“脱イニエスタ”に舵を切った神戸の是非 完敗した横浜FC戦で見えた課題とは?【コラム】
0-2で敗れた横浜FC戦は「イニエスタの力が必要」な試合だった
J1リーグで首位に立つヴィッセル神戸は、8月6日に行われたJ1第22節の横浜FC戦で下位に低迷する相手に0-2の完敗を喫した。ボール支配率は実に74%を記録し、シュート数でも10対6と差をつけたが、1点が遠かった。
相手の順位だけではなく、こうした試合内容だったからこそ、神戸のファン・サポーターとしては、余計に勝ってほしいところだっただろう。今夏、神戸は元スペイン代表MFアンドレス・イニエスタとの契約を双方合意のもとに解除した。5月の第14節柏レイソル戦(1-1)後にMF齊藤未月は「彼の力が必要になる時も必ず来ると思う」とコメントをしていたが、この試合はまさにそんな試合だった。
神戸はボールを保持して相手を押し込みながら、横浜FCの守備ブロックを崩せなかった。高いボールテクニックに加えて、相手の嫌がるポジショニングを連続して取り続けられるイニエスタの真骨頂が発揮されるような試合だったのだ。逆にこのゲームでしっかり勝ち切れば、チームにとっても「正しい方向に進めている」と、大きな自信を得られたはずだったが、結果は相手の狙いにハマった完敗と言って差し支えないだろう。
他会場の結果で首位の座を守れた神戸だが、たかが一敗とは言いにくい。この日の横浜FCのように守備に徹してくる相手が、この先のリーグ戦で出てこないとも言い切れない。相手がそうした戦い方で挑んできた時に、どう対応するのか。
「結果は返ってこないので、気持ちを切り替えてやるだけです」と、試合後の会見で切り出した吉田孝行監督は「試合に関しては相手にしっかり守られて、そこをこじ開けられなかった。一瞬の隙を突かれて2点目を入れられた。いろんな敗因の要素はあると思いますが、自分たちは下を向かずにしっかり修正して、次に向くだけだと思います」と試合を総括した。
「そんなにプレッシャーが来ないから、うしろでボールを持てている。そこで相手のテンポに合わせるのは良くない。しっかりボールを動かしながら、アタッキングサードでの仕掛け、強引な仕掛けからセットプレーも得られる。ゴール前、ラスト3分の1の迫力が、もっともっと相手が嫌がることができれば、うしろは持てるわけですから。前に出すこと。バックパス、バックパスばかりにならないようにしないといけないと感じました」
吉田監督はポゼッション率にはこだわらず
さらに70%を超えるポゼッション率だったことを指摘されると、吉田監督は「ボールを持つことは全然悪くない」と前置きし、「けれども、やっぱりテンポ良く動かさないといけない。得点を取るためにはゴール前の迫力が必要だし、そこにみんなワクワクすると思う。そういう機会を大事にし過ぎることも良くない。そこをもっと出していかないといけないし、ボールを保持することが悪いことではない」と、繰り返した。
対戦した横浜FCの四方田修平監督は、イニエスタがいたらやりにくかったかという問いに「そういう場面もあったかもしれませんが、逆につけ入る部分も出てくると思います。そこはどっちを取るかというか、今あるなかで自分たちは戦うしかないと思う」と、すでにチームを離れた選手のことは、まったく考えていなかった様子だった。
たしかに対戦相手からすれば、すでにいなくなった選手のことで頭を悩ませる必要はない。脱イニエスタに舵を切った神戸。ハイプレスからのショートカウンターを持ち味に結果を出してきたチームは、この先も自分たちのスタイルを貫き、悲願の初タイトルを獲得することができるだろうか。
(河合 拓 / Taku Kawai)