森保ジャパン、欧州遠征・取材の“裏側” 冨安健洋「トルコ戦事件」に中村敬斗の心遣い…9月シリーズのMVPは?【現地発】

欧州遠征の裏側を紹介【写真:ロイター】
欧州遠征の裏側を紹介【写真:ロイター】

欧州遠征で記者が見た出来事を回顧

 森保一監督率いる日本代表は9月シリーズで強豪ドイツ代表と難敵トルコ代表に2連勝を収めた。ドイツには4-1、トルコには4-2と計8得点で収穫と自信を得た。今回の欧州遠征での“MVP”は誰か。取材の裏側も含めて、欧州遠征であった出来事を振り返る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)

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冨安健洋は1998年11月5日生まれの24歳だ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
冨安健洋は1998年11月5日生まれの24歳だ【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

◆冨安健洋「日韓ワールドカップ(W杯)トルコ戦」事件

 9月11日、トルコ戦前日。冨安の取材の中でトルコとの対戦が日韓W杯以来という話題に。1998年生まれにとっては「知らない」ことで「本大会でやっていたっていうことですか? 見たことないです」という出来事。そのあと「トルコどうこういうより、その時代の人たちはその時代でしか……」と話し出すと、報道陣は膝から崩れていく。だが、冨安が話したことはとてもいい話だった。

「トルコどうこうというより、その時代の人たちはその時代でしか日本代表に参加できないですし、それは僕らも一緒で、サッカー協会としては2050年以内に優勝でしたっけ。2050年以内に優勝って言っていますけど、僕らが50年後、代表でできているわけじゃないので、そういう意味では僕らには僕らの時代、今しかない。そういう意味で次のW杯が本当にいい状態。いいタイミングだと思うので、それに向けてチームとしても個人としてもやっていきたいなというふうに思います」

 トルコ戦前に報道陣とのジェネレーションギャップを感じたかと思えば、しっかりとまとめてなぜ今の戦いに目を向けるのかという意見を述べた冨安はさすがだった。

トルコ戦で2ゴール決めた中村敬斗【写真:ロイター】
トルコ戦で2ゴール決めた中村敬斗【写真:ロイター】

◆中村敬斗ゴラッソ連発

 ドイツ・ヴォルフスブルクでの練習。最後に自主練でシュート練習を行うと、中村敬は2本連続でスーパーゴールを決めた。その後先発出場を果たしたトルコ戦で2得点する中村敬は、データ分析会社「オプタ」によると、国際Aマッチ通算3試合での枠内シュート決定率が100%(3ゴール/枠内3本、総シュート6本)。練習からもかなり質のいいシュートを決めていた。

 そんな中村敬は今夏からスタッド・ランスでプレー。伊東純也がいいお兄ちゃん的存在だという。

「すごく仲良く話しして1回ご飯も連れて行ってもらいました。でも試合前にも純也くんの奥さん……公表しています?大丈夫ですか? 良かった。奥さんにおにぎりをもらったりとかしてサポートしてもらえているんで、本当に感謝、ありがたい限りですよね」と、好青年の配慮が垣間見えた瞬間だった。

◆今夏の移籍叶わなかった組の誓い

 今夏、移籍を狙いながらもステップアップが叶わなかった選手も日本代表に合流した。菅原由勢は「絶対聞かれると思った!」と、さすがの明るさを持って「移籍に関しては、ね。なんて言ったらいいんですかね。結局移籍できなかったのは全部自分の実力次第なので、逆にそこは認めなきゃいけない。しっかり今年1年なのか、半年なのか、頑張らなきゃいけない。まぁ、世の中難しいですね」と、次を見据えた。

 またシュミット・ダニエルはチームのベルギー1部シント=トロイデンには鈴木彩艶も加入して厳しい状況が続く。現実を見つめたうえで「チームに戻ってみないとわからないけど、試合に出してもらえるかわからない状況。そういう中でも腐らずにちゃんとやっていれば見ている人は見ていると思う。1年後に報われるように頑張りたい」と言葉を振り絞った。

 田中碧も「こういう時期で評価の受けるタイミングだと思うので、決して昨シーズンに関して満足のいくものではなかったですけど、自分の良さも出しながら得点やアシストという意味では1ゴール3アシストくらいしかしていない。それでも評価してくれる監督やクラブがいることについては、やっていくことに関しては間違っていないなと思いつつ。だからこそ自分自身でもわかっているし。これからより今までやってきたことプラス、数字を出せれば上でやれるチャンスは増えると思う」とステップアップは決して諦めていない。

 さまざまな状況の選手がいるなかで、日本代表が強豪と対戦することで世界的な評価が上昇する可能性もある。今回はドイツを破ったことでまた注目度が高まった。アピールに成功した選手もいる。高いモチベーションで臨めることは森保ジャパンにとってもプラスになる。

◆9月遠征のMVPは…

 今回の欧州遠征で、言葉、プレーともに目立っていたのは冨安だった。プレーは言わずもがな、イングランド1部アーセナルで戦う葛藤、苦悩、決意、覚悟が言葉の節々に感じられた。昨季を振り返るうえでは移籍を考えたことも示唆した。

「難しい1年でしたし、1年シーズンはW杯も含めて、多分一番今までのサッカー人生でタフな1年であったのは間違いない、そこからどう戻ってくるかというところは、怪我もそうですし、(アーセナルは)サッカーの面はかなり本当に要求が高いので、そのなかで、もちろん自信を失う時期もあった。そこは正直いろんなことを考えましたし、でももうこのシーズン、アーセナルでやるっていうことは決まった。サウジはまだ(移籍市場)開いていますけど(笑)。しっかりとその欲求が高い中で、その要求に応えられるようにやるだけ」

 ドイツ戦の前には板倉滉とコンビを組んだ場合のイメージを問うと、力強い言葉が返ってきた。

「もう本当前々から、ゆくゆくは僕と滉くんで組んでやんないといけないという話をお互いしていましたし、その中で、なかなか僕の怪我で組むタイミングがなかった。いい意味で遠慮せず、高いリクエストをお互いし合いながら、それができると思っていますし、お互いに妥協をせずに要求し合って、やることができれば、もう1段階も2段階上のレベルに、それはディフェンスだけじゃなくチーム全体に上がれると思う。お互いに遠慮せず引き出しあって、やっていけたらいい」

 その言葉通り、ドイツ戦では日本代表の最終ラインとして1段階上のレベルを見せつけた。話す内容、プレーすべてにおいて目が離せなかった選手は冨安だった。

(FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi)

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