J1リーグ夏の移籍、ブレイク期待の「新天地組」 広島新ストライカーが大飛躍の予感…覚醒候補の筆頭は?【コラム】
夏の移籍期間で新天地へ…ブレイクが期待されるタレントを紹介
Jリーグの夏の移籍期間(第2登録期間)が8月18日に締め切られた。優勝へのプラスアルファ、残留のための救世主、あるいは来季を見据えた戦略など、その思惑は置かれた状況によって異なるものの、現状に満足していないという点では同じだろう。各チームはさらなる進化を目指して、戦力強化を進めている。
J2からのステップアップや出番を求める移籍のみならず、今夏の移籍市場では主力クラスの引き抜きも相次いだ。大きな期待を背負う彼らのなかから、新天地でのブレイクが期待されるタレントを紹介していこう。
1人目に挙げたいのが、セレッソ大阪からサンフレッチェ広島に加わったFW加藤陸次樹だ。広島のアカデミーで育ったストライカーにとっては、心のクラブへの“復帰”となる。
ユース時代はエースとして君臨しながらトップ昇格は叶わず、中央大を経て、2020年にJ2のツエーゲン金沢でプロのキャリアをスタートさせた加藤は、ルーキーイヤーから13得点を挙げるエース級の活躍を見せると、翌年にC大阪へとステップアップ。途中出場が多かったにもかかわらず2年連続でチームのトップスコアラーとなるなど、J1の舞台でも決定力の高さを証明してきた。
今季も2トップへの変更に伴い、5月以降はレギュラーの座を掴んでいただけに、この移籍は驚きを持って受け止められている。
その背景には、広島の深刻な得点力不足があるだろう。FWドウグラス・ヴィエイラが確変した序盤こそ上位争いを演じていたものの、FW満田誠の負傷離脱が痛手となり、第17節からは5試合未勝利で上位争いから一気に後退した。その課題を解消すべく白羽の矢が立ったのが加藤だったのだ。
鋭い裏抜けと、ペナルティーエリア内での落ち着いたフィニッシュワークを備える加藤は、前線からの守備も献身的。ハードワークができる点もハイプレスを求めるミヒャエル・スキッベ監督のスタイルに合致する。
移籍後初戦となった湘南ベルマーレ戦(第22節/0-1)では2トップの一角で起用され不発に終わったものの、続く浦和レッズ戦(2-1)ではシャドーで起用されると、鋭い切り返しから見事な同点ゴールをマークし、チームに7試合ぶりの勝点3をもたらす活躍を見せた。
近年は外国籍ストライカーに頼りがちだった広島だが、高木琢也、久保竜彦、佐藤寿人らが紡いできた日本人ストライカーの系譜を継ぐ存在として大きな期待が集まっている。
元日本代表“10番” MF中島翔哉は、実績面からブレイク筆頭候補
実績で言えば浦和に加入したMF中島翔哉が筆頭だろう。日本代表の10番も背負ったアタッカーは、優勝争いに踏み止まりたい浦和の大きな力となるはずだ。
ヨーロッパで過ごした近年は怪我もあり、出場機会は限られ、目に見える結果も残せていない。それでも単騎突破で敵陣をこじ開けられる能力は、今なお日本で屈指だろう。コンディションさえ高まれば、閉塞感の漂う浦和の攻撃を劇的に変えられるだけの力を備えているのは間違いない。
その浦和から柏レイソルに加わったDF犬飼智也は、低迷するチームを救う存在となるかもしれない。浦和では出番に恵まれなかったが、鹿島アントラーズ時代には2018年のアジア制覇(AFCチャンピオンズリーグ制覇)にも貢献した経験豊富なセンターバックである。
落ち着き払ったライン統率と対人プレーの強さに加え、正確なフィードや持ち上がりで攻撃の起点にもなれる。加入初戦となった京都サンガS.C.戦(第22節/1-0)では完封勝利に貢献するなど守備組織の再建へ早速効果を発揮しており、井原正巳監督も絶大な信頼を寄せている。とりわけ残留争いが佳境を迎えるシーズン終盤に、その経験値の高さがチームの拠りどころとなるだろう。
ほかにも京都からFC東京に籍を移したDF白井康介、広島から名古屋グランパスに移ったMF森島司、その森島に代わって広島の10番を背負うFWマルコス・ジュニオールら、いずれも実績十分の実力者が新しい挑戦をスタートさせている。川崎フロンターレに加入した元フランス代表FWバフェティンビ・ゴミス、横浜F・マリノスが獲得したMFナム・テヒら新たな外国籍選手も重要な戦力となるはずだ。
今季も残り11試合となった。新たに加わった戦力はチームにどのようなプラスの効果をもたらすのか。そのパフォーマンスに注目が集まる。
(原山裕平 / Yuhei Harayama)
原山裕平
はらやま・ゆうへい/1976年生まれ、静岡県出身。編集プロダクションを経て、2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。