J1優勝争いに不安露呈 横浜FM、ACL仁川戦で気になった途中出場選手の“覇気のなさ”【コラム】
【カメラマンの目】横浜FMは仁川のカウンター戦術に撃沈
アジアナンバー1クラブを決定するAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が開幕し、横浜F・マリノスはグループステージ初戦で韓国の仁川ユナイテッド相手に2-4で敗戦。内容的にも、今後に向けたプラス材料を見つけるのが難しい低調な90分間となってしまった。
自宅に帰り、過去の取材ノートを調べてみた。これまでACLの日韓対決で韓国のホームとなる試合を取材したのが39試合。勝敗は日本勢の14勝8分17敗となっていた。
韓国勢はホームでも大胆に攻撃を仕掛けるのではなく、自陣ゴール前を人海戦術で守る慎重な試合運びを常套手段としていることが多い。その守備方法は前線からというより、何よりゴール前を固める戦術を執る。
そのため日本勢が韓国のアウェー戦で敗れる時は、1つの形が見られることになる。それは個人技で勝る日本勢が攻めながらもフィジカルで勝負してくる韓国チームに対して最終局面を崩せず、逆にカウンター攻撃を受けてゴールを奪われるというパターンだ。
ホームでさえ堅固な守備網を敷いて戦う韓国チームなのだから、アウェー戦となればなおさら手堅く、そしてフィジカルを武器に厳しくプレーをしてくるのは当然の帰結である。まさに仁川は韓国勢が得意としている戦術で臨み、前掛かりとなる横浜FMからボールを奪ってカウンターを仕掛けるというプラン通りのサッカーを遂行したことになる。
2-2で迎えた後半、横浜FMベンチにカメラを向けた。このとき攻撃陣を牽引するレギュラーのアンデルソン・ロペスとエウベルは、ウォーミングアップに参加せずベンチに座ったままだった。何人かの選手はゴール裏のウォーミングアップスペースで出場に向けて準備を進めている。
相手ゴールに襲い掛かる迫力不足
後半20分、それまで出場への準備をしていた3選手が交代でピッチに立つと、彼らと入れ替わるようにアンデルソン・ロペスとエウベルはウォーミングアップスペースへと向かい身体を動かし始めた。ACLのベンチメンバーは12人と多く、指揮官ケヴィン・マスカットの頭の中にはリーグ戦を見据えて、この試合で起用する選手の順位があったのだろう。
その判断も十分に頷けた。今週末に行われるJリーグの試合では、ここにきて調子を上げてきている3位鹿島アントラーズとの一戦を控えている。翌週には優勝に向けての大一番となる首位ヴィッセル神戸戦も予定されている。できることなら攻撃陣の主力をリーグ戦に集中させるために、温存したかったのだろう。
結局、後半30分、34分と立て続けに失点し、もはや挽回が難しくなったためブラジル人FWの出番はなくなった。では、敗因はどこにあったのか。
それは試合開始からベストメンバーで臨まなかったことではない。この試合に先発、そして途中出場した多くの選手たちに覇気がなかったことだ。ボールを持てていたからか(実際は相手の術中にハマり持たされていた)、いつでもゴールができるとたかを括っていたとまでは言わないが、チーム全体に遮二無二、相手ゴールを攻め落とそうとする迫力が感じられなかった。
守備でも相手へのマークが甘く激しさがまったく足りていなかった。韓国のチームには小手先の上手さだけでは勝てないことを痛感させられる試合となってしまった。
選手たちの意識が二連覇のチャンスがあるリーグ戦に、より向けられてしまうのは仕方ないかもしれないが、この試合のようにボールをキープできるから、いつかはゴールできるだろうというサッカーでは、したたかなチームには足をすくわれる。
鹿島は闘志を前面に出し、豊富な運動量とボールを持った敵選手への素早い寄せで、相手の戦術的な動きを局地戦において潰していき、サッカーをさせないスタイルでリズムを作ると、そこから繰り出すカウンター攻撃を成功させ順位を上げてきている。
それだけに横浜FMにとっては、この仁川戦と同じ失敗を繰り返さなければいいのだが……。
■AFCアジアチャンピオンズリーグ2023-24
グループH
メルボルン・シティ(オーストラリア) vs ヴァンフォーレ甲府
19:00キックオフ
解説:ハーフナー マイク 実況:福田浩大
グループJ
武漢三鎮(中国)vs 浦和レッズ
21:00キックオフ
解説:槙野智章 実況:野村明弘
■AFCチャンピオンズリーグ2023-24 グループステージ日程
第1節 9/19(火)9/20(水)
第2節 10/3(火)10/4(水)
第3節 10/24(火)10/25(水)
第4節 11/7(火) 11/8(水)
第5節 11/28(火)11/29(水)
第6節 12/6(火) 12/12(火) 12/13(水)
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。