栃木×千葉のPK判定は正しかった? VAR未導入のJ2、副審の課題に日本代表OBと元審判員が見解
栃木FW矢野を千葉DF鈴木が倒してPK判定
スポーツチャンネル「DAZN」の判定検証番組「Jリーグジャッジリプレイ」で、9月16日に行われたJ2リーグ第35節、栃木SCとジェフユナイテッド千葉の試合が取り上げられた。ここでは、栃木に与えられたPKとファウルの位置について議論された。
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後半33分、栃木は相手最終ラインの背後にボールを供給するとFW矢野貴章が反応。遅れて対応した千葉DF鈴木大輔は矢野のユニフォームを掴んで倒してしまった。野堀桂佑レフェリーは鈴木のファウルをDOGSOと判断してレッドカードを提示し、栃木にPKを与えた。しかし、矢野のユニフォームを掴んだ鈴木の手はペナルティーエリア内に入る前に離れていたようにも見えた。
ゲスト出演した元日本代表MF福西崇史氏は、「外かなと思う。自分も『やってしまった』というのがあると思うし、中に入られた時点でGKを呼んで止まってしまった。そこで負けてしまった部分もあると思うし、PKになる前に倒しておこうというのはあったと思う」とコメント。そして、「ファウルを取るべきだと思う。完全に遅れている。肩も入っているならともかく、手だけでしか止められない状況を作ってしまっている」と話した。
元国際審判員の深野悦子氏は「ファウル、外、(ファウルは)足だと思います。直接フリーキックで、DOGSOでレッドカード」と話した。また、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は「レッドカード、外、(ファウルは)ホールディングかなと思う」と、どの接触を最終的な反則と判断するかは別にしても、判定に対する意見は一致した。
家本氏は「レフェリーのポジションがどうだったのかという点で、中に角度を取りにいった。結果的に鈴木選手が中にいくので、そのへんの兼ね合いがたまたま重なってしまった。(栃木の)GKがボールを持っているときにボールを見ている。そこで前線の動きが消えているから、リアクションが遅くなって離されてしまう。なんとか角度をつけようと副審サイドに行ったのはレフェリーの努力。副審からは(ペナルティーエリア)の中、外は見えなかったのかなと。そんなに副審の方が遅れているとは見えないので、でも現場でこれは厳しいかな。中で最終的な反則があったと認識してしまうことは十分にある」と、経験から話した。
主審と副審の役割も関係
深野氏は「副審もどの時点でファウルかを認識しないといけない。オフサイドはないので、ファウルにしかフォーカスはない。主審は遅れているだろう、GKもいる、と考えれば、自分でファウルを判断して、中と外も判断しなければいけないのが副審」と、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が導入されていないJ2における副審の役割の大きさにも言及した。
また、家本氏は「興味深いのは、レフェリーはすぐにPKかどうかを判断しない。レッドカードは判断するけど。副審はコーナーフラッグのところにとどまる。そして、少し戻る。副審は中か外か分からなかった、もしくは外だと認識している可能性がある。最終的にレフェリーがPK、私が判断しますとおそらく言った結果、副審がPKの時のポジションに入ってくる。リードは主審、最終的な意思決定をしたように見える。最終決断までに間があるので、中か外かを整理しながら、あるいは副審とコミュニケーションを取りながら、悩みながら意思決定をしたのが見える。現場では難しい判断だったのが、ここからは見て取れる」と、映像からの分析を話した。
先日の女子ワールドカップ(W杯)にも国際サッカー連盟(FIFA)のアポイントで訪れていたという深野氏は「むしろ、W杯ではこういうトレーニングしかしなかった。中と外の判断ばかりをして、いつも備えていた。日本でもこういうトレーニングをしなければいけないだろうと思っている」とコメント。そして、トレーニングでの審判のパフォーマンスもチェックすると話すが、「W杯にくるレフェリーはそのレベルに達しているので、そこまで落とすかどうかの判断はしないけど、毎日このトレーニングをしているので本番でこのシーンが来ても準備できていたと思う。何回もやっていた」と、FIFA主催大会での裏側を話した。
家本氏は「Jリーグを担当するレフェリーが同じようにできるかと言うと、みなさん仕事もしている人もいるし、集まる機会もない。W杯のように協力してくれるチーム、レフェリーが同じように練習させてもらえる環境は日本には皆無。そこが変わってこないとこの問題は解決しない。ボールが出る前のポジショニングからきているので、トレーニングしないと解決しない。それを誰がどうやってと言うところで、環境がない。レフェリーのポジションや意識が変わっていくのは、正直なところ難しいと思う」と、Jリーグのレフェリーを経験してきた部分から話していた。