久保建英は不動、ソシエダのベスト布陣は? 心許ない戦力、引退のD・シルバ後釜は未知数…監督の手腕に期待【現地発】
徐々に調子を上げた久保、開幕戦・ジローナ戦に右ウイングで先発してゴール
レアル・ソシエダは8月12日、ホームにジローナを迎えて今季のリーガ・エスパニョーラをスタートした。4-3-3の右ウイングで先発出場した久保建英が開始早々、鮮やかに先制点を記録するも、開幕戦を勝利で飾ることはできなかった。
この日のスタメンはGKアレックス・レミーロ、DFアマリ・トラオレ、イゴール・スベルディア、ロバン・ル・ノルマン、アイエン・ムニョス、MFブライス・メンデス、マルティン・スビメンディ、ベニャト・トゥリエンテス、FW久保、カルロス・フェルナンデス、ミケル・オヤルサバル。新戦力は1人のみで、アリッツ・エルストンド、ミケル・メリーノ、アンドレ・シルバが負傷欠場したが、実際に今季のベストイレブンはどのようなメンバーとなるのか。
チームは6月の代表戦に参加した久保やル・ノルマン、スビメンディ、ミケル・メリーノ、トラオレ、ジョン・パチェコ、アンドレ・バレネチェアを欠くなか、7月10日に今夏のプレシーズンをスタート。4-3-3をベースに戦ったテストマッチ5試合の成績は2勝1分2敗。オサスナ(0-1)、スポルティング(0-3)に2連敗したあと、レバークーゼン(1-0)に勝利、メキシコ・アメリカツアーでアトレティコ・マドリード(0-0)と引き分け、ベティス(1-0)に勝利して締めくくった。
1週間遅れで合流した久保は2戦目から参戦し、4試合中2試合に先発出場。イマノル・アルグアシル監督は右ウイングでモハメド=アリ・チョーと交互に起用したほか、前十字靭帯断裂の大怪我を負い引退を表明したダビド・シルバの穴を埋めるため、右インサイドハーフでもテストした。得点はなかったものの、徐々に調子を上げていき、最後のベティス戦はスペイン各紙に大絶賛を受けるほどのパフォーマンスだった。
昨季、長期離脱のオヤルサバル不在を考慮し、トップ下にシルバを配置した中盤ダイヤモンドの4-4-2でシーズンをスタートしたアルグアシル監督だったが、シルバを失った今季は開幕から4-3-3で臨むことはプレシーズンの流れからも明らかであった。
そのため現地メディアでは、前線3枚のポジションを久保、オヤルサバル、チョー、カルロス・フェルナンデス、バレネチェア、ロベルト・ナバーロ、そして昨年9月の前十字靭帯断裂から回復したウマル・サディク、負傷中の新戦力アンドレ・シルバの8人で争うこと、そして特にサイドのポジション争いが激化することを、ラ・リーガ開幕直前に強調していた。
現地メディアもソシエダの選手層の薄さを懸念、D・シルバの代役は物足りないか
久保が主戦場とする右ウイングでは、プレシーズンで素晴らしい動きを見せたチョーが最大のライバルに挙げられた。また、ユーティリティープレーヤーであるナバーロも同ポジションでプレーする可能性があると見られている。とはいえ、昨季チームで2番目に多くゴールを挙げ、攻撃面を支えた実績、そしてプレシーズンから開幕戦に至るまでの存在感を考慮した場合、久保が現時点でレギュラーの座を奪われることはなさそうだ。
今夏、久保はナポリやサウジアラビアなどのクラブからの魅力的なオファーをすべて断っている。なかでもネイマール加入が決定したアル・ヒラルから提示された年俸は、現在の8~9倍とも言われる手取り1600万ユーロ(約25億6000万円)という莫大なものだったという。
久保は開幕戦後、「その件は代理人がコントロールしている。少し話を聞いていたのは事実だけど、僕の考えは明らかだった。これまで4年続けて夏にチーム探しをしていたが、今夏は将来が決まっていたので落ち着いていたよ」と移籍に関してまったく興味がないことを口にしていた。
今季のソシエダは10季ぶりにUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に臨むという新しいミッションに挑むにあたり、現地メディアに選手層の薄さを懸念されている。
その理由は今夏、3シーズンにわたってチームの中心選手だったシルバが引退し、昨季のチーム得点王アレクサンドル・セルロート、アシエル・イジャラメンディ、アンデル・ゲバラ、アンドニ・ゴロサベル、アンドニ・スビアウレが退団したにもかかわらず、これまでマリ代表DFトラオレとポルトガル代表FWアンドレ・シルバしか獲得していないためだ。
クラブは現在、中盤の補強としてディナモ・モスクワのロシア代表MFアルセン・ザハリャン獲得に動いており、合意間近とも報じられている。トップ下やインサイドハーフでプレーでき、若干20歳ながらすでにロシアリーグのスター選手の1人となっているが、シルバの代役と考えた場合、非常に未知数であり、おそらく物足りなさがあるのは否めないだろう。
サディクの復帰は朗報、今季ベスト布陣はジローナ戦のスタメンが大半か
一方、昨季クラブ史上最高額の移籍金で加入したサディクが昨年9月の膝重傷から回復し、ジローナ戦で約11か月ぶりに戦列復帰したことは朗報である。昨季3試合しか稼働できなかったため、実質的には新戦力に近い立場だ。また、新たにMFジョン・オラサガスティがトップチームに昇格している。
今季のベストメンバーはジローナ戦のスタメンが多くを占め、大きく変わることはなさそうだ。GKとDFは同じままで、中盤でトゥリエンテスに代わってミケル・メリーノ、前線ではカルロス・フェルナンデスに代わり、サディクもしくはアンドレ・シルバが入る布陣がベストとの見方が強くなっている。また、シルバの代わりは昨季終盤、システム変更やオヤルサバルのスタメン復帰、久保のハイパフォーマンスの影響を受けたことでポジションを失ったブライス・メンデスが務めることになりそうだ。
しかしいずれにしても、戦力の上積みがあまり感じられない現有戦力のままで今季を戦うのは心許ない。昨季のUEFAヨーロッパリーグ(EL)では、グループステージで対戦した強豪マンチェスター・ユナイテッド以外の2チームは格下と言える相手だったため、ターンオーバーで主力選手を休ませることができたが、今季挑むCLのレベルではそうはいかないだろう。
また、アルグアシル監督は昨季、控え選手たちにあまりチャンスを与えずに特定の選手たちを酷使し、結果は出たもののチームは摩耗し切っていた。
今月8月31日に実施されるCLグループステージの組み合わせ抽選会でソシエダは、ポット4に入ることが濃厚で3チームとも強敵となる可能性が大いにあり得る。そのためアルグアシル監督が今季、どのようにチームをマネジメントしながらラ・リーガ、CL、国王杯の3大会に臨むのか、その手腕に注目が集まる。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。