日本代表はW杯以降も「賢明な改革」 英記者が実感、森保ジャパンが“豊富なタレント”に与えた成長と進化【コラム】
【識者の目】ドイツとの再戦で4-1と内容ともに相手を圧倒
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は現地時間9月9日に行われた国際親善試合で、ドイツ代表(同15位)と対戦し4-1の勝利を収めた。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、昨年のカタール大会でワールドカップ(W杯)を7大会連続で現地取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、欧州相手に証明した日本の「10年の進化」について見解を述べている。
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日本代表が最後にアウェーでヨーロッパの国に勝ってからおよそ10年の月日が流れていた。彼らがハンジ・フリック監督の下で低迷するドイツに完勝したことが証明したように、この10年間で多くの変化が起きていた。
これほど自信と活気に満ちた日本代表チームは過去にほとんど例がないと言っていいだろう。ヴォルフスブルクでの戦いで、日本はこの12か月間で得た自信をあらゆる面で発揮していた。
日本が見せたパフォーマンスは、昨年11月にドーハのハリーファ国際スタジアムでフリック監督のチームから勝ち点3を獲得したカタール・ワールドカップ(W杯)の試合とは全く毛色の異なるものだった。
最も大きな違いは、日本は自己主張が強く、受け身になることがなく、最終的には完全に相手を圧倒していたという点だ。4-1というスコアは内容以上のものだったかもしれないが、勝利は当然の結果だった。
ドイツが危機的状況だということは公然の事実であり、これがフリック監督にとってドイツ代表での最後の指揮となる可能性も十分にある。ドイツ人指揮官はこの10か月でわずか2勝しか挙げられていなかった。
その一方で、サムライブルーの指揮官はW杯以降も着実に賢明な改革を進め、チームを向上させてきた。
ベテラン勢が抜けてなお、新戦力が進化を続ける森保ジャパン
森保監督が吉田麻也や長友佑都、酒井宏樹といった選手を必要に応じて呼び戻す可能性を示唆していたとしても、もはや彼らが戻ってくる余地はなさそうだ。
特に板倉滉と菅原由勢の抜群のパフォーマンスがあったように、冨安健洋も含めた最終ラインの存在は日本代表が強固な基盤の上に成り立っていることを物語っている。
スピードのあるトランジション(攻守の切り替え)や、ボールを素早く正確に前に運ぶ力によって日本は何度もドイツの守備をこじ開けていた。そこには才能ももちろん、自信も必要だ。森保ジャパンにはそれが十分にあった。
それらの多くはW杯で得たものだろう。だが、3月のウルグアイ代表戦(1-1)や6月のエルサルバドル代表戦(6-0)、ペルー代表戦(4-1)の勝利などで磨かれた部分でもある。
以前にはなかった決意や迫力がこのチームにはある。11月から始まるW杯アジア予選や来年1月のアジアカップに向けて順調な歩みを進めている。
一方のドイツは自国ファンからブーイングを受け、開催国として迎える来年のEURO(欧州選手権)に向けた準備はズタボロな状況だ。国際的な焦点はドイツが抱える問題に向けられるだろう。
4度も世界王者になっている国がホームで1-4と敗れる、ましてそれがアジアのチーム相手に敗れるなんてそう何度も起こることではないだろう。しかし、その問題によって日本のパフォーマンスの質が覆い隠されることがあってはならない。
今回の結果は日本が単にアジアを支配するだけでなく、真のワールドクラスの国へと変化を遂げている事実を明らかに示していた。
W杯以降、森保監督は豊富なタレントたちをさまざまに組み合わせ、強力なミックス・ジェネレーションを作り出し、どんな相手にも打ち勝つ効率的な方法を見つけ、チームを誰からも恐れられる存在へと変えていく能力があることを証明し続けている。
マイケル・チャーチ
アジアサッカーを幅広くカバーし、25年以上ジャーナリストとして活動する英国人ジャーナリスト。アジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ6大会連続で取材。日本代表や日本サッカー界の動向も長年追っている。現在はコラムニストとしても執筆。