本懐を遂げた山形の“山の神” 昇格の立役者GK山岸がまたも大仕事
意地と誇りが男を突き動かす
「山の神」がいる。正月に誕生する箱根駅伝の名ランナーではない。ただ、その名が似合いの男がJ2山形のゴール前にはいた。
山形は、7日のJ1昇格プレーオフ決勝でJ2リーグ3位の千葉に1-0で勝利した。完封勝利に貢献した元日本代表GK山岸範宏は、クラブの4年ぶりのJ1昇格を告げるホイッスルを聞くと、ピッチに跪き、両手の拳を天に突き上げた。
試合後、山岸は満面の笑みでこう言った。
「うれしさと、安堵(あんど)感、両方入り交じったのが率直な感想です。山の神? 僕、神じゃないです」
モンテディオのサポーターは、今年6月に浦和から期限付き移籍でやってきた守護神を「山の神」と呼ぶ。この日も終盤戦にその名にふさわしい素晴らしいセーブを連発した。
1-0で迎えた後半44分にMF谷澤の危険な突破を身をていして防ぐと、アディショナルタイムにもビッグセーブを見せた。FW森本のドリブル突破に飛び出し、一時ゴールを空ける危機的状況を迎えたが、森本からパスを受けたFWケンペスが放った反転シュートを好セーブ。ドローでもJ1昇格の決まった千葉の猛攻を防いだ。
守備だけではない。11月30日の昇格プレーオフ準決勝磐田戦後半アディショナルタイムには劇的なヘディングシュートを沈め、山形をこの舞台へと導いた。大舞台で攻守において神懸かったプレーを見せ続けた。
この勝利で12年の大分に続く、J2リーグ6位のクラブが下克上を果たした。その昇格の立役者となった殊勲の男は、控えめに胸を張った。
「僕は浦和からモンテディオ山形に拾ってもらった。自分のキャリアを生き返らせてもらえたきっかけをいただいたクラブにまだまだ微力ながら恩返しができたのかな。ただ自分の中ではこれが最高点でも終着点でもない。大事なのはこの昇格という結果です」
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