浦和リンセンへの引っ張り行為「十分に反則」 DOGSO案件に該当…主審のポジショニングは「良くなかった」

浦和のブライアン・リンセン【写真:Getty Images】
浦和のブライアン・リンセン【写真:Getty Images】

J1浦和対京都戦、リンセンが背後から引っ張られた場面への判定に専門家が見解

 スポーツチャンネル「DAZN」の判定検証番組「Jリーグジャッジリプレイ」で、9月15日のJ1第27節、浦和レッズと京都サンガF.C.の試合が取り上げられた。ここでは、浦和FWブライアン・リンセンがペナルティーエリア内で背後から引っ張られた場面が議論され、いわゆる「頑張り損」にならない判定が求められた。

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 後半30分、浦和はMF岩尾憲が最終ラインからロングボールを背後に供給。左サイドから斜めに走り込んだリンセンが完全に抜け出して相手GKク・ソンユンと1対1になった。ペナルティーエリア内まで進出してシュートのタイミングを窺ったところで、最初の段階で背後を取られていたDF福田心之助が追いすがり、リンセンの背後からユニフォームと左腕を掴んで、ぶら下がるようにして全体重をかけた。

 これによってリンセンは左膝をついてしまうほどにバランスを崩した。なかば座り込むようにして右足でなんとかシュートを打ったものの、ク・ソンユンの身体に当たった。跳ね返ったボールにリンセンが反応した瞬間も福田の手はリンセンのユニフォームにかかっていて、押し込もうとしたボールもク・ソンユンが弾いた。清水勇人レフェリーはファウルと判定せず、中村太VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入もなかった。

 ゲスト出演した元日本代表MF福西崇史氏は「僕はPKかなと思います」として「シュートを打ちたくても打てない状況を作られた。それでも打ちにいっていることは、選手として点を取りにいきたいということ。入ったら入ったでいいけど、入らなかったなら遡って、ここで体勢が取れなくなってしまったことを考えたらPKでいいと思う」と話した。そして、判定の流れについて「なんででしょうね。得点のことに関してはVARがある。得点が入るかどうかの状況。いい状況で打てる体勢であるとか、接触が横並びなら分かる。ただ、これは完全にうしろから。VARが入っていいと思う」と、中村VAR介入しなかった判断にも疑問を呈した。

 元国際審判員の深野悦子氏は「私もPKだと思いました」とコメント。「ファウルは両腕で押さえているものと、足の接触もある。どちらとも取れる。ホールディングに本当は程度は関係ないけれども、影響がなかったら取らないというのはあると思うが、これは確実に体勢を崩すような両腕でのアプローチなので、これはファウルだと思う。なおかつボールをコントロールしていて、なおかつシュートを打てる場面。DOGSOでレッドかイエローか」と話す。

 そして深野氏はVARの判断について「考えは2つある。1つはシュートを打てているので利益を得たというのと、もう1つはVARとレフェリーの交信で腕も見えている、足の接触も見えているけどファウルとしないと言われれば介入できない」と話した。

 また、元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏は判定について「僕も深野さんと全く同じ意見」とコメントし、「間違いなくファウルでDOGSOの適用。イエローかどうかで言うと、右足で2回ほど外側から小突くようなものをボールへのチャレンジと見れば、一段階下がってイエロー。ただ、フリーキックはより大きな影響を与えたほうを罰するとなっていることから見ると、足より手のインパクトが強いと思うので、競技規則上で正しいのはDOGSOの三重罰が下がらないもの(レッドカード)というのが判定への印象」と話した。

「選手としては倒れるのが良いとは言えない」“頑張り損”の問題を指摘

 福西氏はこのプレーをボールにチャレンジしているかという点で、「(福田は)チャレンジしようとしているとは思う。(リンセン)選手からしてもブロックするから、そのブロックとチャレンジが一緒になった。そのため、チャレンジしているけどブロックしているから、チャレンジしていないでしょうという距離になった。そのあたりをどちらから見るかで変わる」と、選手目線でコメントしている。

 先日の女子ワールドカップ(W杯)にも国際サッカー連盟(FIFA)のアポイントで訪れていたという深野氏は、この場面について「両方のコンタクトがあった時には、足のほうを取りましょうというのが実は内々ではある。三重罰を避けたいというこちら側の意図、選手をなるべくフィールドに残したいという意図があるので、イエローカードでもいけなくはないかなと思った。ただ、ホールディングでレッドと言われれば、それはOK。両方あるかなと。どちらかであればレフェリーの判断が尊重できる。FIFAの場合は、同時だったら足を見ましょうと実は言っている」と、FIFA主催大会での判定について話した。

 そして、リンセンが倒れたほうが良かったのかという点について家本氏は「関係ない」としたうえで「倒れる、倒れないは軸としては別で結果論。反則があったと言えるかどうかが最初なので、これは十分に反則があった。その結果、選手が素晴らしく頑張ったのはオプション。頑張ったから反則が消えるわけじゃないのは理解すべきだし、レフェリーも理解していると思う。結びつかなかったし、そうでないシーンはあるとはいえ、倒れたかどうかはセカンドオプション」と話す。そして、清水レフェリーが倒れるほどの影響ではなかったと判断したのではないかとした。

 さらに清水レフェリーのポジショニングについて「フィードが出たタイミングのレフェリーのゲームの読みと動き出し、ポジションの取り方がネガティブ。良くなかった。うしろから串刺しで追っているので、何があったのかよく分からない。前線に行くな、という時に走り出して、外側なのか内側なのか、どういうアングルをつけるのかというのとスプリントしていく」と家本氏は話す。

 深野氏も女子W杯での指導を踏まえ「前に速いので、ペナルティーエリア内での判断が遅れるのが致命的。それを避けるために早く走り出そうと。この例だと、うしろでディフェンスが回している時に1on1になっていないので、そこで何も起きないとすると前線の選手を追わないといけないですね、目で。どこにいるかと。その時にまだボールを持っている選手を見ているので、結果的に蹴られて一緒に見るとヨーイドン。きっと選手の状況も掴めていない、遅れている、串刺しになっている、予測もできていないという意味では判定自体も難しい」と、清水レフェリーの問題点を指摘した。

 福西氏は「倒れたほうがファウルを取られると思う。ただ、選手としては倒れるのが良いとは言えない。結果を出さないといけないからシュートを狙うのは当たり前。見ている人も倒れたばかりではサッカーとして面白くない。でも、VARがあるんだから遡ってファウルを取ってくれますよねとなったほうが良い。これでいいですよとなったら、選手は倒れましょう、倒れましょうとなる。それはサッカーにとって良くない」と、頑張り損について指摘。深野氏はVARの介入について「自分が主審だったら、これをどうするのか。これを逃すことでゲームが壊れてしまわないのかということに尽きると思う」と話していた。

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