ルヴァン杯・前哨戦は福岡に軍配も…失点で激しく感情露わ FC東京は攻撃陣の奮起に期待【コラム】
J1第26節は福岡が2-1で勝利、続くルヴァン杯でも両チームは対戦予定
J1リーグ第26節FC東京対アビスパ福岡の一戦は後半41分、福岡はコーナーキックから、FC東京の若きストライカー熊田直紀にヘッドでゴールを割られてしまう。この時点でのスコアは2-1。まだ福岡がリードしていた。
しかし、ここで失点を許したDF奈良竜樹は、その悔しさを激しく露わにする。あとからその場面の写真を確かめてみると、一緒に写っていたゴールライン際にいた相手選手のアダイウトンが驚いた表情を作るほど、奈良は激しく感情を表していた。
この失点がよほど悔しかったのか、2-1と勝利を収めたにもかかわらず試合終了のホイッスルを聞き、仲間と握手を交わす場面でも、奈良の表情はどこか冴えなかった。
その思いはきっとこうだろう。DFの要として激しい闘志を全面に出して戦い勝利したものの、終了間際の失点によって完璧に試合を作り上げることができなかった。その完璧な勝利に対する妥協を許さない決意の末の発露だったと思われる。
この試合は、キックオフからわずか2分でスコアが動くことになる。試合開始から攻守に渡って積極的な動きを見せる福岡。対してFC東京はホームでの優位性から相手を侮っていたわけではないだろうが、序盤は様子を見るようにチーム全体の動きが淡泊だった。
そこを突いて福岡がゴールをマークする。早々に先制点を奪ったアウェーチームは前半11分にも追加点。2-0とリードを広げ試合の主導権を握る。
福岡はその後も小気味よいパス交換からチャンスを作っていった。さらに、ゴール中央でのパス交換でFC東京の守備を崩せないと見ると、外側からミドルシュートを放つなどメリハリのある攻撃を展開した。
守備面でもFC東京のFWを自陣近くではマンマークの対応で動きを封じ、ときに5バックとなる布陣で失点を許さない。特に奈良、ドウグラス・グローリは相手に身体をこれでもかと密着させるタイトなマークで、FC東京に付け入る隙を見せなかった。
それだけに試合終盤の失点は、完璧に遂行していたミッションの傷となり、奈良は心から喜びを表現できなかったのだろう。
ルヴァン杯準々決勝でも対戦する両チームの攻防に注目
この福岡が思い描いていた通りにゲームを進め、FC東京が問題点を突き付けられた対戦は、今週に行われるルヴァンカップ(杯)準々決勝の指標となることだろう。福岡は堅い守備を軸にペースを握ってチャンスを作る、まさにこのリーグ戦で見せた戦い方が、勝利に向けてベストの方法と言えるだろう。
対してFC東京は攻撃陣の奮起が望まれる。確かにフィジカルを武器としたマンマークを受けると、自在にプレーするのは難しい。そのため単独での局面打開を図るよりも、攻撃陣で連係して突破口を開くアイデアがほしいところだ。
同一カード3連戦の対決ではゲームを重ねていくうちに相手の手の内も分かっていき、それをどう攻略していくかの駆け引きが見どころとなる。
リーグ戦での戦いが、続くルヴァン杯の勝敗と内容にどう影響するのか。両チームが見せるピッチ内外での攻防が楽しみだ。
徳原隆元
とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。