「勝利するために必要なものを」 古巣・鹿島復帰の柴崎岳がもたらす化学反応【コラム】

7シーズンぶりに鹿島へ帰ってきた柴崎岳【写真:徳原隆元】
7シーズンぶりに鹿島へ帰ってきた柴崎岳【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】本来のスタイルを取り戻しつつある鹿島のスパイスに

 スペインでのプレー経験を経て、柴崎岳が7シーズンぶりに鹿島アントラーズへの復帰を果たした。青森山田高校から入団した際に付けた背番号20番を再び背負ってプレーするボランチは、鹿島にどういった化学反応を及ぼすのか。

 9月4日からチームに合流している柴崎は、現在のコンディションについて「個人的にトレーニングはずっと行っていた」ため問題はないと明言。「グループ練習を経てチームに馴染んでいるところ」という段階だ。

 試合出場に関しては「監督の判断になるが、日々の練習の中で自分の持っているものを表現して、早くチームの力になりたい」と意気込みを語った。

 自身の役割について質問されると、「シーズン初めから積み重ねてきたものがあり、それを急に変える必要はないし、変えるつもりもないが、より勝利するために必要なものを付け加えられるような役割ができればと思う」と話した。

 シーズン開幕当初は不調だった鹿島だが、試合を重ねていくうちにチームとしてのまとまりを見せ始め、選手たちの勝利に対する思いも貪欲になってきている。無骨だがしぶとく勝利する、本来の鹿島のスタイルがピッチで表現されてきている。

 そうしたなか、現在のチーム構成を見てみると、柴崎がプレーする中盤はなかなかの充実度を誇る。素早い出足から相手の攻撃の芽を摘むプレーで威力を発揮する樋口雄太と佐野海舟は、安定感のある戦いをするために必要な選手だ。柴崎とプレースタイルが近いディエゴ・ピトゥカとなると、もはやチームにとって欠かすことのできない存在となっている。

 柴崎といえどもピッチでの輝きを見せる前に、まずはレギュラーポジションを賭けた戦いを勝ち抜かなければならない。9月8日の加入会見では、これまでにないプラスアルファのプレーでチームに貢献したいと話していたが、彼の特徴は精度の高いパスによるゲームメイクだ。

 同い年の柴崎とディエゴ・ピトゥカのパスプレーを中心としたゲームメイクを比較した場合、局地戦や密集地帯での打開では背番号が1つ大きい21番のブラジル人選手のほうが優れているように見えるが、スペイン帰りの日本人プレーヤーは広い視野でピッチ全体に影響を及ぼし、よりダイナミックな攻撃が期待できる。

 心機一転となった今、全盛期に近い状態のプレーを見せられれば、チームへの貢献は大きなものになり、鹿島のさらなる躍進につながることだろう。

 そして、柴崎は言った。

「海外でプレーすることによってピッチ内外で人間として、選手としても多くのことを経験し、今ここにいる。それを具体的に何かということは説明しづらいので、結果で表すしかない」

 多くの経験を積んだ自分が鹿島にどんな形で貢献できるのか。その決意を示している言葉だ。

 柴崎が鹿島でプレーする意味とは何か。それはもうすぐピッチで明らかになる。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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