日本代表はなぜドイツに“4-1完勝”の戦いができた? W杯から10か月での変化…第2次森保政権の上積みを「分析」【現地発】
ドイツ相手に4発快勝
森保一監督率いる日本代表は、現地時間9月9日(日本時間10日未明)に敵地ヴォルフスブルクで行われた強豪ドイツ代表との国際親善試合で、4-1と完勝した。MF伊東純也、FW上田綺世、FW浅野拓磨、MF田中碧がそれぞれゴール。守備では国際Aマッチで初めてツーセンターバック(CB)を組んだDF冨安健洋とDF板倉滉の東京五輪世代コンビは抜群の安定感を発揮した。昨年のカタール・ワールドカップ(W杯)では2-1で勝利したものの、前半は一方的な戦いを強いられていた日本が約10か月での成長を見せて掴んだ白星。強敵相手になぜここまでの戦いができたのか分析する。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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完全アウェーの敵地で日本がスタジアムを黙らせた。前半11分、冨安のフィードで右サイドへ展開。DF菅原由勢のクロスから伊東が決めて先制した。一時追い付かれるも、前半22分今度は冨安の左足のフィードから伊東へ。さらに縦パスで菅原のクロスから今後は上田が決めた。終盤には途中出場のMF久保建英がボールを奪って一気にカウンター。浅野が仕留め、さらに久保のアシストから田中がトドメを刺した。
今回のドイツとW杯以来の再戦で掲げていたテーマはボールの保持率を少しでも上げること。W杯では前半に一方的な展開に持ち込まれひたすら耐えるという時間帯が長かった。そのため、今回は日本が攻める回数を増やすこと、耐え凌いでのカウンターで数少ないチャンスをものにする、というだけではなく、W杯後から今年に入っての3月、6月の4試合で積み上げてきたベースを強豪相手に発揮するということだった。
そこで、森保監督はドイツ相手に通用した3バックではなく、真っ向勝負の4バックを起用。最終ラインには第2次森保政権の“秘蔵っ子”とも言える菅原を右サイドバック(SB)に据えて、CBを冨安と板倉の次世代コンビを組ませた。左SBは高さもある伊藤洋輝。東京五輪世代の最終ラインで若返りを図った。
ドイツは可変の4バックでスタートするかと見られていたものの、6月では3バックを試していたため、森保ジャパンとしても臨機応変さが求められた。守備では相手に数的有利を作られていたものの、上手くスライドして連係を図り食い止めた。失点シーンは完全に振り切られてしまったが、相手の右サイドMFレロイ・サネが脅威になりつつも、ボランチに入ったMF遠藤航、MF守田英正が最終ラインの穴を埋めて対応。かなりコンパクトな守備で、ハンジ・フリック監督も「打ち破る手立てがない」とお手上げだった。
「相手がどういうサッカーをするという情報は入っていても、試合に入ってみないと分からないところもある。後ろはミスマッチというか、4対5をずっと作られている状態だけど後ろを上げるのではなく、4枚のまま横のスライドを早くして守ることができたと思う。ああいうディフェンスと中盤の間を使う相手にコンパクトにできたし、間を通されても帰陣が早かった。全体にいい戦いでポジティブ、次につながると思うし、こういう戦いをドイツ相手に試せたのが良かった」(板倉)
冨安がCBに復活で見せた圧倒的な違い
森保監督は会見で「いい守備からいい攻撃」「守から攻、攻から守の切り替え」の言葉を連発。まさにいい守備から攻撃へつなげた。
何より大きかったのが冨安の復活だ。前半の2得点はいずれも冨安のフィードから。左右で蹴れる高精度なパスで1トップに入った上田も生きた。局面での踏ん張りや打開、いわゆる1対1で勝つ、1対1で負けないことも徹底していたが、冨安と板倉の安定感が攻撃陣を躍動させたといってもいいだろう。
後半からは戦い方を変えて3バックに変更。これも久保は「勝っているからカウンター狙いで引くというヨーロッパのトップレベルのクラブがやるような、戦術としての引き」と、勝利にこだわったからこその狙いで、日本のベースを引き上げることができたと振り返った。
途中、スタジアムはドイツがボールを持てばブーイングが起きるなど日本を後押しするような異様な雰囲気に包まれた。終盤には、アウェーの地が静まり返り「ニッポンコール」が響き渡った。見ていたすべての人に印象を残すような戦いができたのは森保ジャパンが次の基準を見据えたから。W杯で得た課題に向き合ってきた約10か月で、“アンサー”を示すことができた。