次世代の“守備リーダー”冨安健洋の復活 挫折の日々から這い上がった訳「W杯まで3年あるけど全部勝てればいい」【現地発】
2試合とも出場した冨安は好パフォーマンスを発揮
森保一監督率いる日本代表は9月12日、ベルギー・ゲンクでトルコ代表戦を戦い4-2で勝利を収めた。強豪ドイツ代表戦(4-1)から中2日。欧州遠征で2連勝と明らかなレベルアップを示した。なかでもカタール・ワールドカップ(W杯)以来の招集となったDF冨安健洋(アーセナル)は2試合に出場して、存在感を発揮。次世代センターバック(CB)を牽引する力強さを見せている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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「僕らにとっては、これが当たり前になるべき。むしろ今日の試合が4-2ですっきり勝ったわけではない。その感覚は僕だけじゃなくほかの選手が持っているのも間違いなく、それはいい状況。勝てばいいわけじゃなく、より上で目指しているからこそ。4-0や5-0で勝てれば良かったし、その力が今はある。高いところを目指したい。勝ち癖をつけるところ、W杯まで3年あるけど全部勝てればいい。そこは代表に来た時に頭のスイッチを変えるべき。選手によってチームの中、リーグの中での立ち位置も変わる。主導権を握るのか、我慢しながら勝ち点を拾うチームなのかも違う。いろいろな経験してまだ代表に来て、W杯に向けて準備できればいい。僕も含め、試合に絡んでいく必要がある」
トルコとの一戦後、冨安はこう話した。日本代表を背負っていく覚悟、今後の日本代表が世界からどう見られるかを意識した1つ上に進んだ発言だ。
トルコ戦では途中出場。DF町田浩樹の負傷もあり後半34分からピッチに立ったが、チームは押し込まれ気味の時だった。ピンチを何度も跳ね返して、最終ラインは安定。「さすが」という働きぶりだった。
今回はドイツ戦でDF板倉滉とCBコンビを組んで、世界レベルを示した。ドイツ戦では守備で相手に数的有利を作られていたものの、上手くスライドして連係を図り食い止めた。失点シーンは完全に振り切られてしまったが、相手の右サイドMFレロイ・サネが脅威になりつつも、ボランチに入ったMF遠藤航、MF守田英正が最終ラインの穴を埋めて対応。かなりコンパクトな守備で、ハンジ・フリック監督も「打ち破る手立てがない」とお手上げだった。
フィードでもチャンスを演出した冨安。前半に2本のパスが起点となり2得点を演出した。マン・オブ・ザ・マッチ級の活躍を見せた冨安は大きな手応えを感じでいた。
「自分自身を納得させる必要があったというか、自分に自信を持たせてあげることが必要だった。そういう意味では自信を取り戻すっていうきっかけになったかな、というふうに思います。でもアーセナルとサッカーも違うので、それがそのままアーセナルでやれるのかと言われたらまたそれは話が違う。アーセナルでも、しっかりとメンバー取れるようにやっていく必要がある」
所属チームのアーセナルではなかなか定位置を掴み切れていない。このパフォーマンスであれば、なぜ?と言いたいところだが、今回の代表戦2試合でのプレーぶりで大きな自信を得た。大怪我に苦しみ、カタールW杯でも控えに回り、決勝トーナメント1回戦のクロアチア戦では先発出場を果たすも納得のいかないパフォーマンスで悔しさを爆発させた。
「本当にアーセナルで要求の高い日々を送っているので、まだ完全に自信を取り戻すとかって言われたら、100%はいって言えるわけでもないですし。そういう意味では本当にアーセナルでもう自分はしっかりとやれているっていうふうに自信を持つことができればいい」
日本代表での悔しさは晴らすような活躍をした。だが、所属クラブではまだ。負傷を繰り返したことで「もちろん自信を失う時期もありました」と話し、クラブでの立ち位置が危うくなったことで「そこは正直いろんなことを考えました」と移籍を視野に入れていたことを明かす。
W杯、負傷の挫折からここまで這い上がり、日本代表の欠かせない柱へと復帰した。冨安、本当におかえりなさい。心からそう言える2試合となった。