせてくれる」と日本一とも言われる声援や会場の雰囲気をリスペクトしつつ、「傷害事件とかになったら洒落にならない。ルールを守って応援してほしい」と見解を述べた。
「クラブがサポーターの行動を管理できていなかったという見方もあると思いますけど、サポーターがやったことに対して、クラブが参加資格を剥奪される、あるいは勝ち点を失うとなれば、クラブにとってはかなり厳しい。クラブが怠って起こったことならまだしも、大人としてモラルというか、ルールを守れない人たちが原因で今回の事態に発展した。スポーツは熱くなることもイライラすることもあるけど、なんでもありではない。ルールを守って観戦しているサポーターもいる。人気チームでサポーターも多い分、ルールを守れない人の割合も上がってしまう可能性がある。今後そういうことを絶対に起こさせないという意味で、見せしめも含めて、仮にリーグ戦出場停止とかになっていたら、とんでもない事態になっていた」
また、栗原氏は資格剥奪の対象は2024年度の天皇杯となったことに「腑に落ちない」と感想を述べる。
「天皇杯に出られないのは大きな処分。ただ、年またぎの処分はなんかしっくりこないし、前代未聞と言ってもいい。シーズン終了後に移籍して、来年関係ない選手もいる。シーズンで起きたことは当該シーズンで決着をつけてほしい思いもあります」
栗原氏は「サッカー界全体で重く受け止めないといけない問題」と主張したうえで、「もう起こさない、とできるかどうか。これだけの制裁を食らうんだということを知らないといけないし、サポーターもその重みを受け止めて、語り継いでいかないといけない。繰り返すことが一番罪が重いし、こういうことを起こさないクラブの環境作りも必要になると思います」と指摘していた。
(FOOTBALL ZONE編集部)
栗原勇蔵
くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。